内科学 第10版 「脾機能亢進症」の解説
脾機能亢進症(後天性溶血性貧血)
概念
脾臓は傷ついた血球,病的血球,寿命が尽きた血球などを取り込んで処理する免疫臓器の1つである.脾腫は病的機能亢進を伴って血球減少症を招くことがあり,脾摘はこれを改善する.しかし,脾腫が必ず機能亢進または血球減少症を起こすとは限らない.
病態
過度の機能亢進を伴う脾腫は門脈圧亢進症(特発性門脈圧亢進症,肝硬変,Budd-Chiari症候群,心不全),蓄積症(Gaucher病,Nieman-Pick病,糖原病,アミロイドーシス),腫瘍(白血病,リンパ腫)などにみられ,軽度亢進例は感染症や膠原病でもみられる.脾腫による末梢血球減少には血球破壊や脾内血球貯蔵が影響する.
臨床症状・診断
脾腫による圧迫症状(腹部不快感,腹満感,左季肋部痛)や血球減少症(感染や出血や貧血による症状)が現れるが病初期の自覚症状は乏しい.脾腫の程度は診察に加えて超音波検査やCT検査などの画像診断で評価できる.骨髄は反応性造血亢進を示し,末梢血に網赤血球増加を認めることがある.
治療・予後
脾腫を起こす基礎疾患があれば優先して治療する.その上で脾腫による強い腹部圧迫症状や脾機能亢進による高度の血球減少症を認める場合は脾摘を考慮する.通常,感染症や貧血よりも血小板減少の方が治療上の問題になる.[中熊秀喜]
■文献
Goodman J, Newman MI, et al: Disorders of the spleen. In: Wintrobe’s Clinical Hematology, 11th ed, vol Ⅱ (Greer JP, Foerster J, et al eds), pp1893-1909, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2004.
谷 憲三朗:脾機能亢進症. 三輪血液病学,第3版(浅野茂隆,池田康夫,他監修),pp1238-1239,文光堂,東京,2006.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報