脳シンチグラフィ検査(読み)のうシンチグラフィけんさ

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「脳シンチグラフィ検査」の解説

脳シンチグラフィ検査


体内放射性同位元素を投与し、その脳内動態や分布を検出して、病気所在性質を検査する方法です。

脳梗塞、脳出血の診断に有用な検査

 放射性同位元素標識薬剤(ラジオアイソトープ)を体内に注入して、脳の変化を計測して診断する検査方法で、脳核医学検査ともいわれています。これには、脳血流シンチグラフィと脳腫瘍シンチグラフィとがあります。

 脳血流シンチグラフィには、使用するアイソトープの違いと、解析する機械の違いで、PET(ポジトロン放出断層撮影法)とSPECT(単光子放出コンピュータ断層撮影法)に分けられますが、日常ではSPECTが一般に行われています。

 SPECTは、脳の血液の流れを画像処理して、脳梗塞脳出血クモ膜下出血などの診断のために行われている検査です。以下、SPECTについてみていきます。

脳梗塞では血流が低下

 血管内に投与されたγガンマ線で標識されたアイソトープが脳に集積すると、γ線を発します。これを特殊な検出器シンチカメラ)で検出して(撮像という)、核医学情報処理装置で画像処理解析して判定します。脳梗塞をおこして血流が低下すると、その部分のアイソトープのとりこみが低下し、血流遮断の像として写ります。

 SPECTは、頭部CT(→参照)やMR(→参照)よりも、早期の脳梗塞を診断することができます。

■脳梗塞

SPECTの横断層像。左側頭葉に血流の欠損がみられる。


認知症の診断にも行う

 また、アルツハイマー型認知症に対しては、頭部CTやMRなどの形態学的検査のみでは診断が困難ですが、SPECTによる脳血流検査では、早期の認知症の診断に有用となります。

検査中は動かないように

 検査は、シールドされた核医学検査室で行います。検査台にあお向けになります。目隠しをし、頭を固定することもあります。検査中、目を開いたり動いたりすると結果の判定に影響してしまうので、なるべく動かないように静かにしています。

 シンチカメラが頭の約1㎝の距離まで近寄ってきます。アイソトープを静脈注射し、1分間カメラで撮像します。次に、カメラを回転させながら約10分間撮像し、終了です。機械の動く音が聞こえますが、心配ありません。体動の多い場合や子供は、催眠剤で眠らせて検査を行います。

心配ないアイソトープ

 検査当日の飲食は普通にとってかまいません。術着に着替える必要はありませんが、上半身、頭、顔の金属(ネックレスやイヤリング、ヘヤピン、胸ポケットの金属など)は画像処理に影響するので外します。

 検査後の注意もありません。体内に入ったアイソトープは微量であり、速やかに尿中に排泄されるので、体内に貯留する心配はありません。

疑われるおもな病気の追加検査は

◆脳梗塞→頭部CT、MR、頭部血管造影など

◆脳出血→頭部CT、MR、頭部血管造影など

◆クモ膜下出血→腰椎穿刺、頭部CT、MR、頭部血管造影など

◆認知症→頭部CT、MR、脳波検査など

医師が使う一般用語
「スぺクト」または「脳スぺクト」=single photon emission computed tomography(単光子放出コンピュータ断層撮影法)の略SPECTから

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報