脱窒素作用ともいう。一般には土壌に存在するバクテリア(脱窒菌)の働きで主として硝酸態窒素NO3⁻が窒素ガスN2もしくは酸化窒素N2Oの形に還元されて大気中に土壌からガス状で揮散する現象をいう。ごくわずかな量の脱窒はどのような土壌でも生じているといわれているが,大量の脱窒が発生するには,土壌中の酸素が少なくなり土壌が還元的な条件になること,同時に土壌中に酸素の多い酸化的場所ができ,硝酸態窒素が存在するか,または硝酸が生成する条件があること,脱窒菌が存在することの3条件が必要となる。このような条件は一般に水田や沼沢地の底質土でみられるもので,そのようなところでは顕著な脱窒の生ずることがある。日本では水田の脱窒に関する研究が塩入松三郎らによって世界にさきがけて行われ,最も進んでいる。水田に湛水(たんすい)すると土の表層は水を通して酸素が供給されるため酸化的となり,そこではアンモニア態窒素など窒素化合物が酸化されて硝酸になる。しかし,土の下層には酸素がとどかないために酸素不足の還元的な層が発達し,表層で生成した硝酸がそこで窒素ガスに還元され,空中に揮散する。ときには施肥した窒素の大半が脱窒で失われることもあり,肥料のむだとなる。肥料不足の時代には脱窒は深刻な問題であり,これを防ぐために肥料を土の表面だけでなく,作土全層に混合するような全層施肥法が奨励されている。また硝化抑制剤を用いて表層での硝酸の生成を抑制するのも効果がある。水田に硝酸態窒素肥料を用いないのは脱窒で揮散するのを防止するためである。畑でも有機物を多く施与したり,雨が降って土中の水分が多くなったときには土のなかの硝酸が還元されて脱窒する。
執筆者:茅野 充男
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【Ⅰ】脱窒素作用ともいう.硝酸イオンや亜硝酸イオンを分子状窒素にまで還元する生物反応の過程をいう.通常,土壌微生物の作用で嫌気的条件下で行われる.好気的生物が呼吸の最終電子受容体として酸素を利用するのに対し,脱窒を行う生物は硝酸あるいは亜硝酸を利用し,窒素分子にまで還元する.その機構は十分解明されていないが,その大略は図のとおりである.
脱窒は硝酸呼吸の一部である.土壌中で起こるこの過程は,植物の窒素源の確保にとって大きな損失である.【Ⅱ】石油精製において,石油留分から窒素分を除去すること.水素化精製で脱硫と同時に起こる.
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…その際のNO3-の還元の度合は細菌の種類により異なり,NO2-,N2,またはNH3まで還元するものがある。N2まで還元される場合は,特に脱窒素作用または脱窒denitrificationと呼ばれる。脱窒の場合には,N2のほかにN2O,NOが副次的に形成されることがある。…
…その際のNO3-の還元の度合は細菌の種類により異なり,NO2-,N2,またはNH3まで還元するものがある。N2まで還元される場合は,特に脱窒素作用または脱窒denitrificationと呼ばれる。脱窒の場合には,N2のほかにN2O,NOが副次的に形成されることがある。…
※「脱窒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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