膀胱尿管逆流(読み)ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう(その他表記)Vesicoureteral Reflux

家庭医学館 「膀胱尿管逆流」の解説

ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう【膀胱尿管逆流 Vesicoureteral Reflux】

[どんな病気か]
 腎臓(じんぞう)でつくられた尿は、正常ならば尿管膀胱への一方通行で流れていきます。これは、膀胱と尿管との間に逆流防止機構があるためです。しかし、この機構に障害がおこると、尿が膀胱から尿管、腎臓へと逆流することがあり、これを膀胱尿管逆流といいます。
 膀胱の内圧がもっとも高くなる排尿時に逆流がおこりやすいのですが、障害がひどくなると、尿がたまった状態だけで逆流がおこることがあります。
 逆流によって内部の圧力が高まるため、尿管が広がった水尿管(すいにょうかん)、腎盂(じんう)が広がった水腎症(すいじんしょう)(「水腎症」)になります。
 また、膀胱炎(「膀胱炎」)があると、尿の逆流とともに細菌も腎盂に入り、腎盂腎炎(じんうじんえん)(「腎盂腎炎(腎盂炎)」)の原因になります。
 膀胱尿管逆流は女性に多くみられる病気です。子どもは逆流防止機構が未熟なため、逆流をおこしやすいのですが、成長とともにみられなくなるのがふつうです。
 そのほか神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)(「神経因性膀胱」)や尿道狭窄(にょうどうきょうさく)(「尿道狭窄」)など、下部尿路の障害で膀胱内の圧力が異常に高くなると、逆流がおこることがあります。
[症状]
 逆流だけでは症状が出ないことが多く、膀胱炎から腎盂腎炎へと感染が広がると症状が出ます。排尿痛(はいにょうつう)、残尿感(ざんにょうかん)、尿混濁(にょうこんだく)などの膀胱炎症状とともに、発熱、わき腹の痛みなど、腎盂腎炎の症状が現われてくるのです。
 しかし、膀胱炎症状がない場合もあり、炎症が慢性化していると症状が現われないことが多くなります。
[検査と診断]
 膀胱に造影剤を入れて、その造影剤が尿管・腎盂へ逆流することをX線検査で確認します。逆流は排尿時におこりやすいので、排尿時にもX線撮影をします。
 腎盂腎炎をくり返す女性は、とくに膀胱尿管逆流が疑われるので、静脈性腎盂造影などで他の原因が見つからない場合は、この検査を受けましょう。
 ただし、膀胱炎などの炎症があるときにかぎって逆流がおこる場合もありますので、膀胱造影をすればかならず診断できるとはかぎりません。
[治療]
 子どもでは、逆流が自然に消えることもあるので、症状が軽い場合はようすをみます。腎盂腎炎をくり返したり、炎症が慢性化して治りにくいとき、水腎症があるときは、逆流防止の手術を行ないます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「膀胱尿管逆流」の意味・わかりやすい解説

膀胱尿管逆流
ぼうこうにょうかんぎゃくりゅう

主として排尿時に膀胱内の尿が尿管や腎盂(じんう)に逆流することをいい、このため腎盂、尿管の拡張や腎盂腎炎を高率に合併する。正常な場合、膀胱と尿管の接合部は一種の弁状構造になっており、膀胱にたまった尿が尿管に逆流することはないが、この構造が未発達であったり、なんらかの原因で障害されると、膀胱尿管逆流をおこす。先天性と後天性に分けられ、先天性のものには尿管膀胱接合部が未発達なためにおこる原発性逆流をはじめ、重複尿管や尿管瘤(りゅう)などの尿管の形態異常に伴うものなどがあり、いずれも幼小児(とくに女児)に多い。また後天性のものでは、神経因性膀胱や萎縮(いしゅく)膀胱、下部尿路通過障害などに伴うものがある。

 通常、腎盂腎炎を契機として発見され、排尿時膀胱尿道撮影によって診断される。小児の場合は腎盂腎炎に対する長期間の化学療法と、頻回に一定時間ごとの二段排尿を指導して尿が膀胱にあまりたまらないようにするなどで自然に消失するものも多いが、重症例では逆流防止手術が必要となる。

[河田幸道]

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