南北朝時代の日記。作者は北朝の光厳(こうごん)天皇の即位式のおりに奉仕した日野名子(ひのなかこ)である。上下2巻。上巻は1329年(元徳1)12月28日の光厳天皇元服の記事から始まり西園寺公宗(さいおんじきんむね)と結ばれる1333年(元弘3・正慶2)6月まで。下巻は1337年(延元2・建武4)12月の実子実俊(さねとし)の真名(まな)の式より中納言(ちゅうなごん)になる1349年(正平4・貞和5)まで。上巻と下巻の間に3年半の空白がある。この間に夫公宗と名子の兄日野氏光(うじみつ)らが北条氏の再興と持明院(じみょういん)統の再起を謀った罪で誅(ちゅう)せられ斬首(ざんしゅ)される。公宗の死後、名子は西園寺家再興のために遺子実俊の養育に専念し、ついに中納言にまでする。公宗の弟公重(きんしげ)と家門を争ってまで西園寺家をわが子に相続させようとする強い女の自己主張と、目的を達成したあとにくる母親の孤独感を味わいながら世の無常を感じ、宗教の世界に入っていこうとする。女流日記の流れをくむ最後の注目すべき作品である。
[祐野隆三]
『呉竹同文会編『竹むきが記全釈』(1972・風間書房)』
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