脳出血(読み)ノウシュッケツ(その他表記)Cerebral hemorrhage

デジタル大辞泉 「脳出血」の意味・読み・例文・類語

のう‐しゅっけつ〔ナウ‐〕【脳出血】

脳内の血管が破れて出血が起こった状態。それが血腫けっしゅとなって脳実質を圧迫・破壊し、種々の障害をきたす。高血圧・動脈硬化動脈瘤どうみゃくりゅうの破裂などで生じ、嘔吐おうと痙攣けいれん片麻痺へんまひ意識障害などの症状がみられ、昏睡こんすいに陥ることもある。脳溢血のういっけつ脳内出血

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共同通信ニュース用語解説 「脳出血」の解説

脳出血

高血圧などのため脳内の細い血管が破れて出血し、その血液に圧迫され脳細胞が損傷を受ける病気。出血の量や箇所により症状は異なるが、脳の左側での出血だと、右手足の運動機能や感覚のほか、言語機能に障害が出ることが多い。

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家庭医学館 「脳出血」の解説

のうしゅっけつのういっけつ【脳出血(脳溢血) Brain Hemorrhage】

◎ほとんどは高血圧が原因
[どんな病気か]
[原因]
[症状]
◎出血しやすい部位がある
[種類]

[どんな病気か]
 脳の動脈の一部が破れ、脳の中(脳実質(のうじっしつ)内)に血液があふれ出るのが脳出血です。
 動脈の破れた部分は自然にふさがり、出血はまもなく止まりますが、あふれ出た血液が固まって血腫(けっしゅ)ができ、この血腫が脳を圧迫したり破壊したりして、脳のはたらきが障害され、さまざまな神経症状が現われてきます。

[原因]
 脳出血のほとんどは、高血圧が原因でおこります。
 高血圧があると、動脈に絶えず高い圧がかかるため、動脈壁、とくに脳の奥深いところにある細い動脈の動脈壁がもろくなって弾力性がなくなり、こぶ状にふくらんできます(動脈硬化(どうみゃくこうか)による微小動脈瘤(びしょうどうみゃくりゅう))。この部分が高い血圧に耐えきれなくなって破裂し、脳出血をおこすと考えられています。
 そのほか、脳動脈の一部が先天的にこぶ状にふくらんでいる脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)、動脈と静脈が異常な血管を介して直接つながっている脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)、異常に細い血管が網の目のように発育するもやもや病といった脳の血管の異常、頭部外傷、脳腫瘍(のうしゅよう)、血管腫(けっかんしゅ)のほか、血友病(けつゆうびょう)、白血病(はっけつびょう)などの血液の病気が原因でおこる脳出血もあります。
 また、血栓(けっせん)防止の治療薬(脳梗塞(のうこうそく)の再発予防)であるアスピリン(抗血小板薬(こうけっしょうばんやく))、ワルファリンカリウム(抗凝固薬(こうぎょうこやく))などの血液を固まりにくくする薬の常用でおこる脳出血もあります。
 その一方で、いくら検査をしても原因がわからない場合もあります。

[症状]
 症状は出血した部位によって異なります(「種類」)。
 典型的な場合は、気分が悪くなって、頭痛、めまい、嘔吐(おうと)などが現われてきます。ときには、けいれんや大小便の失禁(しっきん)をともなうこともあります。
 その後、ろれつが回らなくなって思うように話せない、片側の手足の力が抜けて思うように動かせない(片(へん)まひ)、片側の口角からよだれをたらす、舌をまっすぐに伸ばせないなどの症状が数時間以内に現われてきます。
 軽症の場合は、ろれつが回らない、片側の顔や手足の軽いまひ、半身のしびれや感覚が鈍くなる程度ですみますが、重症になると意識障害が出現し、さらに進行すると深い昏睡状態(こんすいじょうたい)(名前を呼んだり、からだをつねったりしても反応しない)におちいり、いびきをかき、呼吸状態が悪くなり、そのまま死亡することもあります。
 意識が回復しても、片側の顔面や手足のまひ、言語障害、ぼけ症状などの後遺症が残ることも少なくありません。
 脳出血の発作は、典型例では日中の活動時におこることが多く、ストレスのかかる会議や興奮時、急激にからだに力を入れたり腹圧を加える、寒いところに出る、といったことがきっかけとなっておこります。したがって、トイレに入っているときや入浴前後の寒い脱衣場などで発作がおこることが少なくありません。

