総合的な学習の時間(読み)ソウゴウテキナガクシュウノジカン

デジタル大辞泉 「総合的な学習の時間」の意味・読み・例文・類語

そうごうてきながくしゅう‐の‐じかん〔ソウガフテキなガクシフ‐〕【総合的な学習の時間】

総合的学習

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「総合的な学習の時間」の意味・わかりやすい解説

総合的な学習の時間
そうごうてきながくしゅうのじかん

教科横断的な課題について、児童生徒が課題探求することを学習理念とする授業。1998年(平成10)の学習指導要領改訂に伴って導入が決定し、全国の小学校3年~中学校と盲・聾(ろう)・養護学校(現、特別支援学校)の小・中学部では2002年度(平成14)から、高等学校と盲・聾・養護学校の高等部では2003年度から実施されている。「総合的学習」「総合学習」ともよばれる。決められた教科書はなく、教科の枠をこえ、児童・生徒が自ら課題をみつけ、学び、調べ、考え、主体的な思考力や問題解決能力を培うことを目ざす。授業内容や授業方法は各学校にゆだねられており、学習指導要領には国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的総合的課題のほか、児童・生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題、グループ学習や個人研究などの多様な学習形態といった大まかな観点が例示されている。具体的には、地域環境教育防災・減災教育、ボランティア体験、農業林業・水産業体験、自然体験、観察実験・調査・発表・討論などの各種の体験学習、地域の人々や学外の人を講師に招いての交流学習、ものづくりなど地場産業の生産活動・作業学習、新聞を活用した教育、ネイティブ・スピーカー(特別非常勤講師)との英会話など外国語の時間や国際教育、パソコンやタブレット型端末を使ったIT(情報技術)教育などが行われている。

 授業時間数は導入当初は、週3時間程度であったが、ゆとり教育の象徴的な学習時間とみられてきたために「ゆとり教育が学力低下を招いた」「総合的な学習の時間が学力向上に寄与するか疑問」との批判を受け、2008年の学習指導要領の改訂に伴い、2011年度から週2時間程度に削減された。しかし2013年の全国学力テスト(対象は小学6年、中学3年)の結果を分析すると、「総合的な学習の時間」に積極的に取り組む学校や児童・生徒ほどテスト結果がよいことが判明しており、学力との関係から「総合的な学習の時間」や教科横断的な学習方法について、文部科学省や教育の専門家の間では再評価する動きが出ている。

[矢野 武 2015年1月20日]

『阿部進監修『みんなでつくる「総合的な学習の時間」』(2003・財務省印刷局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

図書館情報学用語辞典 第5版 「総合的な学習の時間」の解説

総合的な学習の時間

従来の教科の枠や領域を越え,横断的,総合的に学習活動を行う時間.1998(平成10)年度告示の学習指導要領で新設.「自ら学び自ら考える教育」という教育理念を象徴する役割が期待され,学びの方法を支援する学校図書館が積極的に活用されることが予想されたが,2003(平成15)年には学習指導要領が部分改訂され,学校の教育計画全体の中に位置付けた系統的な指導が求められ,各教科と関連付けた指導の必要性が強調されることとなった.背景には,教育内容の学校間格差の問題や「学力低下」論争などがある.2008(平成20)年に告示された学習指導要領では,授業時数が削減された.2018(平成30)年度告示の学習指導要領では,高等学校における科目名称が「総合的な探求の時間」に変更された.

出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報

知恵蔵 「総合的な学習の時間」の解説

総合的な学習の時間

1998年7月に出された教育課程審議会の答申に基づいて、2000年度に小学校から高校まで一斉にスタートした教育課程の新しい制度。従来の教育課程は、小・中学校では各教科、道徳、特別活動の3領域、高校では各教科と特別活動の2領域で編成されていた。総合的な学習の時間は各学校において教育課程上必ず置かれるが、学習活動が各教科等にまたがるので、内容は示されておらず、年間総授業時数だけが提示され、どのような内容・方法で実践するかは各学校に委ねられている。ただ、国際理解、情報、福祉・健康などの課題、児童生徒の興味・関心に基づく課題、地域や学校の特色に応じた課題、といった観点が例示されている。特に小学校では、国際理解教育の一環として外国語教育を行うことが期待されている。

(新井郁男 上越教育大学名誉教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android