統計数値を地図上に表現して、量、密度、価値などの地域的な違い、あるいは地域間の流動量などを示すもの。表現方法によって、コロプレス地図、等値線図、ドット・マップ、流線図などに分かれる。コロプレス地図は、たとえば市区町村別人口密度図のように、数値をいくつかの階級に区分して、単位区域ごとに階級に応じた色彩や明暗で表現するもの、等値線図は、たとえば天気図の等圧線のように、値の等しい地点を連ねた線で表すもの、ドット・マップは、たとえば人口1000人当り1点というように決められた点を分布させるもの、流線図は、物資や人員などの流動の経路、方向や量を帯状の線を用いて示すものである。このほか、量の大小に対応する棒、円または球などのグラフ、あるいは単位量の決められた円、方形、三角形、立方体その他の小図形の集まりを、単位区域ごとに配置させる方法もある。なお、対象となる土地の情報を数値化して磁気テープなどに入力しておき、コンピュータを用いてこれらの統計地図を作成することも行われている。
[五條英司]
『大友篤著『地域分析入門』改訂版(1997・東洋経済新報社)』▽『総務省統計局編・刊『国勢調査に関する地域メッシュ統計地図』各年版』
対象とする統計の空間的な分布構造がひと目でわかるように,各統計量を一連の記号に置き換え地図上に配置したもの。人口をドット(点)の個数や円の面積に置き換えた人口分布図などが代表例である。統計地図は統計図表と同様,統計情報の視覚的表現方法であり,その特徴は数表と比較すれば明らかであるが,全体的傾向が瞬時に観察できるところにある。数表では,個々の文字としての数値は正確に伝わるものの,全体パターンの観察は困難である。
数量を数字以外の視覚記号に置き換え表現する試みは,ヨーロッパでは17世紀以降広くみられるようになるが,日本においては明治以後のことである。ドット・マップ,円積図,濃淡図,流線図など,今日みられるごく普通の表現にも,それぞれ改良の歴史が存在している。しかし,日本には輸入学問として入ってきたためか,記号の体系化とその意味性について,いまだ消化しきれない部分が存在している。つまり,既存の形式を単に当てはめるだけに終わり,全体像の明快さに欠ける場合がみられる。
数量を記号に置き換えるに際しては,記号に対する視覚上の生理的・心理的特性,および数量のもつ基本的意味性との間に調和点を見いだす必要がある。明快な全体像をつくりだすには,その構成部分に視覚上の刺激となる強弱を与えることができる記号を用いる。また,数量は,個々の量の大きさをとおして,それら相互の差異(類似),順序,割合の諸関係を基本的意味としてもっており,記号系列はこれらを表現できるものでなくてはならない。通常よく用いられている大小や濃淡の変化による記号系列は,これらの条件を満たすことができる。
執筆者:森田 喬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[その他のグラフ]
グラフの用法について基本的な原則を述べたが,いろいろな用途に応じて,適宜に組み合わせ変形して利用されることもある。地理的にどんな分布を示すかを地図上に記した統計地図,目盛を対数で表した対数目盛グラフなどもこの延長とみてよい。統計グラフの生命は,それが何を物語っているかがすぐわかるように単純明確に表現することである。…
※「統計地図」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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