香道具(読み)こうどうぐ

精選版 日本国語大辞典 「香道具」の意味・読み・例文・類語

こう‐どうぐ カウダウグ【香道具】

〘名〙 香道で使用する道具。香炉、香匙(こうさじ)火味(ひあじ)組香香札、源氏香図、香割道具、さらにそれらを入れる十種香箱や盤道具など。香具。
歌謡・松の葉(1703)四「今様体のかうだうぐ、心をつけて飾らるる」

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デジタル大辞泉 「香道具」の意味・読み・例文・類語

こう‐どうぐ〔カウダウグ〕【香道具】

聞き香で用いる道具。香炉香盆などのほかに、七つ道具と称して香箸こうばし火箸こじ香匙こうすくい銀葉挟ぎんようばさみうぐいす羽箒はぼうき・灰押さえがある。香具。

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改訂新版 世界大百科事典 「香道具」の意味・わかりやすい解説

香道具 (こうどうぐ)

香木を割り,たき,聞き,そして記録するための道具のいっさいをいう。香道具のほとんどは江戸初期までに整備され,御家流米川流では豪華な蒔絵・梨地のものが多く用いられ,志野流は桑木地のものが多い。流儀による道具の違いはほとんどない。寸法も多少の差はあるがだいたい変わらない。ここに示す各道具は1748年(寛延1)牧文竜の《香道賤家梅(しづがやのうめ)》によるものである。(図)。

(1)十種香箱 二重の箱で華麗な蒔絵が多い。上段には惣包(そうづつみ)や打敷(うちしき),源氏香之図や香割道具等,下段には聞香炉(銀)葉盤(ぎんようばん),重香合(じゆうこうごう),香筯建(きようじたて),香札,札筒,折据(おりすえ),火末入(ひずえいれ),葉入などを納める。縦7寸5分,横6寸4分,高さ6寸7分(1寸は約3cm)。(2)香炉 青磁あるいは染付で,まれに蒔絵木製もある。煙返しはなく,三脚がきまりである。一対。炷合(たきあわせ)のときは大ぶりを用いる。差渡し2寸3分から2寸6分,高さ2寸5分,脚は高さ3分。(3)本香盤 組香のとき,本香の数だけの葉をのせておく漆塗の盤である。10ないし12に区画し,貝あるいは象牙の花形文の小片を貼付してある。花形は桜,梅,牡丹,菊など好みにしたがう。5寸5分と1寸8分の矩形で高さ1寸。(4)試盤(こころみばん) 試香の葉をのせる台。花形の台は5個。長さ4~5寸,横1寸,高さ8~9分。香道初期には使用しなかった。(5)重香合 重香筥(ばこ)ともいう。四角または円形の三重の筒で香木や葉を入れる。最下段は内側に金属を張り,使用後の熱い葉を入れられるようになっている。蒔絵のものも多い。(6)火道具 炭団(たどん)や香木,葉を扱う9種の道具で,小道具包とよぶ畳紙に納めてある。(a)羽箒(はぼうき) 柄は唐木(からき)2寸8,9分,先端に鴇(とき)などの羽毛を差してある。灰拵(はいごしら)えのときに灰を払う。長さ1寸5,6分。(b)香筯 黒檀などの唐木製の箸。香木を扱う。長さ6寸。(c)火筯 香炭団を扱う箸。銀か銅製で,手にする部分は唐木。長さ5寸7分~6寸。(d)香匙(さじ) 唐木の柄に銀の匙を付けてある。香木を扱う。長さ3寸4,5分。(e)挟 葉を扱うためのピンセットである。先端は扁平で薄いをはさみやすくしてある。銀か金銅製。長さ3寸3分~3寸6分。(f)灰押(はいおし) 香鍬(こうすき)ともいう。聞香炉に埋めた炭団の上に盛り上げた灰を平らにならすための銀のへらで先の方が幅広である。(g)鶯(うぐいす) 長さ4寸5分~5寸。昼と夜で逆に使用するため銀・赤銅半分ずつの細い棒で畳に刺し,出香したあとの香包を順次刺しておく。香の出た順序がわかる仕組である。昔は竹を用い,半ば皮目(かわめ)であったので,竹藪をくぐるの意で鶯という。(h)火間指(ひあじ) 長さ4寸1分~4寸7,8分。先端5分ぐらいのところに小さな鍔(つば)がついている。先を灰に刺して香炭団の火加減をみる。流儀によっては使用しない。(i)火筯立 建(たて)ともいう。火道具を立てておく筒のようなもの。六角が多いが丸いのもある。高さ2寸1分~2寸4分。金,銀あるいは赤銅等。(7)香割道具 香木を細かく薄く割る道具。小刀,香鉈(なた),香剝(はぎ),香鋸(のこ),香鑿(のみ),香椎(つち),香割盤などある。(8)香札と(9)札筒および(10)折据 香を聞いた順番を札で答える香札は1人10枚で10客分を用意し,香札の裏に記されてある数字が奇数の場合は折畳式の箱状の折据に収め,偶数の札は札筒に投ずる。香札の表には花形文が付いている。本香盤に香札を納めたものもある。(11)打敷と(12)地敷(じしき) 縁どりをした帛(はく)とその上に広げる厚紙で表は金,裏は銀で絵のあるものもある。昼は金,夜は銀を用いる習慣である。香元が手前道具をその上に並べる。(13)香屛風 香手前の前に立てる。高さ8~9寸,横2尺3寸。(14)乱箱 梨地あるいは蒔絵。地敷の上に並べる香道具を納める。縦8寸7分,横1尺8分,高さ2寸6分。(15)重硯(じゆうすずり) 5客もしくは10客分の硯箱で重ねてある。連衆の筆記用。(16)執筆硯 執筆が記録をしたためるための硯箱。墨と朱の硯,筆が入っている。(17)香棚 十種香箱や乱箱,硯箱などを飾っておく棚で数種類ある。

