官吏に対する勤務評定をいう。
考も課も〈はかる〉の意で,考功ともいう。唐代の制度では中央の吏部に考功郎中が置かれてその事務をつかさどった。中央の各官庁および地方の州の長官は,毎年その部下の成績を評定して9等に分かち,吏部に送付すると,考功郎中が別に任命された審定官と協議して判定する。評定の標準として,四善二十七最なる条項があり,善とはすべての官職に通じて挙げることのできる善業であるから,1人で四善を兼ねることができるが,最とはそれぞれの職種における最高の業績であるから普通には1人には一最しか与えられない。総点数は上上から下下まで9等に分けられ,四善一最が上上の一等,次に四善,もしくは三善一最が上中の二等,以下このようにして数え,一善,もしくは一最が中中の五等となる。中上の四等以上は,数考を積むと進級加俸の賞があり,無善無最の中下の六等以下はそれぞれの不徳失政の程度に応じて罸がある。唐以後の考課もこれと大同小異で行われた。
執筆者:宮崎 市定
古代の律令官人の毎年の勤務評定。《令義解》の職員令式部省条では〈考は,考校なり。課は,諸司職掌に課する所の庶事なり〉と公定注釈している。この毎年の評価を所定年数分ずつ総合して,叙位・昇進させる〈選叙〉に結びついて,官人の恒常的な昇進体系を形づくった。この考選の対象になる官人を〈得考之色(とくこうのしき)〉と呼ぶが,(1)内長上(中央諸司,大宰,国司の四等官クラス),(2)内分番(史生(ししよう)以下の中央下級職員,散位六位以下),(3)外長上(郡司四等官,軍毅,その他),(4)外散位(《延喜式》では外分番。国府に番上する地方下級職員,散位)に区分され,評定基準,等級に差があった。そして内・外長上は年間240日以上,内・外分番は140日以上の勤務日数(上日)が,その年度の評定をうける必須条件で,日数が欠ければ対象外にされた。内長上は九等評価(上上~下下),内分番は三等評価(上~下)であり,考選によって内位(一般の官位)に叙されたので,〈内考〉と呼ばれる。つぎに外長上のうち,郡司四等官・軍毅は四等評価(上~下・下下),国博士・医師は三等評価(上~下)で,外散位も三等評価(上~下)であったが,外位(げい)を授けられたので,〈外考(げこう)〉と呼ばれる。そして六位以下の評価は最終的に式・兵部省で決定し,四,五位は太政官で決定して奏聞,三位以上は天皇の直裁であったが,大臣は評定対象外におかれた。なお,〈考課令〉の〈考〉は毎年の評定,〈課〉は官人採用の国家試験である。
→考試 →選叙
執筆者:野村 忠夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令制下における官人の勤務評定。令制の考選法では、官職は内長上(ないちょうじょう)(常勤の中央官人)、内分番(ないぶんばん)(非常勤の中央官人)、外長上(げちょうじょう)(常勤の地方官人)、外散位(げさんい)(非常勤の地方官人。のちに外分番(げぶんばん)と呼ばれた)に区分されるが、長上は年間の勤務日数が240日以上、分番は140日以上が勤務評定の前提となる。次に内長上は「善」という徳目的基準と「最」という職務達成基準により上上から下下の9等で、その他は勤務状況によって上から下までの3等(郡司(ぐんじ)と軍毅(ぐんき)は上から下下の4等)で、本司の長官により評定された。そして、こうした勤務評定を一定の年数積み重ね(これを成選(じょうせん)といい、その年数を選限(せんげん)という)、その総合成績により位階が進められた。当初の選限は、内長上6年、内分番8年、外長上10年、外散位12年であったが、706年(慶雲3)にそれぞれ2年ずつ短縮された。
[寺内 浩]
『野村忠夫著『増訂版 律令官人制の研究』(1978・吉川弘文館)』
律令制で官人の成績評価のこと。考は官人の勤務評定,課は貢挙人の試験評価。養老令では,毎年本司の評定にもとづき三位以上は奏裁,五位以上は太政官が裁定して奏聞,六位以下は式部・兵部(ひょうぶ)両省が裁定して太政官に報告する。官職に応じて9等から3等の考第(こうだい)があり,所定の年数の考第を通計して位階の昇進が決定される。なお浄御原令(きよみはらりょう)制下では毎年の評定で毎年叙位され,大宝令で官職による考限が定められた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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