対象物を撮影した写真を用いて,位置の測定や内容の判読を行う技術で,空中写真測量と地上写真測量に分けられる。人間は両眼で物を見ることによって三次元を認識できるが,写真測量でも同じ対象を2ヵ所から撮影し,その写真上での像の位置の違いを精密に測定することによって三次元計測を行う。
空中写真測量は,この技術をおもに地図作成に利用するものである。まず飛行機から地表の垂直写真を,60%ずつ重複させながら連続して撮影する。これらの写真のうち,隣り合せの2枚の写真(実体写真)を,図化機と呼ばれる装置にかけ,撮影時のカメラの位置と傾きを相似的に再現する(標定)と,地図座標と2枚の写真像の各点を対応づけることができる。現在日本では,縮尺500分の1から2万5000分の1程度の地図までが写真測量によって作成されており,これより縮尺の小さな地図は縮小編集整図によって,これより縮尺の大きな地図は平板測量によって,それぞれ作成されている。空中写真測量は平板測量に比べて野外作業が少ないため,短い日数で地図が作成できること,調査に入りにくい山間部でも一様な精度で地図が作られることなどの利点があるが,写真に写りにくい登山道や建物の陰,森林部での標高測定等に弱点がある。空中写真は地表のようすを忠実に表現しているため,写真から内容を読み取る技術(写真判読)により,森林調査,環境調査,災害調査,各種の計画等にも広く利用されている。
地上写真測量は,地上で撮影した1組の実体写真を用いて調査・測量を行うもので,ダム地点の測量,交通事故現場の測量,建造物や彫像などの精密計測,波や雲などの速度の測定等に用いられている。
近年,コンピューター技術の発達にともない,写真測量の関連分野でも数値処理が導入されてきた。第1に,(1)写真測量で得られた三次元の座標値などを数値的に記録した数値地図の作成,(2)地理・地質・社会・経済情報など,各種の情報を地図座標をベースに一括管理し,検索・解析を通して種々の情報サービスや計画に用いる地図データベースへの応用,(3)数値記録された地図情報をいろいろな形式で自在に出力する方式などが発達してきている。第2に,コンピューターを利用して写真判読を自動的に行ったり,判読しやすい写真を作る画像処理技術も発達してきた。第3に,実体写真の写真像の対応を計算で求め,三次元計測を自動的に行おうとする,自動図化の技術が研究されている。空中写真の像を微小単位ごとに地図座標に合わせて焼き付けなおし,等高線や注記などを加えて地図としたものを写真図というが,この写真図を作る装置では,自動的に標高を計測する装置が数種類実用化されている。
→空中写真 →リモートセンシング
執筆者:平井 雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
写真を利用して種々の測定をしたり、地図をつくったり、映像の性質を分析判定したりする技術。用いられる写真の種類により空中写真測量、地上写真測量、近接写真測量、顕微鏡写真測量などに分けられ、また映像の内容を判定する写真判読と写真測定とにも分けられる。写真測量に使われる写真は、すこし隔たる2個の撮影点から同一目標を撮影し、それを左右の目で同時に別々に観察して奥行のある三次元的な像を得る実体写真測量が多く、この写真を実体写真または立体写真(ステレオペアstereo pair)といい、その精密な測定や地図作成のための装置を実体図化機という。
[尾崎幸男 2016年11月18日]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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[利用分野]
空中写真は,地表および地表に展開する多くの事象に関する情報源として,広い利用分野をもつ。空中写真の利用を研究する分野は写真測量photogrammetry(広義)とよばれ,大別すると測量を主とする分野photogrammetry(狭義)と判読を主とする分野photointerpretationに分かれる。地形や地物(地表に分布する物)の位置,形を写真のもつ幾何学的性質を利用して明らかにしてゆくのが写真測量であり,地形や地物の性質,機能などを写真上の映像から実体視などにより判定してゆくのが写真判読であるといってもよいであろう。…
…写真による図版で,初めて価値のある科学的な資料として供用することができたのである。 科学写真を機能面の特性から分類すれば,(1)目視レベルの事物記録,(2)写真測量,(3)光学像の記録,(4)時間像の記録,(5)不可視線の記録とすることができる。これは方法の分類でもあるから,研究目的によって各項は複合するのがふつうである。…
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[利用分野]
空中写真は,地表および地表に展開する多くの事象に関する情報源として,広い利用分野をもつ。空中写真の利用を研究する分野は写真測量photogrammetry(広義)とよばれ,大別すると測量を主とする分野photogrammetry(狭義)と判読を主とする分野photointerpretationに分かれる。地形や地物(地表に分布する物)の位置,形を写真のもつ幾何学的性質を利用して明らかにしてゆくのが写真測量であり,地形や地物の性質,機能などを写真上の映像から実体視などにより判定してゆくのが写真判読であるといってもよいであろう。…
※「写真測量」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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