航空機、バルーン、カイト(凧(たこ))などを用いて上空から地上を撮影した写真。おもに航空機を用いて撮影する写真であるために、この名称がついている。航空機には飛行機、ヘリコプター、産業用のラジコンヘリコプターなどが含まれる。空中写真ともいう。古くは1850年代にフランスの写真家ナダールが、無人バルーンにカメラを搭載し、遠隔撮影したことが記録に伝えられている。
[力丸 厚]
航空写真は航空写真測量(空中写真測量)に用いる計測用のものと、広告写真や報道写真などに用いられる一般の航空写真に大別される。撮影される写真は、地上に対してカメラを鉛直方向に向けて撮影する垂直写真と、斜め方向に向けて撮影する斜め写真に大別される。垂直写真は主として航空写真測量による計測用に用いられる。
航空写真測量は複数の航空写真を標定してステレオ観測することで、地表物の位置や高さを計測し、地形図を作成する測量技術である。航空写真測量用の写真は、航空機により直線の撮影コース上を隣接写真と60%以上の重複範囲を有しながら、連続的に垂直撮影を実施して作成される。撮影に用いられるフィルムは、航空写真測量用には黒白フィルムが多く用いられている。土地利用等の調査目的では通常はカラーフィルムが用いられ、緑地などの植生調査には赤外線を赤く発色させる赤外カラーフィルムが多く用いられている。類似したものに人工衛星から撮影された衛星写真がある。
[力丸 厚]
産業用航空写真撮影に用いられているカメラは、9.5インチ(約23センチメートル)幅のロールフィルムを用いた大型カメラが主流である。撮影には、人工衛星により現在のカメラ位置を計測するGPS(Global Positioning System=全地球測位システム)を搭載しており、あらかじめ撮影したい地点の緯度・経度を地上で設定しておくことにより、航空機などが撮影の目標地点の真上に到達した時点で自動的にシャッターが切れるしくみになっている。また、GPSとINS(inertial navigation system=慣性航法装置)を組み合わせて、航空写真を撮影した正確な位置と方向を計測し、航空写真測量を行う際の標定情報を提供するシステムが普及しつつある。航空カメラでは、航空用デジタルカメラの登場により、撮影してから短時間で地形図が作成できる新しいシステムが開発されつつある。
[力丸 厚]
航空写真測量技術により地形図を作成することは従来から行われてきているが、デジタル画像処理技術の発展により正射影とよばれる地図と正確に重なり合う航空写真画像を高速に作成することが可能になった。このため従来の地図ばかりでなく航空写真そのものを地図同様に用いる正射写真地図(オルソフォトマップorthophotomap)の普及が進みつつある。一般の生活情報としてより身近なところに航空写真を加工した地図が登場しつつある。正射写真地図からは、従来の地図に比べて樹木の分布や家屋の密集状況など、より現実の地域の状態に近い情報を読み取ることが可能である。
[力丸 厚]
『大嶋太市著『測量学――応用編』(1997・共立出版)』▽『石井一郎編著、上浦正樹他著『最新測量学』(1999・森北出版)』▽『日本地図センター編・刊『空中写真の知識』(2000)』
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…空中の1点から地表あるいはその他の物体を撮影した写真。撮影に航空機を用いたものは航空写真と呼ばれることも多い。上方からの撮影でも,山頂などの,地上から写したものは地上写真と呼ばれる。…
※「航空写真」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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