[種類]
 脳は、大別すると左右の大脳半球(だいのうはんきゅう)、小脳(しょうのう)、脳幹部(のうかんぶ)の3つの領域に分けられます。
 脳出血は、脳の動脈のどこにおこっても不思議はないのですが、高血圧が原因の場合は、おこりやすい部位が決まっています。高い圧がかかると破裂しやすい部位があるのです。
 大脳半球では、脳深部の中心に近い視床(ししょう)という部位(視床(ししょう))出血と、その外側にある被殻(ひかく)という部位(被殻出血(ひかくしゅっけつ))におこることが多いのですが、表面に近い部位(皮質下出血(ひしつかしゅっけつ))におこることもあります。
 脳幹部では橋(きょう)という部位(橋(きょう))出血におこりやすく、小脳にもおこりやすい部位(小脳出血(しょうのうしゅっけつ))があります。
 そのほか、まれに尾状核頭部(びじょうかくとうぶ)にもおこることがあります。
■視床出血(ししょうしゅっけつ)
■被殻出血(ひかくしゅっけつ)
■皮質下出血(ひしつかしゅっけつ)(脳葉型出血(のうようがたしゅっけつ))
■橋出血(きょうしゅっけつ)
■小脳出血(しょうのうしゅっけつ)
■尾状核頭部出血(びじょうかくとうぶしゅっけつ)

■視床出血(ししょうしゅっけつ)
●症状
 視床には、感覚をつかさどる中枢(ちゅうすう)があるため、ここに出血がおこると、顔面を含む半身の感覚が鈍くなったり、過敏になったりします。
 視床のすぐ外側には内包(ないほう)という部位があって、運動や感覚をつかさどる神経の束がぎっしりと存在するため、血腫が内包におよぶと、顔面や手足のまひ、ろれつが回らないといった言語障害なども現われてきます。
 また、視床の内側には脳室(のうしつ)という部屋があり、脳幹部や脊髄(せきずい)、大脳の表面とつながっているので、血腫が脳室にまでおよぶと脳室内に血液がもれ出し(脳室穿破(のうしつせんば))、意識障害をおこしたり、眼球が鼻先を見つめるように下を向いたりします。
 そのほか、力は入るのに手足を思うように動かせない(運動失調(うんどうしっちょう))、手足や手の指が意思に反してひとりでに動く(不随意運動(ふずいいうんどう))こともあります。
●治療の原則
 視床は、脳の深いところにあるので、手術をすると健全な脳を傷つけることになるため、開頭による手術はしないのが原則です。
 症状や障害に応じて薬物療法リハビリテーションを行ないます。
●予後
 血腫の大きさや脳室への穿破の程度、出血部位で異なります。
 軽症であれば、後遺症を残さずに回復することもありますが、運動まひはよくなったのに、顔面(おもに口の周囲)や手の先などにビリビリとしびれるようないやな感じが残ったり、感覚障害が強く、失調や不随意運動のためにスムーズに運動ができず、立ったり歩いたりしようとしても、思うようにバランスがとれないなどの後遺症が残ることもあります。
 重症の場合は、発作時から意識状態が悪く、回復しても手足のまひや感覚障害が強く残り、寝たきりの状態になったり、ときには発作後1週間以内に死亡することもあります。

■被殻出血(ひかくしゅっけつ)
 高血圧が原因でおこる脳出血のなかで、もっとも頻度が高いものです。
●症状
 被殻の内側には、運動や感覚をつかさどる神経が通る内包という部位があります。被殻に出血がおこると、内包に血腫が入り込んだり、内包を圧迫することが多いので、顔面や手足のまひ、半身の感覚が鈍くなるなどの症状が現われますが、視床出血に比べて感覚障害は軽いのが特徴です。
 被殻の外側は、言語、行動、理解、認識などの高次機能をつかさどる神経細胞と連絡路でつながっています。
 このため、左大脳半球に出血すると、ことばが出せない、しゃべれても意味をなさない、人のいうことが理解できないといった失語症(しつごしょう)が現われることもあります。
 右大脳半球に出血すると、左半側の空間にあるものを無視する半側空間無視(はんそくくうかんむし)がおこることもあります。
●治療の原則
 中等度以内の脳出血は、手術でも、内科的治療でも機能的な予後は変わらないので、手術はしないのが原則です。最近は、細い針を血腫まで入れて、血液を吸いとる手術(血腫吸引術(けっしゅきゅういんじゅつ))が行なわれることがあります。
 重症の場合は、手術でたとえ生命が助かっても、重度の後遺症が残ったり、寝たきりや植物状態になることが多いため、内科的治療が原則となります。
●予後
 血腫の大きさで決まることが多く、軽症の場合は、適切な治療で比較的早い時期に社会復帰ができますが、重症の場合は、意識障害が強く現われ、半身不随で寝たきりになったり、1週間以内に死亡することもあります。

