東海道の箱根山芦(あし)ノ湖(こ)畔に設けられた関所(神奈川県足柄下(あしがらしも)郡箱根町)。その始源は古く、鎌倉時代の承久(じょうきゅう)の乱(1221)には、足柄(あしがら)・箱根両道の関で京方の軍勢を迎撃すべしとの議あり、南北朝時代には、箱根芦川宿のへんに関所を設けて鎌倉円覚(えんがく)寺の修理料にあてている。これは元箱根の箱根権現(ごんげん)横大門鳥居のへんにあった関所とみられ、江戸幕府は、1618年(元和4)新設の箱根宿に隣接して翌年前述の関所を移転、以後1869年(明治2)まで常置された。箱根関所は幕府の「重キ関所」の筆頭であり、小田原藩がこれを預り警衛した。そこでは「入鉄炮(いりでっぽう)」よりも「出女(でおんな)」の検閲に重点が置かれた。関所役人は、小田原城下から20日間交代で勤番する番頭(ばんがしら)、横目(よこめ)、番士、足軽(あしがる)、中間(ちゅうげん)(計20人程度)と、箱根常住の定番人(三人)、人見(ひとみ)女からなる。冠木(かぶき)門を入った関所内には、芦ノ湖側に高札(こうさつ)場・面(めん)番所が並び、反対側には足軽番所と獄屋、その裏手の屏風(びょうぶ)山には遠見(とおみ)番所があった。門外の箱根宿の本陣では、亭主の女房が人見女にかわり大名の奥方などの身体検査をした。現在、国史跡に指定、公開されている。
[丸山雍成]
『石内為次郎著『箱根八里』(1913・箱根町石内旅館)』▽『箱根関所研究会編『東海道箱根宿関所史料集』全3冊(1972~75・吉川弘文館)』▽『立木望隆著『箱根の関所』第5版(1978・箱根町箱根関所管理事務所)』▽『加藤利之著『箱根関所物語』(1985・神奈川新聞社)』▽『岩波書店編集部編・刊『箱根』復刻版(1990)』
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江戸時代に東海道に設けられた関所(現,神奈川県足柄下郡箱根町)。広義には箱根宿東側の箱根関所と仙石原,根府川,川村,矢倉沢,谷ヶ(やが)の各脇関所を含める。狭義の箱根関は開設年代は不明だが,1600年(慶長5)にはすでに存在した。箱根宿東隣の現在の関所跡に設けられたのは19年(元和5)である。初期の規模は不明。85年(貞享2)番頭・横目など侍4,定番人3,足軽11,中間2,武具として弓5,鉄砲10など,役人はすべて小田原藩士で,定番人の居付き手当は幕府支給であった。関所修理の経費は幕府負担で,人足は駿河国駿東郡の小田原領民から出した。関所通行は厳重で周辺の山は要害山として立入禁止,関所を通らない山抜けは発見しだい極刑に処せられた。1702年(元禄15)のお玉の処刑が有名である。1869年(明治2)1月明治政府によって廃止となった。関所跡は国の特別史跡に指定,足軽番所が復元されており,近くの箱根町立箱根関所資料館に関係資料がある。
執筆者:内田 哲夫
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江戸時代,幕府が東海道に設置した最も重要な関所の一つ。現在の神奈川県箱根町にあった。中世までの箱根越は足柄(あしがら)峠を迂回するのが一般的で,関所もその通路に設置されていた。江戸幕府は1618年(元和4)箱根路を整備して箱根宿をおき,これを東海道の正式の通路とし,翌年改めて同地に恒常的な関所を設けた。小田原藩が所管し,番頭以下20人前後の関所役人がいた。おもに東海道を通る「入鉄砲に出女」を検閲したが,幕藩制社会が安定し,今切関(いまぎれのせき)で鉄砲検閲が行われたため,中期以降は武器の検閲が形骸化した。しかし江戸時代を通じて,旅行者にとっては最もきびしい関所という認識が一般化していた。脇関に根府川・矢倉沢・仙石原・川村などの各関所がある。
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… 近世の関所の機能を端的に表現するものとして,〈入鉄砲に出女〉の言葉がある。それは関東内への諸大名等の鉄砲以下の武器潜入,江戸藩邸の大名妻子の国許への逃亡を監視することが主任務であったが,幕府の全国支配が貫徹するころには箱根関のように前者の検閲が若干緩和される例もみられた。関所通過の際,一般に通行者は笠・頭巾をとり,乗物の大名は引戸を開くことが必要であり,鉄砲には老中発行の鉄砲手形,出女には留守居(るすい)発行の女手形の携帯が義務づけられていた。…
※「箱根関」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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