外位
げい
律令制(りつりょうせい)下の位階制度の一系列。天武(てんむ)朝に、壬申(じんしん)の乱(672)に功績のあった地方豪族出身者に対する処遇として臨時的に行われたが、大宝令(たいほうりょう)制のもとで制度化され、外正(げしょう)五位上(じょう)より外少初位下(げしょうそいげ)までの20階が規定された。外位の対象は郡司・軍毅(ぐんき)・国博士(くにはかせ)・医師などを中心とし、蝦夷(えみし)・隼人(はやと)にも授けられたが、これら郡司以下のポストは在地の豪族層のなかから任用することが想定されていたから、外位の制度は単に特定のポストを対象に授与するというだけでなく、中央貴族の地方豪族層に対する支配ないし優越性の確認という側面を有したとする見方が有力である。
[吉岡眞之]
『野村忠夫著『律令官人制の研究』増訂版(1970・吉川弘文館)』▽『野村忠夫著『官人制論』(1975・雄山閣出版)』▽『野村忠夫著『律令政治と官人制』(1993・吉川弘文館)』▽『西別府元日著『律令国家の展開と地域支配』(2002・思文閣出版)』
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げ‐い ‥ヰ【外位】
〘
名〙
令制で、
内位に対する補助的な位階の系列。大宝令、養老令では外正五位上から外少初位下まで二〇階ある。
通常の位階(内位)に準ずるものとされる。本来は郡司、軍毅、国博士、帳内資人など、准官人たる外官に与えられる位階であったが、神亀五年(
七二八)以降、内官を外位に、外官を内位に叙することが始まり、のち次第に
姓(かばね)の
下位の者に与えられる傾向となった。
外階(げかい)。
※続日本紀‐大宝元年(701)三月甲午「外位始二直冠正五位上階一」
※
古今著聞集(1254)六「狛は下姓によりて外位に叙す」
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外位
げい
令制の「内位」に対する位階。五位から初位までの 20階がある。地方の豪族や俘囚の長など卑姓のものに与えられた。その位田は内位の半分であると田令位田条にみえている。外位を与えられたものが,その後功を積み,内位に叙されることもあった。平安時代中期以降なくなった。
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げ‐い〔‐ヰ〕【外位】
律令制で、地方官に授けられた位。通常の位階である内位に準ずるもの。のち、姓の下位の者に与えられるようになった。外階。
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げい【外位】
日本古代の位階体系で傍系的な系列のひとつ。天武朝にみえる外位は,渡来人系の有功者や,672年(天武1)の壬申の乱で活躍した家柄の低い功臣への贈位として登場したが,八色の姓(やくさのかばね)(684)と翌年の新冠位制施行のなかに解消された。ついで大宝令位階体系では,唐の視品制(しほんせい)を参考にして設定され,外正五位上~外少初位下の20階。郡司・軍毅(ぐんき)など,地方豪族や農民が採用される官職の人々に授けられ,また蝦夷・隼人の有功者も対象にされた。
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世界大百科事典内の外位の言及
【位階】より
…授位手続上,五位以上は勅授,内六位~内八位までは太政官奏による奏授,外八位および初位は太政官の判定による判授とされた。
[位階制の変化]
大宝令には五位以下の位について,外位(げい)が設けられていたが,これは,地方採用を原則とする官職に就く者を対象としたものであった。一方,728年(神亀5)には外五位制が導入されるが,これによって六位から五位への昇進に当たって,一部の氏の出身者は外五位を経由せねばならなくなった。…
【叙位】より
…位階体系の中心系列である内位,傍系的な外位(げい),勲位を授けること。令制で位階を授ける方式は,内・外五位以上を授ける勅授,内八位・外七位以上を授ける奏授,外八位および内・外初(そ)位を授ける官判授に分かれるが,勲位は六等以上が勅授,七等~十二等が奏授であった。…
【律令制】より
…王臣の位階は一位~三位がそれぞれ正・従に,四位~八位は正・従がそれぞれ上・下に,初位は大・少がそれぞれ上・下に細分されており,合計30階からなるが,これらの有位者は官位の相当制によってその位階に応じた官職に任ぜられ,天皇の官僚として国家機構の維持・運営にあたったのである。このほか正五位上~少初位下の20階には別にそれに相当する外位(げい)(外正五位上~外少初位下)が設けられており,郡司,軍毅(ぐんき),国博士,国医師などの外考の官職につくものに授けられた。これらの官職は地方の豪族層以下のものの任用を前提としており,外位は中央豪族層からは差別されたそれらの階層を主たる対象として設けられたものである。…
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