胎蔵界(読み)タイゾウカイ

デジタル大辞泉 「胎蔵界」の意味・読み・例文・類語

たいぞう‐かい〔タイザウ‐〕【胎蔵界】

密教で説く二つ世界の一。金剛界に対して、大日如来理性の面をいう。仏の菩提ぼだい心が一切を包み育成することを、母胎にたとえたもの。蓮華れんげによって表象する。
胎蔵界曼荼羅まんだら」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「胎蔵界」の意味・読み・例文・類語

たいぞう‐かいタイザウ‥【胎蔵界】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語両界一つ。密教で説く大日如来の理の方面を代表する。大悲胎蔵生ともいい、胎児が母胎の中で成育してゆく不思議な力にたとえて、大日如来の菩提心があらゆる生成の可能性を蔵していることを示したもの。胎蔵。⇔金剛界
    1. [初出の実例]「胎蔵界金剛界を年をへだてつつたがひにおこなふ」(出典:観智院本三宝絵(984)下)
  3. 胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)のこと。
    1. [初出の実例]「此蓮花の上に胎蔵界(タイザウカイ)には、八葉九尊まします」(出典:真如観(鎌倉初))

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胎蔵界」の意味・わかりやすい解説

胎蔵界
たいぞうかい

大日経(だいにちきょう)』に説かれる仏の世界で、それを図示したのが胎蔵界曼荼羅(まんだら)(詳しくは大悲胎蔵生(だいひたいぞうしょう)曼荼羅Mahākaru ágarbha-sabhava-maala)である。毘盧遮那(びるしゃな)仏(大日如来(にょらい))の一切(いっさい)の衆生(しゅじょう)に対する慈悲(大悲)によって、その悟りの内奥(胎蔵)から生起した(生)諸仏・諸尊の世界で、毘盧遮那仏が、その無数劫(こう)の過去世に蓄積した経験を現世に生きる衆生に対応した形に変化させ(神変)、その上に付加して(加持(かじ))、衆生に仏の真実の世界の内実(荘厳(しょうごん))としての意味づけを与えた、その総体(マンダラ)である。

[津田眞一]

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百科事典マイペディア 「胎蔵界」の意味・わかりやすい解説

胎蔵界【たいぞうかい】

サンスクリット,ガルバ・ダートゥの訳。金剛界とともに密教における二つの世界の一つ。蓮華や母胎が種子を生育するように,人の仏性を育て,仏とする理法の世界。《大日経》に説く。その図示が胎蔵界曼荼羅(まんだら)。→両界曼荼羅

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胎蔵界」の意味・わかりやすい解説

胎蔵界
たいぞうかい

金剛界 (こんごうかい) と対になり,密教における2種法門の一つ。胎蔵とはサンスクリット語 garbha-kośaの漢訳語で,一切を含蔵する意義を有し,また母胎中に男女の諸子を守り育てる意義を有している。因徳を成じて果徳に同じる胎蔵界を蓮華が開くことにたとえて蓮華胎蔵といい,仏の大悲が衆生を守護して育てることを,母胎が子を養育することにたとえて胞体胎蔵という。

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