■皮質下出血(ひしつかしゅっけつ)(脳葉型出血(のうようがたしゅっけつ))
 頭の位置と機能の面から、大脳半球の表面に近いところは、前頭葉(ぜんとうよう)、頭頂葉(とうちょうよう)、側頭葉(そくとうよう)、後頭葉(こうとうよう)の4つの部分に分けられていて、ここに出血がおこるものを皮質下出血といいます。
 高血圧のほか、脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)、海綿状血管腫(かいめんじょうけっかんしゅ)、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)、静脈洞血栓症(じょうみゃくどうけっせんしょう)、脳腫瘍(のうしゅよう)、アミロイド血管症(けっかんしょう)、頭部外傷、出血をおこしやすい血液の病気、薬物などが原因となることもあって、早く原因を突きとめることが必要です。
●症状
 たいてい頭痛がおこります。大脳半球の表面には、神経細胞の存在する皮質(ひしつ)という部位がありますが、その下の皮質下(白質(はくしつ))は、運動や感覚をつかさどる神経帯がまばらなため、血腫の大きさに比べてまひや感覚の障害は比較的軽いのが特徴です。
 前頭葉の出血の場合は、認知症や尿失禁(にょうしっきん)、場所や時間がわからない、話し声が小さい、ことばがでにくい、まひなどの症状が出ることもあります。
 頭頂葉や側頭葉の出血では、左半球におこれば失語症、失行、失認などの症状が、右半球の場合は、左側の空間失認(左半側にあるものを無視する)や注意力の低下、感情表現の障害などがみられることもあります。
 また、どちらの半球に出血しても、血腫と反対側の視野が狭くなり、見えにくくなることもあります。
 後頭葉に出血した場合は、血腫と反対側の視野が見えにくくなるため(同名性半盲(どうめいせいはんもう))、見えない側の頭やからだをものにぶつけやすいので、家族や周囲の人が注意する必要があります。
●治療の原則
 原因となった病気によって異なり、脳神経外科での手術が必要な場合もあります。
●予後
 重い病気が隠れていない場合は、内科的な治療で経過も良好ですが、出血をおこした原因となる病気を早く調べることがたいせつです。

■橋出血(きょうしゅっけつ)
 脳のもっとも奥深い、大脳と脊髄をつないでいる脳幹にある、橋という部位での出血です。
 高血圧のほか、脳動静脈奇形、血管腫、脳腫瘍が原因のこともあります。
●症状
 橋は、その下にある延髄(えんずい)とともに生命中枢といわれ、意識、呼吸、体温調節、嚥下(えんげ)(飲み込み)などの機能をつかさどるたいせつなところなので、大脳半球の出血と比べると意識障害が現われやすく、呼吸の抑制、体温の異常な上昇、嚥下障害がおこることがあります。また、手足のまひや感覚障害もおこることが多いものです。
 橋には、眼球を動かしたり、顔や口を動かしたりする脳神経や中枢があるため、眼球の位置や動きが障害されたり、瞳孔(どうこう)が極端に小さくなったり、大脳半球の出血に比べて、よりひどく顔がゆがんで、ろれつが回らなくなるのが特徴です。
●治療の原則
 原則として手術はせずに、症状に応じた治療が行なわれます。
●予後
 意識障害が軽い場合は、社会復帰が可能ですが、血腫が大きく意識障害の強い場合は、強い後遺症を残したり、呼吸が止まり死亡することも少なくありません。

■小脳出血(しょうのうしゅっけつ)
 もっとも多い原因は、高血圧です。
●症状
 突然のめまい、頭痛、吐(は)き気(け)、嘔吐(おうと)などで発症します。
 軽症であれば、意識は障害されず、手足のまひもおこりませんが、小脳は運動全体をコントロールしているところなので、立ち上がろうとしても立てなかったり、歩けなかったりすることがよくおこります。また、出血した側の手足に運動失調がおこったり、ろれつの回りが悪くなったり(小脳性言語障害)することもあります。
 血腫が大きい重症例では、初めは意識がはっきりしていますが、しばらくすると、血腫が脳幹部を圧迫するため徐々に意識状態が悪化し、手足のまひが現われ、呼吸が不規則になります。
●治療の原則
 小さな出血(直径3cm以下)は、内科的治療で良好な経過をたどり、社会復帰が可能なことが多いものです。意識状態が急速に悪化する場合は、脳神経外科で適切な手術を受ければ命を救え、さらに社会復帰が可能なこともあります。

■尾状核頭部出血(びじょうかくとうぶしゅっけつ)
 症状が似ているため、くも膜下出血(まくかしゅっけつ)とまちがわれやすく、CTで診断します。原因の多くは高血圧です。
●症状
 突然、頭痛と嘔吐がおこり、意識障害が現われることが多く、手足のまひはないか、あっても軽度です。
●予後
 大出血でなければ、予後はよく、内科的治療で後遺症を残さず回復します。

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六訂版 家庭医学大全科 「脳出血」の解説

脳出血
のうしゅっけつ
Cerebral hemorrhage
(脳・神経・筋の病気)

どんな病気か

 脳出血とは脳内の血管が何らかの原因で破れ、脳のなか(大脳、小脳および脳幹(のうかん)の脳実質内)に出血した状態をいいます。そのために意識障害、運動麻痺、感覚障害などの症状が現れます。血腫(けっしゅ)が大きくなると脳浮腫(のうふしゅ)によって頭蓋内圧が高くなって脳ヘルニアを起こし、重い場合は脳幹部が圧迫されて死に至ります。

 近年、脳出血の死亡数は減ってきましたが、その最大の理由は高血圧の内科的治療が広く行きわたり、血圧のコントロールが十分に行われるようになったためと考えられます。また最近、脳出血は軽症化していますが、運動障害や認知症(にんちしょう)などの後遺症で悩む患者さんが多いのも事実です。

