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苦汗制度 くかんせいどsweating system

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

苦汗制度
くかんせいど
sweating system

19世紀,イギリスの問屋制家内工業でみられた賃金,労働時間など劣悪な労働条件に端を発して使われはじめた用語で,機械制大工業に圧迫される零細家内工業の実態をいう。産業革命以後世界的規模で広がった。マルクスは「奴隷の仕事」とさえ呼んだことがある。こうした苦汗制度に対し,19世紀後半イギリスで苦汗制度調査委員会が設立され,さらに最低賃金法制定されるにいたった。また労働保護法の制定や労働組合発達もあって,欧米はもちろん日本でも,こうした状態はほとんど消滅した。

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百科事典マイペディアの解説

苦汗制度【くかんせいど】

sweating systemの訳。長時間低賃金できわめて悪い環境の下に労働者を酷使する制度。19世紀半ば英国で婦人・幼少年・未熟練労働者を酷使する使用者をsweater(汗を絞り出させる人)と呼んだことに由来。

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大辞林 第三版の解説

くかんせいど【苦汗制度】

請負制度の下での中間搾取により、労働者をきわめて劣悪な労働条件のもとに働かせる労働体制。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

苦汗制度
くかんせいど

sweating systemの訳語。広くは、最低生活をも維持しえない、低賃金の支配する過酷な搾取制度を意味するが、本来は、請負制度のもとで、労働者間の過当競争や労働組合の欠如などを利用して、極端な低賃金・長時間労働、劣悪な労働条件で労働者を働かせ、中間的で寄生的な搾取を行った請負人を「労働者の汗を搾り出させる人」sweaterとよんだことから生まれたことばである。
 古くは問屋制前貸し下の家内工業で発展していた請負制度が、大規模に利用され、苦汗制度として大きな関心をよび、社会的非難の的となったのは、19世紀後半の独占資本主義への移行期である。この時期、規模を大型化した大企業は新しい技術革新の下で、労働者に労働強化を押し付けつつ、激しい競争戦を展開した。他方、経済的支配力を強化した大企業との競争に敗れ、放逐された小企業や家内工業は、まだその支配が及んでいない生産諸分野に殺到したが、大企業はこのような小企業や家内工業をその外部業に編成し、自己の競争力を強化しようとした。このため、小企業や家内工業者は、婦人労働者を中心とする不熟練労働者を広範囲に導入し、請負制度を利用して彼らを酷使するようになった。
 苦汗制度を非難し、その廃止を求めた人々は、不熟練労働者の組織化が困難であるがゆえに、国家の法律による規制を提案し、反苦汗制運動を展開した。この運動の結果制定された最低賃金制のおもな目的は、この苦汗制度の廃止にあった。[湯浅良雄]

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世界大百科事典内の苦汗制度の言及

【家内労働】より

…それらはもはやそれ自身としてはなんら独自の技術的基礎をもたず,工場の付随的な作業工程での不熟練,簡単な作業でしかないことから,家内労働の多くが,主婦や家庭内の病弱者,老人などによって行われている。仲介者の中間搾取も加わって,労働条件はきわめて劣悪であり,いわゆるスウェッティング・システムsweating system(苦汗制度)の代表的形態である。 家内労働の類型としては,通常便宜的に,(1)家内労働をその世帯の本業とする専業的家内労働,(2)世帯主以外の家族が世帯主の本業とは別に,家計補助のために行う内職的家内労働,(3)本業のあいまに行う副業的家内労働の三つに区分されている。…

※「苦汗制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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