 このほか香木を入れておく沈香箱や名香袋,葉入,香炭団入,火末(焚殻)入などの道具がある。また組香の香包を入れておく包を惣包といい,思羽(おもいば)もその一種である。代表的な組香30にはそれぞれその組香名にちなんだ美麗な絵で彩られた惣包が定められており,〈三十組惣包〉と呼ばれる。割った香木を包む香包の折り方も,組香によりそれぞれ独特の定めがある。さらに盤物と呼ばれる組香にはそれぞれの盤と精巧な人形などの立物(たてもの)(建物)が定められており,盤上を進む立物によって一炷ごとに競技の成績が示されるのである。このうち矢数香(やかずこう),吉野竜田香(別名,名所香),源平香,競馬香の盤と立物は四種盤(ししゆばん)と呼ばれる箱に納められている。競馬香以外は四種盤の表裏を進路盤として共用できるように工夫されているが競馬香の進路盤2枚は箱の内に収められる。

 このほかにも香元が手前の道具をならべる香元台,執筆用の机である文(ぶん)台,香炉に入れる着火した香炭団を持ち出す火取香炉や香木を収蔵する香簞笥,衣服に香をたき込めるおりに衣服をかける臥籠(ふせご)(伏籠,薫物(たきもの)籠ともいう)やそのとき焚香する火取母(ひとりも)などがある。湿気は匂いをとめるので,火取母は水を入れた香盥(こうだらい)に渡した板上に置かれる。髪にたき込めるためには華麗な蒔絵をほどこした箱枕の中に香炉を仕込んだ香枕がある。屈折した1条の溝に香の粉末を並べ,一方から着火して燃えぐあいで時間をはかる道具を香時計という。透しのある球形の香炉で灰を入れる部分はつねに水平を保つようにくふうされたのが毬(まり)香炉(香玉,香毬(こうまり),佩香(はいこう))で,小型の毬香炉は懐中して留香にも用いられた。調合した香を袋に入れ柱に掛ける掛香(懸香)や香囊,訶梨勒(かりろく)などもある。
組香
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百科事典マイペディア 「香道具」の意味・わかりやすい解説

香道具【こうどうぐ】

をたき,または聞くときに用いる道具。香木を所要量に切るための香割道具(香鉈(こうなた),香剥(こうへぎ)など),火道具(七つの道具に含まれる香【じ】(きょうじ),香匙(こうすくい),火【じ】(こじ),灰押(はいおし)など)その他がある。→香道

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