(読み)テン

デジタル大辞泉 「纏」の意味・読み・例文・類語

てん【纏】[漢字項目]

人名用漢字] [音]テン(漢) [訓]まとう まとい まつわる
まつわりつく。「纏繞てんじょう纏綿
身につける。身にまとう。「纏足半纏
[補説]「纒」は俗字。

まとい〔まとひ〕【×纏】

まとうこと。また、まとうもの。
馬印一種。さおの頭に飾りをつけ、その下に馬簾ばれんを垂らしたもの。
江戸時代2にならって町火消しの各組のしるしとしたもの。

てん【×纏】

仏語。まつわりつくもの。煩悩ぼんのうのこと。纏縛てんばく

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精選版 日本国語大辞典 「纏」の意味・読み・例文・類語

まといまとひ【纏】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「まとう(纏)」の連用形名詞化 )
  2. まとうこと。また、まとうもの。
  3. 軍陣の用具の馬標(うまじるし)の一種。近世の戦陣で、主将の本営のしるしとして立てるもの。長い竿の先に種々の飾りをつけ、その下に馬簾(ばれん)を垂れる。
    1. [初出の実例]「纏を先に押立て」(出典:奥羽永慶軍記(1698)八)
  4. 江戸時代、町方の火消の各組がに模して作り、組のしるしとして用いたもの。
    1. 纏<b>③</b>〈絵本風俗往来〉
      〈絵本風俗往来〉
    2. [初出の実例]「半鐘の丸漬か纏のばれんの浸し物」(出典:洒落本・新吾左出放題盲牛(1781)侠八歯臍)
  5. まといもち(纏持)」の略。

まとまり【纏】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「まとまる(纏)」の連用形の名詞化 ) 統一、整理されること。また、決着がつくこと。
    1. [初出の実例]「我が一身のまとまりもいかず」(出典:文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初)

てん【纏】

  1. 〘 名詞 〙 ( [梵語] paryavasthāna の意訳 ) 仏語。煩悩(ぼんのう)異称。煩悩は衆生(しゅじょう)にまとわりついて迷いの世界にしばりつけるところからいう。〔摩訶般若波羅蜜経‐三〕

まとめ【纏】

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「まとめる(纏)」の連用形の名詞化 ) まとめること。
    1. [初出の実例]「これのまとめが一つで十三銭づつです」(出典:あらくれ(1915)〈徳田秋声〉六四)

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普及版 字通 「纏」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 21画

[字音] テン
[字訓] まとめる・まとう・くくる

[説文解字]

[字形] 形声
声符は廛(てん)。廛は(ふくろ)の中にものを入れてまとめ、それを建物に収納する意。〔説文〕十三上に「繞(めぐ)らすなり」とあり、縄をめぐらしてまとめくくることをいう。次条に「繞(ぜう)は纏(まと)ふなり」とあって互訓。繞り歩くことを躔(てん)という。

[訓義]
1. まとめる、まとう、まつわる。
2. くくる、まとめくくる。
3. めぐらす。
4. なわ、なわひく。
5. 躔と通じ、ふむ。

[古辞書の訓]
名義抄〕纏 マツハル・マトフ・モトホル・ムスブ・トラフ・マク 〔字鏡集〕纏 ヤドル・マツハル・メグル・ツツム

[語系]
纏・廛・躔dianは同声。廛はにものを入れて纏(まと)める意。東tong、(弓袋)ththakはみなの意で一系の語である。

[熟語]
纏紆・纏・纏裹・纏回・纏脚・纏糾・纏結・纏牽・纏索・纏錯・纏繞・纏声・纏足・纏束・纏袋・纏達・纏頭・纏縛・纏迫・纏・纏絆・纏綿・纏約・纏絡・纏累・纏令
[下接語]
紆纏・雲纏・纏・裹纏・糾纏・結纏・行纏・拘纏・香纏・情纏・繞纏・藤纏・縛纏・纏・盤纏・包纏・纏・腰纏・連纏

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改訂新版 世界大百科事典 「纏」の意味・わかりやすい解説

纏 (まとい)