原因は何か

 高血圧が原因で起こる脳出血が最も多く、全体の70%を占めます。血管の病変をみてみると、脳内の100~300㎛の細い小動脈に血管壊死(けっかんえし)という動脈硬化を基盤とした病変ができ、これに伴ってできる小動脈瘤(しょうどうみゃくりゅう)(小さな血管のこぶ)の破裂が脳出血の原因になります。そのほか、脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)脳動静脈奇形(のうどうじょうみゃくきけい)破綻(はたん)腫瘍内出血(しゅようないしゅっけつ)、脳の外傷、白血病(はっけつびょう)などの血液疾患が原因になります。高齢者では血管の壁に老人性変化のひとつであるアミロイドが沈着して脳出血の原因になることがあります。

 高血圧性脳出血を部門別にみてみると、最も頻度が高いのは被殻(ひかく)出血(40%)と視床(ししょう)出血(35%)で、この2つが約4分の3を占めます。次いで皮質下出血(10%)、(きょう)(中脳と延髄(えんずい)との間にある)出血(5%)、小脳出血(5%)、その他(5%)と続きます。

症状の現れ方

 一般的には頭痛、嘔吐、意識障害、片麻痺(かたまひ)が多くの患者さんにみられます。出血部位および血腫の大きさにより症状は違います。慢性期になっても何らかの後遺症を示す患者さんも多くみられます。

①被殻出血

 片麻痺、感覚障害、同名性半盲(どうめいせいはんもう)(両眼とも視野の片側半分が見えなくなる状態)などが主な症状で、進行すると意識障害がみられます。優位半球(ゆういはんきゅう)(通常左半球)の出血の場合では失語症(しつごしょう)もみられます(図6)。

②視床出血

 片麻痺、感覚障害は被殻出血と同じですが、感覚障害が優位のことがあります。視床出血では、出血後に視床痛という半身のひどい痛みを伴うことがあります(図7図8)。

③皮質下出血

 頭頂葉(とうちょうよう)側頭葉(そくとうよう)前頭葉(ぜんとうよう)などの皮質下がよく起こる部位です。症状は、出血する部位に応じて違いますが、軽度から中等度の片麻痺、半盲、失語などがみられます。

(きょう)出血

 突然の意識障害、高熱、縮瞳(しゅくどう)(2㎜以下)、呼吸異常、四肢麻痺(ししまひ)などがみられます。大きな橋出血の場合は予後が不良です。

小脳出血

 突然の回転性のめまい、歩行障害が現れ、頭痛や嘔吐がよくみられます。

検査と診断

 CTが最も有用で、発症後数分以内に高吸収域(血腫が白く写る)として現れ、3~6時間で血腫が完成し、約1カ月で等吸収域(脳組織と同じ色に写る)になり、やがて低吸収域(脳組織より黒く写る)になります。脳動脈瘤、脳動静脈奇形脳腫瘍(のうしゅよう)による出血が疑われる場合は、脳血管撮影が必要です。

治療の方法

 高血圧性脳出血の治療は、血腫による脳実質の損傷を軽くし、再出血や血腫の増大を防ぎ、圧迫によって血腫の周囲の二次的変化が進まないようにすることです。このため内科的治療としては、頭蓋内圧亢進(ずがいないあつこうしん)に対する抗浮腫薬の投与、高血圧の管理、水電解質のバランス、合併症の予防と治療が基本になります。外科的治療が必要かどうかの検討も同時に行います。

 血腫の増大は、発症してから数時間以内に約20%の患者さんにみられ、多くの場合は発症6時間以内に止まります。一方、脳浮腫は脳ヘルニアを起こして、予後に重大な影響を与えます。通常、脳浮腫は3日目から強くなり、ピークとなるのは1~2週です。抗浮腫薬としてグリセオールとマンニトールを用います。

 高血圧のコントロールは、脳出血の治療のなかで最も重要であり、また難しい問題でもあります。脳には、血圧の変動に対して脳の血流を一定に保とうとする自動調節能があることが知られていますが、急性期脳出血の場合はこの自動調節能が機能せず、脳の血流は血圧の上がり下がりに合わせて変動します。

 そのため急に血圧を低下させると脳血流量が減って組織を流れる循環が悪くなるので、降圧の程度は降圧薬投与前の血圧の80%くらいにするのが適当です。一般に、慢性期での降圧の目標レベルは治療を開始してから1~3カ月の間に140/90㎜Hg以下とするのがよいとされています。

 脳出血に対して手術が適応するかの判断については、出血量が10ml未満の小出血または神経学所見が軽度な症状では、部位に関係なく手術適応はなく、意識レベルが深昏睡の症例も手術適応はないとするのが一般的な方針です。部位別では、被殻出血は意識レベルが傾眠から半昏睡で血腫量が31ml以上、小脳出血は最大径が3㎝以上で進行性のものは手術適応があります。皮質下出血は血腫が50ml以上と大きく、意識レベルが傾眠から半昏睡の場合、手術が考慮されます。

 そのほかの脳出血の合併症として重要なのはけいれん発作、発熱、消化管出血、電解質異常、高血糖、下肢静脈血栓症(かしじょうみゃくけっせんしょう)などで、それぞれに対する治療も行います。

