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神奈川、静岡、東京、山梨の1都3県にわたり、富士山、箱根、伊豆半島、伊豆七島、富士五湖の地区からなる国立公園。陸域面積1216.95平方キロメートル。1936年(昭和11)富士山、箱根地区が指定され、1955年(昭和30)伊豆半島地区、1964年伊豆七島地区、1975年富士五湖地区がそれぞれ追加された。火山、温泉、海岸、湖沼、森林など豊富な観光資源をもち、首都圏に近いこともあって開発の進度は高く、自然保護と環境保全の課題も多い。
富士山地区は、円錐(えんすい)形の成層火山である富士山の自然景観を中心に、その火山活動は宝永(ほうえい)山の噴火口、北西麓(ろく)の青木ヶ原樹海、火山灰地、植相の変化などにみられる。富士五湖、白糸ノ滝、猪之頭湧水(いのかしらゆうすい)、湧玉池(わくたまのいけ)(特別天然記念物)など水に関する景観に優れる。北斜面の吉田大沢、西斜面の大沢崩れなどは山体の解体を進めるが、砂防工事が施工されている。西麓の朝霧高原は代表的酪農地域であり、富士宮市の浅間(せんげん)大社は富士登山の出発点であった。箱根地区は典型的なカルデラで、乙女峠から箱根峠に続く外輪山、駒(こま)ヶ岳、神山(かみやま)などの中央火口丘、仙石原の火口原、火口原湖の芦(あし)ノ湖など火山地形が多様である。大涌谷(おおわくだに)の硫気孔は火山活動を表し温泉が多い。箱根関所跡や杉並木、石畳など歴史景観にも恵まれる。
伊豆半島地区は、十国峠から稜線(りょうせん)に沿って南に延び、万二郎(ばんじろう)岳、天城(あまぎ)峠から達磨(だるま)山へと続く狩野(かの)川流域をめぐる山稜と、海岸線に沿う一帯が指定地域になっている。尾根筋は天城山地を中心に森林美に恵まれる。草原状の緩斜面も広く、展望に優れ、伊豆スカイライン、西伊豆スカイラインなどのルート観光もある。海岸も雄大な海食崖(がい)、海食洞、砂礫(されき)州、砂浜など多様な景観をもち、温暖な気候による植相にも特色がある。下田(しもだ)を中心に歴史的郷土景観に恵まれる。伊豆七島地区は大島から八丈島に至る諸島で、火山地形や火山活動に特色をもち、それに伴う林相、生物相の特殊性が表れ、自然観察の場を提供する。1994年(平成6)三宅島に海中公園(現、海域公園)が指定された。富士五湖地区は富士山噴火の溶岩流によって河川がせき止められてでき、山中湖、河口湖、西(さい)湖、精進(しょうじ)湖、本栖(もとす)湖よりなる。河口湖が観光的中心を占め、山中湖は避暑地として名高い。
[北川光雄]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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