毘盧遮那仏(読み)ビルシャナブツ

デジタル大辞泉 「毘盧遮那仏」の意味・読み・例文・類語

びるしゃな‐ぶつ【毘盧遮那仏】

《〈梵〉Vairocana音写光明遍照と訳す》大乗仏教で、蓮華蔵れんげぞう世界に住し、その身は法界に遍満し、身光・智光の大光明で全宇宙を照らす仏。真言宗では大日如来天台宗では法身仏華厳宗では報身仏をさす。盧舎那仏遮那仏毘盧遮那

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精選版 日本国語大辞典 「毘盧遮那仏」の意味・読み・例文・類語

びるしゃな‐ぶつ【毘盧遮那仏】

  1. びるしゃなにょらい(毘盧遮那如来)
    1. [初出の実例]「此毗盧遮那仏三字密言共一字無量」(出典:即身成仏義(823‐824頃))

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改訂新版 世界大百科事典 「毘盧遮那仏」の意味・わかりやすい解説

毘盧遮(舎)那仏 (びるしゃなぶつ)

大乗仏教のなかでも最も汎神論的色彩の濃い,光明を属性とする仏。サンスクリットバイローチャナVairocanaの音訳で,前接辞バイvai-は〈広く〉の意,ローチャナの語根ルチrucは〈照らす〉の意である。略して盧遮那(るしやな)仏,意訳して光明遍照と呼ばれる。イランの太陽神信仰などと関連して出現したとされる無量光仏(=阿弥陀仏),弥勒菩薩などの一連の仏菩薩の一環と考えられよう。蓮華蔵世界に住し,《華厳経》や《梵網経》の教主となり,とくに後者においては,無数の釈迦を化現してさまざまに説法するとされ,東大寺大仏のモデルとなった。のち密教では,これにマハーmahā(大きい)をつけたマハーバイローチャナMahāvairocana(大日如来)が《大日経》の教主として,また全存在の根源として信仰されている。
執筆者:

単独で造形された作例は少ないが,著名な作例としては東大寺大仏がある。743年(天平15)聖武天皇が大仏造立を発願し,749年(天平勝宝1)に鋳造をほぼ完成し,752年に開眼供養を行った。東大寺の本尊であるが,その後2度の兵火に焼損を被り,現在の大仏は江戸時代の修補になる部分が大きい。このほか唐招提寺金堂の本尊である脱活乾漆像は奈良時代後期の作例で,鑑真のもたらした新しい様式を反映した像である。絵画としては東大寺大仏の台座の蓮弁の蓮華蔵世界図がある。たびたびの兵火を免れた当初部分に線彫(毛彫)されたもので,《華厳経》《梵網経》の教主毘盧舎那仏を中心に無数の化現した仏・菩薩を表した図で,《華厳経》や《梵網経》に説く世界観をよく示している。また敦煌壁画中には華厳経変相として,《華厳経》に基づいてその教説を図解した作例があり,その中心に毘盧舎那仏が描かれる。
華厳経美術
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「毘盧遮那仏」の意味・わかりやすい解説

毘盧遮那仏
びるしゃなぶつ

『華厳経(けごんきょう)』の教主。毘盧遮那(サンスクリット語のバイローチャナの音写。Vairocana)とは「輝くもの」の意味で、元は太陽の光照のことであったが、のちに仏教の根源的な仏とされた。盧遮那仏、遮那仏ともいい、遍一切処(へんいっさいしょ)、光明遍照(こうみょうへんじょう)などと漢訳する。この仏は無限の過去から無量無辺の修行を積んで悟りを得た仏(報身(ほうじん))で、釈迦(しゃか)の悟りの境地を仏格化したもの(法身(ほっしん))。その形像は千葉蓮華(せんようれんげ)に座し、右手は施無畏印(せむいいん)、左手を与願印(よがんいん)とする奈良の大仏にみられる。法相(ほっそう)宗では毘盧遮那、盧遮那、釈迦を自性、受用、変化の三身に配釈し、天台宗では法身、報身、応身の三身に配し、毘盧遮那と釈迦の同体を説く。密教では大日如来(だいにちにょらい)である。

[吉田宏晢]

『玉城康四郎著『永遠の世界観・華厳経』(1965・筑摩書房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「毘盧遮那仏」の意味・わかりやすい解説

毘盧遮那仏
びるしゃなぶつ
Vairocana

「輝くものの子」を意味するサンスクリット語の音写。毘盧舎那仏とも音写し,略して盧舎那仏,遮那,または「びるさな仏」「るさな仏」ともいう。訳して光明遍照,遍一切処。仏陀の智慧の広大無辺なことを象徴し,『華厳経』の本尊。奈良の大仏はその造形で,右手は施無畏印,左手は与願印とされる。法相宗では,盧舎那,釈迦仏を受用,変化二身とし,毘盧舎那仏を自性身として区別する。天台宗では毘盧舎那仏,盧舎那仏,釈迦仏を,それぞれ法身,報身,応身の三身に配して究竟の妙境に顕現するものを毘盧舎那仏とする。密教ではこの仏陀を大日如来とみなして理智不二の法身であるとする。日本では8世紀以来信仰され,造像されたが遺品はきわめて少い。東大寺の大仏 (1692) ,唐招提寺金堂の本尊,福岡戒壇院の本尊が著名である。