病気に気づいたらどうする

 脳出血の患者さんでは、意識障害とともに呼吸障害を伴う場合が多くみられます。倒れた直後に注意しなければならないのは、吐物によって窒息(ちっそく)することと吐物を誤飲することです。吐いた場合は麻痺側を上に、顔と体を横にして誤飲を防ぎます。救急車が来る前には、頭部を後屈させて下あごを持ち上げ、口を開けさせて気道を確保します。枕はあごが下がり、舌根(ぜっこん)が沈下しやすいので用いません。

 このような処置をして、患者さんをできるだけ早く専門の病院に運び、適切な治療を行うことが大切です。

 普段から血圧の高い患者さんに突然に起こる、上下肢における持続性で片側の脱力は、脳出血を含めた脳血管障害の可能性があるので、軽い場合でも神経内科、脳神経外科のある専門病院で精密検査することをすすめます。

北川 泰久


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

内科学 第10版 「脳出血」の解説

脳出血(血管障害)

定義・概念
 脳出血は脳梗塞,くも膜下出血とともに脳卒中の一病型であり,脳を灌流する血管が破綻して脳内に出血を生じる病態であり,形成された血腫により急激に局所神経症状を生じる.
分類
 脳出血は高血圧に起因するため高血圧性脳出血ともよばれるが,原発性脳出血と総称される.高血圧以外に血液疾患,薬剤,脳腫瘍,血管奇形,脳アミロイド血管症(cerebral amyloid angiopathy:CAA)が原因となる.
原因・病因
 高血圧性脳出血は穿通枝の細動脈硬化に起因する小動脈瘤の破綻により生じる.非高血圧性脳出血で最も多いのはCAAである.CAAは高齢者において脳表動脈にアミロイドが沈着して生じる.CAAの一部には遺伝的に発症する家系が報告されており,シスタチンCの遺伝子変異により生じるアイスランド型(シスタチンC型)CAAが日本人でも報告されている.そのほかに白血病や血小板減少症などの血液疾患,血友病や血小板無力症などの出血性素因,抗血栓薬や血栓溶解薬などの薬剤,原発性・転移性脳腫瘍,動静脈奇形・血管腫・もやもや病などの血管異常が原因となる.
疫学
 脳出血は徐々に減少しており,脳卒中に占める比率は20%以下となっており,寒冷地域で高く,大都市圏で低い.毎年約10万人の患者が発症し,約2万人が死亡している.飲酒と低コレステロール血症は脳出血の危険因子になる.高血圧性脳出血は被殻,視床,橋,小脳が4大好発部位であり,それぞれ約40%,30%,10%,10%を占める.高血圧性脳出血の減少とは対照的に,高齢者の増加によりCAAが増加している.CAAは剖検例において高齢になるほど頻度が高くなり,70~80歳代では40~50%,90歳以上では60~70%に達する.CAAではアポEのε2アレルがCAA関連脳出血の危険因子とされている.
病理
 高血圧性脳出血は脳深部を灌流する細動脈である穿通枝が高血圧によりリポヒアリノーシスやフィブリノイド壊死とよばれる変性をきたして小動脈瘤(Charcot-Bouchard動脈瘤)を形成し,破綻することにより生じる.CAAは皮質や皮質下にしばしば多発する脳葉型の出血を生じ,確定診断は剖検によりCongo-red染色で動脈壁にアミロイドを証明することによりなされる.
病態生理
 高血圧性脳出血は,主幹動脈から鋭角的に分岐するため高血圧による圧力を受けやすい穿通枝が変性をきたして小動脈瘤が形成され,それが破綻することにより生じる.CAAは髄膜や脳表の動脈にアミロイドが沈着し,動脈壁が脆弱化して破綻することにより皮質や皮質下に出血を生じる.脳出血は血腫を形成して脳組織を破壊し,局所神経症状をもたらし,大出血では頭蓋内圧亢進により脳ヘルニアを生じて脳幹を圧迫し,しばしば致命的となる.また,視床・橋・小脳出血では出血が脳室に穿破し,水頭症を併発しやすい.最近は大出血が減少し,小出血の比率が増加している.
臨床症状
 高血圧性脳出血は日中活動時,血圧が上昇しやすい状況下で発症することが多く,頭蓋内圧上昇による頭痛,悪心,嘔吐を呈しやすく,血腫の増大により神経症状が徐々に進行し,意識障害が出現することが多いが,小出血の場合には典型的症状を示しにくく,臨床症状のみから脳梗塞と鑑別するのは困難である. 被殻出血では片麻痺,半身感覚障害,水平共同偏視がみられ,視床出血では片麻痺,半身の感覚障害・疼痛 (視床痛),下方共同偏視がみられる.橋出血では四肢麻痺,pinpoint pupil(著明な縮瞳),ocular bobbing(下向きの垂直性自発眼振,眼球浮き運動)を生じ,小脳出血では回転性めまい,嘔吐,後頭部痛,失立失歩,小脳失調を生じる.皮質・皮質下出血では種々の皮質症状や半球症状を呈する.大出血や脳幹出血では種々の程度の意識障害,異常呼吸(Cheyne-Stokes呼吸,中枢性過呼吸,群発呼吸,吸気性無呼吸など),脳ヘルニア徴候(鈎ヘルニアによる動眼神経麻痺など)を伴う.
