細長(読み)ホソナガ

デジタル大辞泉 「細長」の意味・読み・例文・類語

ほそ‐なが【細長】

[名・形動]
細くて長いこと。また、そのさま。「細長な(の)まゆ
貴族女性衣服身幅が狭く、丈が長いもの。うちきに似ているが大領おおくびがない。多く若い女性が袿の上に重ねて着た。
貴族の子供の衣服。水干すいかんに似て、盤領まるえり頸上くびかみから垂れた長い飾りひもがある。

さい‐ちょう〔‐チヤウ〕【細長】

[名・形動]細く長いこと。また、そのさま。「細長な(の)四角形

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精選版 日本国語大辞典 「細長」の意味・読み・例文・類語

ほそ‐なが【細長】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 形動 ) 細くて長いこと。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「うす物のほそなかを車の中に引き隔てたれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)東屋)
    2. 「細長な板目の桐の箱に」(出典:青春(1905‐06)〈小栗風葉〉春)
  3. 貴族の幼年から若年にかけての女子の衣服。方領(ほうりょう)で、衽(おくみ)がなく、身一幅の細長いもの。
    1. [初出の実例]「将曹同細長一領、府生疋絹、番長甲斐布四端」(出典:九暦‐九条殿記・荷前・天慶八年(945)一二月二〇日)
  4. 貴族の幼児の衣服。狩衣(かりぎぬ)に似て、えりから垂れた飾り紐がある。盤領(ばんりょう)で身・幅ともに一幅のもの。
    1. 細長<b>③</b>〈左細長考,右紫式部日記絵巻〉
      細長〈左細長考,右紫式部日記絵巻
    2. [初出の実例]「無紋の桜のほそなかなよらかに着なして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)末摘花)

さい‐ちょう‥チャウ【細長】

  1. 〘 名詞 〙 ( 形動 ) 細く長いこと。細長いこと。また、そのさま。狭長。
    1. [初出の実例]「其声沈而細長なり」(出典:史記抄(1477)一四)
    2. 「しばしば脈をうかがふに右の関上細長(サイテウ)にして」(出典:談義本・世間万病回春(1771)五)
    3. [その他の文献]〔梁高僧伝‐康僧会伝〕

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改訂新版 世界大百科事典 「細長」の意味・わかりやすい解説

細長 (ほそなが)

公家の衣服で女子用と童男用の2種がある。(1)女子の細長は(うちき)に似た身丈の長い広袖の上着であるが,大領(袵)(おおくび)のないもの。《枕草子》に〈衣の名に細長をばさもいひつべし〉とあるように,名のとおりの形の衣であった。細長は幼年から若年までの女子が重ねの袿の上に着たのであり,《源氏物語》竹河巻に玉鬘(たまかずら)の姫の大君の姿を記して〈桜の細長,山吹などの,折にあひたる色あひの,なつかしき程に重なりたる裾まで〉とあり,この姿は《源氏物語絵巻》にも描かれている。また細長を小袿の上に重ねて着た例も多く,《源氏物語》若菜下巻に〈紫の上は葡萄染にやあらむ色濃き小袿,薄蘇芳(すおう)の細長に〉,宿木巻に〈濃き袿に撫子とおぼしき細長,若苗色の小袿きたり〉などと描かれている。細長の地質は綾や織物(糸のうちに染めて織ったもの)のほか羅や縠(こめ)などの薄物が用いられ,紅梅,桜,山吹,藤,青鈍(あおにび)などの襲(かさね)の色のものが見られ,近世では幼年女子の式服として用いられている。(2)童男の細長は,もと細長の袍といわれ盤領(あげくび),闕腋けつてき)形式で,裾の長い産着である。この装束には指貫(さしぬき)が用いられた。《紫式部日記絵巻》(五十日祝儀)に細長と思われるものが描かれている。近世のものは表地を白浮織物,裏地が白平絹で,身一幅の闕腋形式,身丈が長く首上(襟)に蜷(にな)結びをした白い紐をつけ,水干のようにこれを結んで襟を合わせ留めた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「細長」の意味・わかりやすい解説

細長
ほそなが

公家(くげ)衣服の一種。幼年から若年までの者が用いた。その名のとおり、身を細く丈長く仕立てた衣。『枕草子(まくらのそうし)』に「衣の名に細長をばさもいひつべし」とある。近世の幼少男子が式服として用いた細長は、襟が盤領(あげくび)で、白組紐(くみひも)で留め、身頃(みごろ)が一幅(ひとの)、脇(わき)を縫わずにあけた広袖(ひろそで)の狩衣(かりぎぬ)形式。『紫式部日記』にこの細長と思われるものが描かれている。近世の幼少女子が用いた細長は、袿(うちき)に似た身丈長く広袖形式の上着であるが大領(おおくび)(衽(おくみ))のない衣。『雅亮(まさすけ)装束抄』に「ほそながといふはれいのきぬのおほくびなき也(なり)」とある。平安時代には日常、袿の上に襲(かさ)ねて着たが、その上にさらに小袿(こうちぎ)を襲ねることもあった。『源氏物語』(宿木(やどりぎ))に「濃き袿に撫子(なでしこ)とおぼしき細長、若苗(わかなえ)色の小袿きたり」とある。地質は綾(あや)、浮織物や羅縠(らこく)などの薄物。色は紅梅、桜、山吹、藤(ふじ)、青鈍(あおにび)などの襲色目(かさねいろめ)としたものがみられる。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「細長」の意味・わかりやすい解説

細長
ほそなが

平安時代に貴族の少女が盛装するとき,小袿 (こうちき) の上に重ねて着た (おくみ) のない,身・袖ともに一幅の細長い服。また盛装以外のときには小袿なしで用いた。男性の直衣 (のうし) に相当するもので,地は織物や綾,色目は桜,藤,紅梅など。江戸時代には結婚前の女性の盛装であった。

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