家庭医学館 の解説
ろうかにともなうだんせいせいきのびょうき【老化にともなう男性性器の病気】
老化にともなう男性性器のもっとも重要な病気は、前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)と前立腺(ぜんりつせん)がんです。これらは排尿困難や、重度になれば尿閉(にょうへい)(尿がまったく出ない)をおこします。また、男性の性機能は50歳を過ぎると衰えてきますが、それも個人差があり、最近では性機能を保持したお年寄りのセックスが問題となってきています。
■前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)(「前立腺肥大症」)
前立腺が年齢とともに大きく肥大して尿道を圧迫し、排尿困難をおこします。肥大がひどくなると、尿閉をおこします。
肥大が軽い場合は薬物療法を行ない、中等度から重度の場合は手術で前立腺を切除します。なお、このような手術を受けると、性行為のとき満足な射精感が得られなくなることがあります。
手術ができない場合は、レーザー照射や温熱療法、あるいは尿道ステントという尿道を広げる器具により、排尿ができるようにします。
尿閉に対しては、応急処置として尿道留置(りゅうち)カテーテル法を行ないます。
■前立腺(ぜんりつせん)がん(「前立腺がん」)
前立腺がんは、年齢とともに増加する病気です。このがんの悪性の程度は、良性に近いものから、非常に悪性のものまであり、また骨に転移しやすいという性質をもっています。
前立腺肥大と同じように、排尿困難を訴えます。骨に転移すると、激しい痛みがおこったり、骨折(病的骨折)がおこりやすくなります。
肥大した前立腺は表面にでこぼこがあり、かたく、また血中には前立腺特異抗原(ぜんりつせんとくいこうげん)という物質が増えます。がんであればがん細胞のタイプを調べ、CT検査でがんの周囲への広がりを、骨(こつ)シンチグラフィーという方法でがんの骨への転移がないかを調べます。
がんが前立腺内にとどまっていれば、前立腺の全摘手術が行なわれます。
しかし、抗男性ホルモン剤が有効なことから、抗男性ホルモン療法が広く用いられています。
■加齢(かれい)による性機能障害(せいきのうしょうがい)
男性の性機能は、男性ホルモン(内分泌系(ないぶんぴつけい))、陰茎(いんけい)の血流(血管系)、勃起(ぼっき)神経(神経系)などの内因子が複雑に作用しておこるものです。
さらに、生活環境、生活歴、性行為のパートナーなど、多くの外的因子も性機能にかかわっています。
加齢とともに、全身の臓器の老化が進むので、50歳を過ぎると性機能も低下します。また、高血圧症、糖尿病、喫煙が性機能障害の要因になるともいわれています。
しかし高齢者でも、個人差はあるものの、性機能が保たれていることも事実です。また、バイアグラ(商品名)などの性機能改善剤が処方できるようになりました。以前はお年寄りのセックスはタブー視されていましたが、これからは、お年寄りの性欲などを理解し、適切な対応をとって健全な生活が送れるようにするべきです。