検査成績
 脳出血はCT上,高吸収域として認められる(図15-5-17).高吸収域は,高血圧性脳出血では被殻,視床,橋,小脳にみられるが,CAAでは皮質・皮質下にみられ,しばしば多発する(図15-5-18).高血圧性脳出血患者やCAA患者では頭部MRIのT2*画像でそれぞれの好発部位を中心に無症候性の微小出血を認めることが多い.
診断
 緊急CTにより脳内に高吸収域を認めれば脳出血である.高血圧があり,CTで好発部位に高吸収域が認められれば高血圧性脳出血と診断される(図15-5-17).好発部位でない皮質・皮質下に出血がみられた場合,高齢者ではCAAを疑う必要がある(図15-5-18).若年者では出血傾向を検索するため血液凝固検査や薬物服用歴を調査し,血管の異常を検索するため脳血管撮影を施行する必要がある.
鑑別診断
 急性局所性脳症候群を生じた患者ではCTにより頭蓋内出血の有無を確認する必要がある.高吸収域の部位と性状により脳出血とくも膜下出血や硬膜下血腫との鑑別は可能である.脳梗塞は発症直後に低吸収域はみられないが,脳卒中症候群を呈し,緊急CTで高吸収域がなければ虚血性脳卒中と判断する.最近ではMRI拡散強調画像で発症直後でも虚血病巣が検出できるようになった.
合併症
 意識障害を伴う脳出血では感染症と消化管出血を合併しやすい.脳浮腫は予後を左右する危険な合併症である.脳室穿破を生じると水頭症を併発する.CAAはAlzheimer病を合併しやすい.
予後
 意識障害を伴わない小出血の生命予後は良好であり,機能予後は出血部位に依存する.昏睡や深昏睡などの高度の意識障害を伴う場合は致命的な脳ヘルニアを生じている可能性が高く,救命は困難である.感染症や消化管出血の管理も予後に重大な影響を及ぼす.
治療・予防・リハビリテーション
 緊急CTを施行したら呼吸・循環を確保する.血圧は180 mmHg以下または平均血圧の80%以下を目標に降圧を行う.重症の脳出血では頭蓋内圧亢進により脳ヘルニアを生じる危険性があるのでマンニトールの急速点滴静注を行う.意識障害患者では感染症と消化管出血を合併しやすいので抗菌薬と抗潰瘍薬を投与する.経口摂取が困難な場合には経管栄養や中心静脈栄養が必要となる.長期に及ぶ高度の嚥下障害には胃瘻造設術の適応がある.
 外科治療の適応は神経学的重症度とCT所見により決定され,開頭血腫除去術が行われてきたが,最近では定位的手術や内視鏡手術も行われる.被殻出血は血腫量が30 mL以上で,軽度の意識障害(軽眠または混迷)がある場合に手術適応が考慮される.小脳出血は血腫径が3 cm以上(血腫量15 mL以上)の場合に手術適応がある.皮質下出血は血腫量30 mL以上の場合に手術適応が考慮されるが,CAAでは手術により予後が悪化する危険性がある.視床出血と橋出血は血腫除去術の適応とはならないが,血腫が脳室に穿破して急性水頭症が生じた場合には脳室ドレナージを行う.
 片麻痺などの後遺症に対しては早期からリハビリテーションを開始する.意識障害がなく,神経症状が進行性でなければベッド上での起座,椅子座位を開始する.急性期には褥瘡,拘縮,筋力低下を予防するリハビリテーションケアが中心となる.離床が可能になったら起立,基本動作,筋力増強,歩行訓練を行う. 神経因性膀胱には頻尿治療薬が適応となる.夜間譫妄,うつ状態,不眠などの精神症状には向精神薬を投与する.視床出血による視床痛には抗うつ薬や抗痙攣薬を投与するが,薬物療法が無効な場合には脳深部刺激療法や定位放射線手術などの外科的治療を行う.痙攣には抗痙攣薬を投与する.脳出血の一次・二次予防には高血圧の管理が最も重要である.飲酒や低コレステロール血症は脳出血の危険因子になるので,禁酒や摂酒を励行し,低栄養状態の改善に努める.日本でも発症後4.5時間以内の虚血性脳卒中に血栓溶解薬である組織プラスミノーゲンアクチベーター(アルテプラーゼ)が承認されたが,適応基準を逸脱して使用すると重篤な脳出血を併発する危険性があるので注意が必要である.[内山真一郎]
■文献
Kase CS, et al: Intracerebral hemorrhage. In: Stroke: Pathophysiology, Diagnosis, and Management (Mohr JP, et al), pp327-376, Churchill Livingstone, New York,
2004.内山真一郎:脳血管障害.内科学(2分冊版Ⅱ) (黒川 清,松澤佑二編),第2版,pp1707-1715,文光堂,東京,2003.内山真一郎:脳出血.ダイナミックメディシン(下条文武,斉藤 康監修),第5巻,pp18-37-18-49, 西村書店,新潟,2003.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「脳出血」の意味・わかりやすい解説

