絹織物の一種で,絹糸織の略。絹の練染糸(ねりぞめいと)を用いた平織で無地,縞,絣などがある。かつては男女の着尺,羽尺,下着などの衣服や夜具地に使われた。糸織は緯糸に鉄とタンニン剤を使って質の向上をはかる増量をするものが多く,したがってさびた光沢の,節のない織物である。練って織るので当然,糸に撚りがかかっている。経緯糸ともに片撚りのもの,諸撚りのもの,経糸に諸撚り,緯糸に片撚りのものなどで経緯糸ともに同じくらいの太さの糸使いが普通である。織物組織を斜文,変化斜文を用いて織ったものを綾糸織と呼び,このほか,素材が玉糸使いのものを節糸織(節織,節縞),壁糸を織り込んだものを壁糸織という。可良糸織,高貴織,市楽織,八端織,黄八丈,大島などは糸織であり,なかでも諸糸織は良品とされる。広幅織物のタフタも糸織の類で,横浜から輸出されたので浜こはくとも呼ばれる。山形県米沢を主に各地で織られるが近年は小幅物の生産が少ない。
執筆者:宮坂 博文
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