言語機能(読み)げんごきのう(英語表記)language function

最新 心理学事典「言語機能」の解説

げんごきのう
言語機能
language function

言語はコミュニケーションの手段であるとともに思考の手段である。言語は人びととの関係を作るために重要な働きをするが,それと同時にわれわれの認識や情動にかかわり,イメージを形成し,認識を深めることに欠くことのできない手段となる。また,意志の形成にかかわり,人の行動を支配する。

 身振りgestureは,最初「語」としての機能をもっているわけではない。驚きや感情の表出として出現する。身振りは生後半年ころから環境(生体内の欲求や外界の事象)とのかかわりで発生する。外界の変化に対応して環境定位の指さしが起こる。乳児の身振りを身近なおとなが意味づけ,応じる経験を繰り返すうちに,身振りの出現文脈に応じて,表示機能indication function,注意喚起機能attention awakening function,伝達機能communicative functionを獲得し,身振り語gesture languageが成立する。乳児期の終わりころの意志伝達には,「指さし」や「だっこせがみ」「あいさつ」などの身振り語が使われ,しだいにこれにむずかり声や「ママ」というような催促を意味する有意味語が伴うようになる。2歳代では身振りとことばが渾然一体で出現するが,3歳ころからことばだけで意志を伝達し,環境の叙述や説明ができるようになる。

 指さしpointingは最初から何かを指し示す行動から始まる。指さしは視点の変化,世の中のとらえ方が変化したことを意味している。乳児がよく行なう要求を実現するための実用的な指さしは,視点の変化の副産物なのである。やまだようこ(1987)は,指さし行動は次の二つの段階を経て成立すると指摘している。第1段階は,環境の変化や,珍しいものを発見したときに驚嘆・定位・再認の表出として,その対象に向けられた指さしが出現する。第2段階は,人とのやりとりを楽しむような指さしや,自分ができないことを他人にやってもらおうとする要求伝達の指さしが出現する。このように,発達の最初期から身振りには世界認識にかかわる働きの側面と,伝達の側面の各々の基礎が備わっている。身近なおとなとの社会的なやりとりを通じて,感情や欲求の表出であったものが伝達機能を獲得するようになる。そして,そのやりとりを通じて認識が深まるとともに,考えるためのことばも整うというように,人とのやりとりを媒介にして,これら二つの側面は相互に関連し合っていく。

【伝達機能】 ことばの伝達機能は,以下の七つに分類される(内田伸子,2008)。①道具的機能:「私は○○を欲する」機能。言語は言語使用者が自分の欲しているものや自分の望んでいる他者の援助を受けられるようにする。②支配的機能:「○○して」とか「○○してはだめ」などの発話に見られるように他人の行動を調整し,支配する機能。③相互作用的機能:「我と汝」の関係を表現する機能。挨拶や相手を認めていることを伝える発話。④個人的機能:自己認知,自己表現にかかわる表現,たとえば個人の興味,喜び,嫌悪などに関する表現。「ここにわたしがいる」機能。⑤発見的機能:「わたしに教えて」の機能。世界についての情報を手に入れる表現。⑥想像的機能:歌,物語,神話,科学など,現実の世界である「今,ここ」を超えるための表現。⑦告知的機能:他者がもっていない情報を伝達したり,他者からの発見的質問に答えたりして情報を伝達する機能。①②③④は生後10ヵ月ころまでに出現し,残りの機能も3歳ころまでに出現する。

【行動調整機能behavior-regulation-function】 ことばには課題の性質をはっきりさせたり,多様な刺激の中から課題を解くのに必要な情報を浮き立たせる働きがある。また,ことばは動作を発動させる機能をもつが,自己の行為を意識化して制御・統制する行動調整機能もある。3~5歳後半ころにかけてしだいに意味が優勢になり始めると,ことばは内言機能function of inner speechをもつようになり,思考活動と深いかかわりをもつようになる。子ども自身のことばが頭の中で行動を統制できるようになることと,自分で自らの意志と行動を決定するという自律性autonomyの確立には密接な関連がある。こうして,ことばは思考や認知などの知的機能を支えるだけでなく,自我egoや意志willの中核的な担い手として人格形成にもあずかるようになるのである。 →言語発達 →初期言語
〔内田 伸子〕

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