脳出血
のうしゅっけつ

高血圧などの種々の原因によって脳血管が破綻(はたん)し、脳内に出血して生じた血腫(けっしゅ)のため、周囲の脳実質が圧迫、浸潤、破壊されることによって発症する疾患で、代表的な脳血管障害の一つ。脳実質を穿通(せんつう)する動脈の細い血管(径約0.2ミリ)に血管壊死(えし)という変化がおこり、血管壁の構造が崩れてもろくなり、やがて同部に脳内小動脈瘤(りゅう)(径0.2~0.5ミリ)を生じ、ついにこれが破綻することによって脳実質へ出血し、血腫を形成する。脳出血の好発部位としては、脳出血動脈ともよばれている線条体動脈外側枝が破れておこる被殻出血がもっとも多く、脳出血全体の50~60%を占める。この被殻出血に次いで多いのは、視床膝(しつ)状体動脈あるいは視床穿通動脈の破綻による視床出血で、25~35%に相当する。なお、この視床出血を内側型出血とよぶのに対して、被殻出血を外側型出血とよぶことがある。このほか、皮質下出血、橋(きょう)出血、小脳出血の順になる。

[荒木五郎]

症状

一見健康な人に突然発症し、発作は活動時におこることが多い。脳出血患者の大部分に既往症として高血圧があり、発作時は著しい高血圧を示すことが多く、高血圧性脳出血とよばれる。大部分の患者に意識障害がみられるが、これがなければ高率に頭痛を訴える。通常、半身不随となる。これらの神経症状は数分から数時間以内に進展、完了する。重症の場合は急に昏睡(こんすい)に陥ることがある。しかし、意識清明の軽症患者も10%くらいみられる。腰椎穿刺(ようついせんし)によって髄液を調べると、約85%は血性か黄色調であり、残りは水様で透明である。

[荒木五郎]

鑑別診断

脳出血と鑑別を要する疾患は、脳梗塞(こうそく)とくも膜下出血である。(1)脳梗塞との鑑別 脳出血は活動時に突然おこり、意識障害がくることが多く、頭痛も訴える。脳梗塞はしばしば前駆症状がみられ、発作は休息時におこることが多く、意識も清明か、意識障害があっても軽度である。症状が徐々に出そろってくるのが特徴で、頭痛もないか、あっても軽い。(2)くも膜下出血との鑑別 脳出血は脳内に出血するので、通常、半身不随になるが、くも膜下出血は脳実質の周囲に出血するので、普通は半身不随にならず、いままで経験したことのない、金棒で殴打されたような激しい頭痛と、首の後ろが固くなる項部(こうぶ)強直で始まり、意識障害もひどくなったり軽くなったり動揺性がある。

[荒木五郎]

検査

脳出血と脳梗塞との鑑別でもっとも確実な検査法は、頭部のコンピュータ断層撮影(CT)である。CTによると、脳出血は発作直後から画面では白く見える高吸収域を示し、出血の部位、大きさ、脳室への穿破の有無、脳浮腫(ふしゅ)の程度も明らかにすることができる。これに対して脳梗塞は低吸収域として黒っぽく造影される。ただし、この低吸収域が出現するまでに発症後、半日から1日を要する。

[荒木五郎]

予後

脳出血は、くも膜下出血と同様、死亡率が高い。半数近くが死亡するといわれ、とくに脳室に穿破する大出血や橋出血などは死亡率が高い。脳出血で死亡する直接原因は、脳ヘルニアによるものが多い。すなわち、大脳半球内で出血して高度な浮腫のため脳の容積が増大した場合、脳は髄液を通して硬い頭蓋(とうがい)骨に囲まれていて逃げ場所がなく、脊髄(せきずい)が頭蓋骨から出ていく大後頭孔のほうへ圧迫されることになる。これが脳ヘルニアであり、呼吸中枢に関係する橋や延髄が上方から下方に向かって圧迫され、死の転帰をとることになる。このほか、消化管出血や肺炎などの合併症で死亡することもあるので、合併症の発症には十分注意して看護する必要がある。

[荒木五郎]

治療

外科的療法、内科的療法、合併症に対する治療に大別される。(1)外科的療法 被殻出血(外側型出血)、皮質下出血、小脳出血に対しては脳内血腫除去術が行われるが、視床出血(内側型出血)、橋出血は除去術の対象とはならない。ただし、視床出血に対しては脳室ドレナージが行われ、症状の改善をみることがある。なお、除去術が適応とされる前述の脳出血の場合、意識障害が高度で内科的療法ではむずかしいと思われる患者が、外科的手術により救命しえたという例もしばしばある。(2)内科的療法 止血剤の投与をはじめ、収縮期血圧が200、拡張期血圧が110ミリ水銀柱以上ならば、再出血を予防する目的で緩徐な降圧剤を投与し、血圧を調節する。また脳浮腫に対しては、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤と高浸透圧性脳圧下降剤(マニトール、グリセロール)が使われる。副腎皮質ステロイド剤の効果については賛否両論があるが、消化管出血の引き金になることがあるといわれているので、胃潰瘍(かいよう)の既往のある人には使用しない。また、グリセロールは比較的副作用も少ないので発作直後から使われ、脳浮腫に対する効果も確証されているが、腎臓の悪い患者には禁忌とされている。

