改訂新版 世界大百科事典 「翻波式衣文」の意味・わかりやすい解説
翻波式衣文 (ほんぱしきえもん)
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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仏像の衣の襞(ひだ)(衣文)の表現法の一種。平安前・中期(9~10世紀)ごろの木彫像の特色の一つに数えられている。衣の襞の断面が大きく頭の丸いものと、小さく鋭い稜線(りょうせん)をもつものとを交互に配し、あたかも大波小波が打ち寄せるようすに似るところから名づけられたもので、一木造(いちぼくづくり)の量感に、さらに強烈・峻厳(しゅんげん)な印象を与えている。奈良・法華(ほっけ)寺十一面観音(かんのん)立像、奈良・室生寺(むろうじ)釈迦如来坐像(しゃかにょらいざぞう)などの衣文の線はその典型的なものである。また室生寺金堂諸像のように、小波が大波の間に二つずつ配されているものを漣波式(れんぱしき)衣文とよぶこともあるが、こうした形式の衣文線は翻波式衣文線が発達したものではなく、その発生や過程がまったく別のものだとする説もある。
[佐藤昭夫]
太紐状に立ちあがる大波と鎬(しのぎ)立つ小波とを交互に配する衣文表現。その萌芽は,奈良時代の乾漆像(東大寺三月堂不空羂索(ふくうけんじゃく)観音,国宝)にすでにみられる。平安前期の木彫の隆盛にともない独特の律動感と刀の切れ味の顕示とにより,素木像に生気を与える手法として重用された。代表例は法華寺十一面観音像・室生寺弥勒堂釈迦如来坐像(ともに国宝)。10世紀以降はしだいに定形化し,11世紀中葉にはほぼ終息。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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