端物(読み)ハモノ

デジタル大辞泉 「端物」の意味・読み・例文・類語

は‐もの【端物】

一部が欠けていて、ひとそろいにならないもの。はんぱもの。はしたもの。「コーヒー茶碗端物
まとまった量にならないもの。また、単発的なもの。「端物印刷を引き受ける」
新内節で、義太夫節から移入した段物に対し、新内節独自に作られた曲。⇔段物
常磐津ときわず清元長唄などで、歌い物的な、叙情的な短編の曲。また、それを地とする舞踊。⇔段物
講談で、短い読み物。
[類語]欠けら破片小片一片断片片端切れ端端くれ瓦礫

はした‐もの【端物】

数のそろっていないもの。また、中途半端なもの。はんぱもの。

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精選版 日本国語大辞典 「端物」の意味・読み・例文・類語

は‐もの【端物】

〘名〙
① 一部が欠けて十分には役に立たない物。そろわない物。半端物。また、主流である物に対し、瑣末なもの。とるに足りないもの。〔塵芥(1510‐50頃)〕
歌舞伎霊験曾我籬(1809)序幕弟子入りを頼む者には、一手づつでも教へたれどみな端物」
浄瑠璃で、三段・五段・十一段などの首尾を通した長編浄瑠璃に対して、一段でまとめた短編の浄瑠璃。端物浄瑠璃。また、一般に三味線音楽で、段物に対して短編の曲をいう。
※談義本・世間万病回春(1771)一「浄瑠璃本の端(ハ)物買ふにも新刻がほしいと」
③ ひと続きのうちの一部だけを取り出したもの。また、短くまとまったもの。
※手紙(1911)〈夏目漱石〉一「プレーの『不在』と云ふ端物(ハモノ)の書出には」
④ 講談で短い読み物。人情侠客、怪談物などの世話講釈をさしていう。
⑤ 江戸時代、大坂堂島の正米商(しょうまいあきない)で、百石を標準として、それ以下の売買をいう。
※稲の穂(1842‐幕末頃)「端物商ひ又小潰し商ひ共言」

はした‐もの【端物】

〘名〙 数のそろっていないもの。ひとそろいになっているもので、その一部が欠けたもの。はもの。はんぱもの。また、中途はんぱなもの。
※天理本狂言・米市(室町末‐近世初)「なふなふはした物があると云が」

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「端物」の意味・わかりやすい解説

端物
はもの

日本音楽,舞踊などの曲種分類用語。「段物」の対。原義的には,段組織をもたぬ比較的短い作品。 (1) 義太夫節では一段だけの曲。 (2) 常磐津節では,比較的短い曲で,節 (ふし) が多く,抒情的,叙景的な曲。 (3) 長唄でもこれと同様な意味でこの語を流用。 (4) 新内節では,義太夫節の詞章借用の曲 (段物) に対し,新内節本来の曲。 (5) 日本舞踊では,長唄,常磐津,清元などによる曲 (段物) に対して,端唄などの短編歌曲に振付けした曲。 (6) 講談では,短編の読み物。

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世界大百科事典(旧版)内の端物の言及

【新内節】より

…そのため若狭掾一派は劇場出演をあきらめ,座敷浄瑠璃専門に転向を余儀なくされたらしい。常磐津が舞踊のため拍子本位に変わっていったのに対し,鶴賀派は世間の事件などをとりあげた端物(はもの)(主として心中事件に取材,一段にまとめたもの)を新作し,さらにクドキに扇情的な曲節をつけて庶民に喜ばれるようになった。そして若狭掾の弟子の若歳改め2世新内の特色ある節と語り口が喧伝されて,1777年(安永6)ごろから,それまでの浄瑠璃を新内と呼ぶようになった。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」