纏頭(読み)テントウ

デジタル大辞泉 「纏頭」の意味・読み・例文・類語

てん‐とう【×纏頭】

《「てんどう」とも》
祝儀。はな。心づけ。
「駕籠き人力車夫等への―にも思い切った額を弾んだ」〈谷崎春琴抄
もらった衣服を頭にまとったところから、歌舞演芸などをした者に、褒美ほうびとして衣服・金銭などを与えること。また、そのもの。
「舞ひはてては必ず―をこひけり」〈著聞集・二〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「纏頭」の意味・読み・例文・類語

てん‐とう【纏頭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「てんどう」とも )
  2. 歌舞・演芸をした者に、褒美として衣類、金銭などの品物を与えること。また、その品物。もと衣類を受けた時、頭にまとったところからいう。かずけもの。
    1. [初出の実例]「賜纏頭物」(出典:日本後紀‐延暦二四年(805)六月乙巳)
    2. 「まひはてては必纏頭をこひけり」(出典:古今著聞集(1254)二〇)
    3. [その他の文献]〔旧唐書‐郭子儀伝〕
  3. 当座の祝儀として与える金銭。はな。ぽちチップ
    1. [初出の実例]「今朝召実厳纏頭、依儲事等殊致丁寧也」(出典:高野山文書‐久安四年(1148)四月五日・御室御所高野山御参籠日記)
  4. いそがしいこと。多忙。また、あわてること。狼狽すること。
    1. [初出の実例]「六月廿八日小所領一所雖分得候、未秋分程、事々纏頭候了」(出典:醍醐寺文書‐弘安三年(1280)七月三〇日・僧頼遍請文案)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「纏頭」の意味・わかりやすい解説

纏頭
はな

祝儀、心づけ、寄付の意。もと上位の人が下位の者に着物を与えるとき、頭にかぶせる風習があったため、この文字を使うという。また人に物を贈るとき花の枝につけたことからハナという。役者や相撲(すもう)取りが受け取るほか芸者などは花代という。祭礼の寄付は「ハナを打つ」といい、現在は金銭の授受が通例である。

[井之口章次]

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普及版 字通 「纏頭」の読み・字形・画数・意味

【纏頭】てんとう

かずけもの。歌舞などの祝儀に与える。唐・白居易琵琶行〕詩 五陵の年少、爭うて纏頭す 一曲、紅(こうせう)、數を知らず

字通「纏」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の纏頭の言及

【祝儀】より

…今日でも,地方の農村などには祝儀不祝儀と称し,祝儀をとくに婚礼およびその祝いの金品の意に用いているところもある(不祝儀は葬式,香奠)が,一般には御祝儀にあずかると称して正規の報酬とは別にその労をねぎらい謝意を表して贈る心付けのことを指す場合が多い。被物(かずけもの),纏頭(てんどう),花ともいう。被物,纏頭は祝儀として与えられた衣装を肩に掛けたり頭に載せたりする作法に由来し,花は物を贈るのに古くは花の枝を添えたことによる。…

※「纏頭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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