東西約8キロ、南北約12キロのカルデラ火山。気象庁が火山活動を24時間体制で監視する「常時観測火山」の一つ。活発に噴気を出す大涌谷や、主峰の神山(1438メートル)、駒ケ岳などを総称して箱根山と呼ぶ。2015年6月にごく小規模な水蒸気噴火が発生した際は、噴火警戒レベルが3の「入山規制」に一時引き上げられた。19年にも火山活動が活発化したが、現在はレベル1の「活火山であることに留意」となっている。温泉地としても有名。
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神奈川県の南西にそびえ、富士火山帯に属する典型的な複式火山。富士箱根伊豆国立公園の一中心をなす。数期の火山活動から誕生し、外側には古期外輪山の
奈良時代以前から相模国足柄路
、開
筥荷途
」とあり、富士山噴火による降灰で足柄路が埋まったため箱根山中に官道が開かれた(翌年の復旧で再び足柄路に復する)。中世には湯坂路が通り、建仁二年(一二〇二)没の寂蓮は「箱根山と云山をなむこえける、所のあり様はあやしく、よの常にはかはりけり、はるかに峯に上はて、海をわたり谷をくたりて雲をふむ、さるほとに風は木葉をまくりあけて、しくれの麓よりのほりけれ」(寂蓮法師集)と山の様子を記し、源実朝は
とその眺望を詠んでいる。箱根山は歌枕でもあり、詠歌も多い。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
伊豆半島の付け根,神奈川・静岡両県境にまたがる複式火山で,三重式火山とされている。最高峰は神山(1438m)。火山基底長径は30km,体積は96km3(日本の火山中第7位)の大きさをもち,新旧二重のカルデラと神山,駒ヶ岳などの7個の中央火口丘群よりなり,中央火口丘群とカルデラ西壁との間に芦ノ湖を抱く。古期カルデラの外輪山は明星ヶ岳(924m),明神ヶ岳(1169m),金時山(1213m),三国山(1102m),大観山(1012m),白銀(しろがね)山(993m)を連ねた標高900~1200m,長径12km,短径10kmのほぼ三角形状の尾根よりなる。新期カルデラの外輪山は,その西縁を古期カルデラと共有する長径12km,短径6kmの環状尾根よりなり,東縁は浅間(せんげん)山(802m),鷹巣(たかのす)山(834m),屛風山(948m)を連ねた標高800~900mの平頂尾根で境される。
火山成長史は3期に分けられる。第1期(40万~20万年前)は大型成層火山の時代で,火山体形成後,軽石流噴出に伴って古期カルデラが形成された。第2期(20万~5万年前)では古期カルデラ内に楯状火山が約8万年前に形成され,やがてその中央部で大噴火があり,軽石流噴出後新期カルデラが約5万年前に出現した。第3期(4万年前~現在)では新期カルデラ内に7個の中央火口丘が出現した。約3000年前,神山北西部で水蒸気爆発が発生し,崩壊した山体は土石流となってカルデラ平原に流下し,芦ノ湖を形成した。第1~2期の岩石は玄武岩,安山岩,デイサイトで,第3期の岩石は粘性の高い安山岩である。
カルデラに降る雨は火口瀬である早川,須雲川により流出し,相模湾に注ぐ。箱根用水の深良(ふから)トンネルが開削されてから,芦ノ湖の水は早川を経ずに静岡県裾野市の灌漑用水としてカルデラ外に流出している。中央火口丘内では大涌谷(おおわくだに),早雲山,湯ノ花沢で硫気活動が活発であり,またしばしば火山性地震が発生し,活火山であることを示しているが,歴史時代の噴火の記録はない。火山の基盤は中新世の湯ヶ島層群,鮮新世の早川凝灰角レキ岩層よりなり,早川,須雲川の谷に沿って露出する。箱根地区は1938年富士箱根伊豆国立公園に指定された。