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百科事典マイペディア 「毘盧遮那仏」の意味・わかりやすい解説

毘盧遮那仏【びるしゃなぶつ】

サンスクリットのバイローチャナVairocanaの音写。《華厳(けごん)経》の本尊で,太陽の意味があり,その光によって仏智の広大無辺を象徴する。蓮華蔵世界の教主で,千葉(せんよう)蓮華に座す。仏像は右手を施無畏(せむい)印,左手を与願印とし,奈良大仏もこの形。密教では大日如来とする。
→関連項目蓮華蔵世界

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「毘盧遮那仏」の解説

毘盧遮那仏
びるしゃなぶつ

サンスクリットのバイローチャナの音訳。盧舎那・遮那とも略称し,光があまねく照らすごとく全宇宙に遍満する仏身の意から光明遍照ともいう。「華厳経(けごんきょう)」や「梵網経(ぼんもうきょう)」の教主。その仏身についての解釈は宗派によって異なり,華厳宗では毘盧遮那・盧舎那・釈迦を同一仏身とする。法相宗では自性(じしょう)・受用(じゅゆう)・変化(へんげ)の三身のうちの自性,天台宗では法身(ほっしん)・報身(ほうじん)・応身(おうじん)のうちの法身にあて,真言宗では大日如来としつつも三身に配する説もある。奈良東大寺金堂(大仏殿)の毘盧遮那仏は,聖武天皇が河内国知識寺の毘盧遮那仏を拝して感動し,造立されたと伝える。奈良唐招提寺金堂の毘盧遮那仏とともに国宝。

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世界大百科事典(旧版)内の毘盧遮那仏の言及

【華厳経美術】より

…《華厳経》にもとづいて展開された仏教美術をいうが,その遺品は中国,朝鮮,日本を通じて少ない。日本においては,東大寺を中心として,奈良時代と平安末から鎌倉期にかけてのものとが断続的に遺存する点が,華厳経美術を考察する上で注目される。《華厳経》には60巻本の旧訳(くゆく)と,80巻本の新訳とあるが,各本とも最終の会(え)は入法界品であり,善財童子が53人の善知識を訪ねて求法(ぐほう)する仏教説話である。…

【大黒天】より

…摩醯首羅(まげいしゆら)(大自在天)の化身で戦闘の神。《大日経疏》においては毘盧遮那(びるしやな)仏の化身で灰を身体に塗り,荒野の中にいて荼枳尼(だきに)を降伏させる忿怒(ふんぬ)神であると説く。胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)の外金剛部院に描かれる像は,その特色を反映するかのように身色黒色で焰髪が上に逆立った三面六臂の忿怒像である。…

【大日】より

…密教の中心本尊で如来の一つ。サンスクリット名マハーバイローチャナMahāvairocanaの訳で,摩訶毘盧遮那(まかびるしやな)と音訳し,単に毘盧遮那仏ともいう。その智慧の光明があまねく一切に及び,慈悲の活動が永遠不滅とされ,密教の体系ではすべての諸仏諸菩薩はこの如来より出生したとされる。…

【本初仏】より

…サンスクリットのアーディ・ブッダĀdi‐buddhaの訳語として近年の仏教学者が用いている。チベットでは毘盧遮那(びるしやな)仏の法身である普賢菩薩を,ネパールではスバヤンブー(自然生)とも称される文殊菩薩を指す。いずれもタントラ仏教での異名であり,時輪タントラではその根本タントラ(密教経典)に〈最勝本初仏〉の名を冠している。…

【密教】より

…第1の雑密とは,世界の女性原理的霊力をそれと同置された呪文,術語でいう真言(しんごん)(マントラ),明呪(みようじゆ)(ビディヤーvidyā),陀羅尼(だらに)(ダーラニー)等の誦持によってコントロールし,各種の目的(治痛,息災,財福の獲得など)を達しようとするものである。純密とは《大日経(だいにちきよう)》と《金剛頂経(こんごうちようきよう)》のいわゆる両部大経を指すが,前者は大乗仏教,ことに《華厳経》が説くところの世界観,すなわち,世界を宇宙的な仏ビルシャナ(毘盧遮那仏)の内実とみる,あるいは普賢(ふげん)の衆生利益の行のマンダラ(余すところなき総体の意)とみる世界観を図絵マンダラとして表現し,儀礼的にその世界に参入しようとするもので,高踏的な大乗仏教をシンボリズムによって巧妙に補完したものとなっている。《金剛頂経》はシンボリスティックに表現された仏の世界を人間の世界の外側に実在的に措定し,〈象徴されるものと象徴それ自体は同一である〉というその瑜伽(ヨーガ。…

※「毘盧遮那仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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