sweating systemの訳語。広くは、最低生活をも維持しえない、低賃金の支配する過酷な搾取制度を意味するが、本来は、請負制度のもとで、労働者間の過当競争や労働組合の欠如などを利用して、極端な低賃金・長時間労働、劣悪な労働条件で労働者を働かせ、中間的で寄生的な搾取を行った請負人を「労働者の汗を搾り出させる人」sweaterとよんだことから生まれたことばである。
古くは問屋制前貸し下の家内工業で発展していた請負制度が、大規模に利用され、苦汗制度として大きな関心をよび、社会的非難の的となったのは、19世紀後半の独占資本主義への移行期である。この時期、規模を大型化した大企業は新しい技術革新の下で、労働者に労働強化を押し付けつつ、激しい競争戦を展開した。他方、経済的支配力を強化した大企業との競争に敗れ、放逐された小企業や家内工業は、まだその支配が及んでいない生産諸分野に殺到したが、大企業はこのような小企業や家内工業をその外部業に編成し、自己の競争力を強化しようとした。このため、小企業や家内工業者は、婦人労働者を中心とする不熟練労働者を広範囲に導入し、請負制度を利用して彼らを酷使するようになった。
苦汗制度を非難し、その廃止を求めた人々は、不熟練労働者の組織化が困難であるがゆえに、国家の法律による規制を提案し、反苦汗制運動を展開した。この運動の結果制定された最低賃金制のおもな目的は、この苦汗制度の廃止にあった。
[湯浅良雄]
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…それらはもはやそれ自身としてはなんら独自の技術的基礎をもたず,工場の付随的な作業工程での不熟練,簡単な作業でしかないことから,家内労働の多くが,主婦や家庭内の病弱者,老人などによって行われている。仲介者の中間搾取も加わって,労働条件はきわめて劣悪であり,いわゆるスウェッティング・システムsweating system(苦汗制度)の代表的形態である。 家内労働の類型としては,通常便宜的に,(1)家内労働をその世帯の本業とする専業的家内労働,(2)世帯主以外の家族が世帯主の本業とは別に,家計補助のために行う内職的家内労働,(3)本業のあいまに行う副業的家内労働の三つに区分されている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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