箱根には約400本の源泉があり,現在19を数える箱根の温泉場は箱根温泉郷と総称される。カルデラ東部は温泉に恵まれ,平均54℃,1日当り3万3000m3湧出している。療養泉の分類によると17種の泉質が識別されているが,次の4種に大別することができ,その分布に規則性がある。(1)酸性硫酸塩泉 大涌谷・早雲山硫気地帯の浅層にある40~100℃の温泉。芦ノ湯温泉,姥子(うばこ)温泉,湯ノ花沢温泉などがここに含まれる。(2)硫酸塩・重炭酸塩泉 カルデラ西部の深さ300~700mのボーリング孔から揚湯される50~70℃の温泉でカルデラの深層地下水である。1960年代以降の掘削技術の進歩によって見いだされた。湖尻(こじり)温泉のうち深いものと,芦ノ湖温泉がここに含まれる。(3)食塩泉 神山噴気地帯の地下300m付近から3本の層状泉となってカルデラ東部に流れる100~250℃の火山性高温泉。底倉温泉がここに含まれ,強羅(ごうら)温泉,小涌谷(こわきだに)温泉,宮ノ下温泉のうち90℃以上の高温泉は(3)に含まれるが,低温泉は次の(4)に含まれる。(4)混合型(硫酸塩・重炭酸塩・塩化物泉) カルデラ東側の早川,須雲川に沿って湧出する大部分の温泉は火山性の食塩泉と深層地下水型温泉の混合によって生まれた温泉である。泉温は40~100℃,主として基盤岩類中の割れ目から湧出する。塔ノ沢温泉,箱根湯本温泉,木賀温泉がここに含まれる。
江戸時代,箱根七湯(ななゆ)を中心ににぎわいをみせた箱根は,東京,横浜に近い景勝地であったため,明治以降多数の外国人が訪れるようになり,道路,鉄道などの交通網の整備に伴って国際的観光地として発展を始めた。1878年宮ノ下に外国人専用のホテルが建てられたのを契機に,87-88年には湯本~宮ノ下間の人力車道,国府津(こうづ)~小田原~湯本間の小田原馬車鉄道が開かれ,1900年には馬車鉄道が小田原電気鉄道の路面電車となった。大正年間には1919年湯本~強羅を結ぶ箱根登山鉄道が開通し,強羅温泉の開発が本格的に始まった。カルデラ北西部の仙石原では明治10年代以来,牧場が経営されていたが,大正年間から昭和初期にかけて観光開発が著しく進み,ゴルフ場や分譲地に変わった。1920年国鉄熱海線国府津~小田原間,21年強羅~早雲山間の登山ケーブルが開通し,温泉場は14湯となった。
昭和に入って,1927年新宿~小田原間の小田急線が開通,32年丹那トンネルの開通により国府津~小田原~沼津が東海道本線になった。このころ箱根で第1次の温泉掘削ラッシュがおきた。それまで自噴泉のみであったのが,強力ポンプを用いて温泉の自噴しない山腹にも温泉井が開発され始める。第2次大戦中,箱根は傷病兵の治療地,学童疎開地となった。戦後,芦ノ湖に遊覧船が就航(1950)するなど観光の大衆化が著しく進み,温泉資源の第2次開発が始まった。特に東京オリンピック(1964)の前後に近代的な自動車道路が次々に完成した。63年箱根新道,芦ノ湖スカイライン,64年乙女トンネル有料道路(84年無料開放),67年箱根ターンパイクが完成し,69年には東名高速道路が開通して乙女道路と結ばれた。これに伴って箱根の温泉場は19湯となり,宿泊施設の大型化,近代化が進められ,大涌谷自然科学館(2003年閉館),仙石原湿生花園,彫刻の森美術館,樹木園,畑宿寄木会館などの博物館,美術館,植物園などの文化的施設が多数建設された。
→箱根[町]
執筆者:大木 靖衛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
神奈川県南西部、伊豆半島基部にある複式火山。
[編集部]
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
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