 さらに体液のバランスが崩れやすいので、その是正のために輸液が行われる。意識障害や嚥下(えんげ)困難のある患者には1500~2000ミリリットルの水分補給を点滴注射で行う。4、5日経過しても口から食事がとれないときは、鼻腔(びくう)ゾンデから流動食(2000キロカロリー)を流し込む。(3)合併症に対する治療 消化管出血として発病1、2週後に胃・十二指腸潰瘍から出血することがあり、吐血あるいは下血をきたす。最近、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤シメチジンが効果があるとされている。出血が多量で貧血が著しいときは、外科手術に踏み切らなければならないこともある。また、発熱があるときは早く胸部X線撮影を行い、肺炎に対しては広域スペクトルの抗生物質を使用する。なお、床ずれに対しては、2時間ごとに体位を変換したり、エアマットを使うなどによって予防する。

[荒木五郎]

後遺症に対するリハビリテーション

脳出血の後遺症には、病巣の部位と広がりに関連して出現する第一次障害と、発症後の経過中にみられる第二次障害とがあるが、いずれにしてもそのリハビリテーションの目標は、日常生活動作activities of daily living(ADL)の自立である。これが社会復帰につながるわけで、とくに片麻痺に対する効果はその実績からも高く評価されている。

 発症後、意識が覚醒(かくせい)して痛みがわかるようになったら、寝たままの姿勢で健側と患側の四肢の関節を自動的あるいは他動的に動かすことから始める。痛がらない範囲内で行う。重症度にもよるが、発症三週後には床上で起きる練習を始め、1か月後からは歩行練習に入る。これらはリハビリテーションチームによるプログラミングに従って行われる。

[荒木五郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脳出血」の意味・わかりやすい解説

脳出血
のうしゅっけつ
cerebral hemorrhage

以前は脳溢血ともいった。脳卒中のなかでも主要なもので,脳内出血と脳室内出血に分けられる。内包付近に発生することが多い。多くの場合,激しい頭痛,嘔吐,けいれんなどで突然発病し,急速に進行して意識障害に陥る。重症の場合は昏睡のまま死亡する。軽症の場合は意識障害や出血による自覚症状のないこともある。一般には徐々に回復し,麻痺は一定領域に限局し,反対側は反射が亢進し,場合によっては感覚障害,失語症,半盲などを残す。一般に昏睡が長く深く,高熱,白血球増加の著しいものは予後が悪い。最近では発作後の代償的な機能回復を重視するようになり,安静期間を短縮して後療法に移る傾向にある。動脈硬化,高脂血,本態性高血圧などが誘因になるとされている。

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百科事典マイペディア 「脳出血」の意味・わかりやすい解説

脳出血【のうしゅっけつ】

脳溢血

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世界大百科事典(旧版)内の脳出血の言及

【膝蓋腱反射】より

…脊髄癆(ろう),脊髄前角炎,多発性神経炎,脚気等で反射弓のどこかが障害されると,この反射は減弱・消失するため,これら疾患の検査に利用される。一方,脳出血や反射中枢より上位の脊髄疾患等で上位中枢からの抑制性の影響が弱まると,この反射は亢進する。反射【大野 忠雄】。…

【脳卒中】より

…また,中風(ちゆうふう∥ちゆうぶう)または中気という言葉が脳卒中と同義に用いられることもあるが,一般には,卒中発作後,後遺症として半身不随(片麻痺)などの運動麻痺を残した状態をいうことが多い。
[原因疾患]
 (1)脳出血(脳溢血(のういつけつ)),(2)脳梗塞(のうこうそく),(3)くも膜下出血,(4)高血圧性脳症などがある。脳出血は脳における急激な出血をいい,脳梗塞は脳動脈の狭窄や閉塞のために,その動脈に栄養される領域の脳組織が壊死におちいったものである。…

【脳内出血】より

…脳内における出血をいい,一般に脳出血とか脳溢血(のういつけつ)といわれるものがこれにあたる。最も多いものは高血圧性脳内出血である。…

【片麻痺】より

…したがって,大脳および顔面神経核の存在する橋(きよう)より上位の脳幹で錐体路が障害されると,顔面を含む反対側の半身麻痺を生じ,それ以下で頸髄より上の病変では,顔面を含まない反対側上下肢および体幹の半身麻痺を生ずることになる。 最も多いものは,脳出血や脳梗塞のために生じた大脳半球の内包の障害による反対側の半身麻痺である。内包には錐体路の繊維が集中しており,また出血や梗塞の好発部位であるためである。…

※「脳出血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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