地方公営企業労働関係法(読み)ちほうこうえいきぎょうろうどうかんけいほう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方公営企業労働関係法」の意味・わかりやすい解説

地方公営企業労働関係法
ちほうこうえいきぎょうろうどうかんけいほう

地方公共団体が経営する地方公営企業(地方鉄道、軌道、自動車運送、電気、ガス水道、工業用水道などの事業)および特定地方独立行政法人に勤務する地方公務員の労働関係について定めた法律。正式名称は「地方公営企業等の労働関係に関する法律」(昭和27年法律第289号)。略称地公労法。地方公営企業の正常な運営を最大限に確保し、住民福祉増進に資するため、地方公共団体の経営する企業とこれに従事する職員との間の平和的な労働関係の確立を図ることを目的とする。

 第二次世界大戦後、地方公営企業職員は、労働三法(労働組合法、労働関係調整法、労働基準法)が全面的に適用され、民間労働者と同様の権利が保障されていたが、1948年(昭和23)政令二〇一号により一般地方公務員と同様、争議権団体交渉権剥奪(はくだつ)された。しかし1952年に、現業国家公務員の労働関係に公共企業体等労働関係法(略称、公労法。現、行政執行法人の労働関係に関する法律。略称は行労法)を適用したのと同じ趣旨で、本法が制定され、地方公営企業労働者を一般地方公務員から分離し、団体交渉権は認めた。したがって、内容においても本法は行労法と類似している。すなわち、団結権についてはオープン・ショップ制をとり、クローズド・ショップ制ユニオン・ショップ制を認めず(5条)、団交権は、協約締結権を認められるが管理運営事項はその対象から除外され(7条)、予算上、資金上不可能な支出を内容とする協定は議会の承認が要件とされる(10条)。争議行為は全面的に禁止され(11条)、違反者は解雇される(12条)。一方、労働争議の調整および不当労働行為の判定・救済は、かつての公共企業体等労働委員会のような特別の機関を設けず、一般の場合と同様、都道府県労働委員会が行う。本法は行労法と同様、労働者の争議権を一律全面的に禁止している点で、日本国憲法第28条の団結権・団体行動権保障に明らかに抵触する。

[寺田 博]

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百科事典マイペディア 「地方公営企業労働関係法」の意味・わかりやすい解説

地方公営企業労働関係法【ちほうこうえいきぎょうろうどうかんけいほう】

地公労法と略。地方公営企業および特定地方独立行政法人とこれに勤務する職員との労働関係を規律する法律(1952年)。職員の争議行為の禁止,苦情処理機関の設置,強制調停仲裁制度,仲裁裁定の限定等を規定している。

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世界大百科事典 第2版 「地方公営企業労働関係法」の意味・わかりやすい解説

ちほうこうえいきぎょうろうどうかんけいほう【地方公営企業労働関係法】

地方公共団体(都道府県市町村)の経営に係る地方公営企業の労使関係を規律する法律であり,地公労法と略称する。国営企業労働関係法(国企労法)の地方版である。労使関係は集団的な関係を表し,労働関係は個々の契約関係を表す。地公労法にいう労働関係は労使関係の意味である。地公労法が規律する労働関係は,鉄道事業,軌道事業,自動車運送事業,電気事業,ガス事業,水道事業,工業用水道事業その他の事業を営む地方公営企業とそこに従事する職員との間の労働関係である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「地方公営企業労働関係法」の意味・わかりやすい解説

地方公営企業労働関係法
ちほうこうえいきぎょうろうどうかんけいほう

昭和 27年法律 289号。地方公営企業で働く職員の労働関係を規律する法律。職員の団結権と団体交渉権は認めるが (5,7条) ,争議行為を禁止し (12条) ,予算上または資金上不可能な支出を内容とする労働協定の効力を制限している (10条) 。不当労働行為については,労働委員会によって審理,救済されることなどを定める。

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