日本大百科全書(ニッポニカ) 「育児食」の意味・わかりやすい解説
育児食
いくじしょく
乳児から幼児に至る育児過程の食事を総称していう。乳児期前半の育児食は母乳か人工栄養(調製粉乳)が主流であり、乳児期後半になると、しだいに離乳食の比重が高くなり、離乳完了期では主たる栄養素は乳汁成分以外で摂取されるようになり、幼児食に移行する。育児食の基本としては、乳幼児の発育、発達に応じて必要な栄養素と熱量(カロリー)を供給することと、発達段階に応じた調理形態、つまり乳汁から開始して離乳食、幼児食へと変化させていくことが必要である。
[帆足英一]
調理形態
乳児期前半、とくに生後5か月前後までの乳児に対する育児食は、乳汁が主体となり、母乳あるいは人工乳による栄養供給となる。授乳方法としては自律授乳が一般的であるが、生後2か月ごろまでの乳児は未熟なため、哺乳(ほにゅう)量の調節を自ら行うことが困難であり、とくに人工栄養の際には、過剰授乳とならないように留意する必要がある。生後5か月前後から離乳食を開始するが、その時期の選択は個々の乳児の発達個性を尊重する。前期離乳食は、生後5~6か月の乳児を対象に、ペースト状のどろどろした形態、中期は7~8か月を対象に、舌でつぶせるつぶつぶの形態、後期は9~10か月を対象に、歯ぐきでつぶせる程度の固さというように、そしゃく能力と嚥下(えんげ)能力の発達に応じた調理形態に配慮しなければならない。そして、1歳前後を目安として離乳を完了させ、幼児食に移行するというのが一般的である。離乳食の進行に伴って、乳汁量はしだいに減少していくが、一般には離乳を完了した段階において、牛乳を1日400~600ミリリットル飲んでいる。
[帆足英一]