竹むきが記(読み)たけむきがき

精選版 日本国語大辞典 「竹むきが記」の意味・読み・例文・類語

たけむきがき【竹むきが記】

  1. 南北朝時代日記。二巻。竹向(日野名子)作。貞和五年(一三四九成立元弘の変前後から成立年まで(一部欠脱説あり)の南北朝動乱期における北朝方女性の体験を回想して記したもの。王朝女流日記の伝統最後を飾る作品で、史料的価値も高い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹むきが記」の意味・わかりやすい解説

竹むきが記
たけむきがき

南北朝時代の日記。作者は北朝の光厳(こうごん)天皇の即位式のおりに奉仕した日野名子(ひのなかこ)である。上下2巻。上巻は1329年(元徳1)12月28日の光厳天皇元服の記事から始まり西園寺公宗(さいおんじきんむね)と結ばれる1333年(元弘3・正慶2)6月まで。下巻は1337年(延元2・建武4)12月の実子実俊(さねとし)の真名(まな)の式より中納言(ちゅうなごん)になる1349年(正平4・貞和5)まで。上巻と下巻の間に3年半の空白がある。この間に夫公宗と名子の兄日野氏光(うじみつ)らが北条氏の再興と持明院(じみょういん)統の再起を謀った罪で誅(ちゅう)せられ斬首(ざんしゅ)される。公宗の死後、名子は西園寺家再興のために遺子実俊の養育に専念し、ついに中納言にまでする。公宗の弟公重(きんしげ)と家門を争ってまで西園寺家をわが子に相続させようとする強い女の自己主張と、目的を達成したあとにくる母親の孤独感を味わいながら世の無常を感じ、宗教の世界に入っていこうとする。女流日記の流れをくむ最後の注目すべき作品である。

[祐野隆三]

『呉竹同文会編『竹むきが記全釈』(1972・風間書房)』

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百科事典マイペディア 「竹むきが記」の意味・わかりやすい解説

竹むきが記【たけむきがき】

南北朝時代の日記。2巻。作者は日野資名(すけな)の娘で,西園寺公宗(きんむね)の妻名子〔1310-1358〕。北朝の光厳天皇の即位の儀に奉仕した作者が,南北朝の動乱のさ中での宮廷女房生活,西園寺公宗との恋愛と結婚,南朝方による夫の斬殺,残された一子実俊(さねとし)の養育の生活などを回想し,綴ったもの。中世の貴族女性の生き方を反映するものとして,また中世最後の女流日記文学として意義の深い作品である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「竹むきが記」の意味・わかりやすい解説

竹むきが記
たけむきがき

南北朝時代の日記。日野名子著。2巻。正平4=貞和5 (1349) 年完成。作者は光厳天皇の典侍で,西園寺公宗 (きんむね) 室。日野実俊の母で,竹向 (たけむき) 殿と呼ばれた。正平 13=延文3 (58) 年没。上巻は元弘の変前後 (29~33) の動乱期を背景とした宮廷生活,公宗との恋を叙し,政情の好転した下巻は,家門再興の勤め (亡夫の供養,実俊の養育) と在俗の仏道修行の生活を描く。

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