戦闘や消防の際に用いられた標識。戦場での集団中に目につきやすい標具として,16世紀になって盛んに用いられた纏は幟(のぼり)の大型なもので,《大坂軍記》にも〈大纏は朱の大四半,大幅掛に白き葵(あおい)の丸なり〉とか〈井桁(いげた)の紋の茜(あかね)の四半のまとひ〉と見えている。しかし他と紛れぬように,幟のほかにも作り物を用い,ときには当世具足の背に着けた指物(さしもの)を纏としたので,《甲陽軍鑑》には〈北条家の大道寺九ッ挑灯(ちようちん)のさし物をそえにしてもたする,是によってまとひは北条家よりはじまる〉と伝えている(旗指物)。また竿の先端に趣向をこらした作り物を施し,さらに馬簾(ばれん)といって輪形に切裂(きつさき)を長くたらしたのを加え,これを馬脇の標識とした馬印を纏と呼ぶようになった。この形式の纏は江戸時代になってから軍事組織に準じる消防にあたる者の標具としても用いられ,かくて纏は,必ず馬簾をつけ,上端に〈出し〉という飾物を配し,柄の下部の石突(いしづき)を股(また)として手にかけて持ち,振るのに便利とした(〈火消〉の項を参照)。

 纏は旗本以上の武士の非常用の調度で,馬簾は猩々緋(しようじようひ)を普通とし,〈出し〉は軽い紙製または籠製で,3方面に定紋をつけたものが多い。また唐人笠や留め玉に白熊(はぐま)(白い飾毛)をつけたもの,宝珠や苗字中の1字を表現したものなどが見られ,消防方は馬簾を銀箔置(ぎんぱくおき)とした。1720年(享保5)から町火消も方域を記した吹流しを纏としたが,30年には47組を10に分けて,吹流しを廃して馬簾を用いることとし,〈出し〉に組別の標識を示し,総体に武家方消防の様式にならった。しかし寛政(1789-1801)ころから町方の馬簾は銀箔置を改めて白粉塗とするようになり,そのおもかげを今に伝えている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「纏」の意味・わかりやすい解説


まとい

戦国時代には、敵味方の目印にするために用いた幟(のぼり)や馬印(うまじるし)のことであったが、江戸時代になると、もっぱら火消組の目印をさすようになった。前者の纏は、永禄(えいろく)・元亀(げんき)(1558~73)のころ北条氏康(うじやす)の家臣が初めて用いたと伝えられる。有名なものとして、豊臣(とよとみ)秀吉の金の千成瓢箪(せんなりびょうたん)や徳川家康の金の扇などがある。

 江戸時代、大名火消や旗本の定火消(じょうびけし)ができると、家紋や先祖の由緒にちなんだ陀志(だし)飾りのついた纏が考案され、加賀百万石の加賀鳶(とび)の銀塗り太鼓や、本多能登守(のとのかみ)の本文字に日月の纏など、それぞれに華美を競った。1718年(享保3)江戸に町火消の制が定まり、しだいに整備されて、10組の大(おお)組の下にいろは四十八組(ただし、「へ」「ら」「ひ」「ん」のかわりに「百」「千」「万」「本」)の小(こ)組が置かれると、各小組ごとに目印として纏を持つことを許される。時代により形が多少変わったが、江戸時代の末ごろには、陀志飾りの長さ2尺(約60センチメートル)、白漆塗りで馬簾(ばれん)(円形の枠に、細い紙や革の条を長く垂らしたもの)のついた、一般によく知られる纏らしい形となった。なお、纏持ちのことを単に纏ともよび、組のシンボルとして、火消しや行事で競い合った。

[片岸博子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「纏」の意味・わかりやすい解説


まとい

戦闘や消防の際に用いられた標識。戦国時代に大将の陣所の所在を示すために大型のを用いたのが起源で,16世紀以後盛んに用いられるようになった。幟のほかにも標識として用いた作り物や,当世具足の背につける家紋などを施した指物 (さしもの) なども纏と呼ばれ,さらに竿頭部に趣向を凝らした飾り (出し) を施し,長く馬簾を垂らした馬印 (うまじるし) も纏と呼ばれるようになった。江戸時代になってこの形式のものは消防にあたる者の標具として用いられるようになり,出しに定紋や先祖の由緒にちなんだ飾りをつけた纏は,旗本以上の武士の非常用の調度となった。町火消は享保5 (1720) 年から纏制度が許され,地域名を書いた吹流しを用いていたが,天保2 (1831) 年以後,馬簾つきの纏が許されるようになり,出し飾りの大きさ2尺 (約 60cm) 以内,すべて白染塗りとし,馬簾の数も 48本に定められた。

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百科事典マイペディア 「纏」の意味・わかりやすい解説

纏【まとい】

(1)戦国時代の武将が戦場で馬側に立てその所在を示した馬印の一種。多くは馬簾(ばれん)という飾りを垂らした。(2)江戸時代の町火消の標識。(1)に模してつくり,その頭部を〈だし〉といい,組の名を記号で入れた。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【火消】より

…本所,深川は16の小組に分けた。このとき大名火消,定火消にならって各組ごとに(まとい)と(のぼり)を定め,その目印とさせた。さらに30年,47組を一番組から十番組の大組に分けた。…

※「纏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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