苫前(読み)とままえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「苫前」の意味・わかりやすい解説

苫前(町)
とままえ

北海道北西部、留萌(るもい)振興局管内の町。1948年(昭和23)町制施行。町名はアイヌ語トマオマナイ(エゾエンゴサクの茂る所の意)の転訛(てんか)。日本海に面する。海岸沿いを国道232号が走り、239号が分岐する。町域の大部分は標高200~500メートルの山地が占める。町域の83%は森林で、うち国有林が約80%に達する。段丘崖(がい)下の狭い海浜に苫前港を中心に旧市街や漁業集落が連なるが、東方の段丘上の国道沿いに役場の新庁舎をはじめ、新しい市街が形成されている。古丹別(こたんべつ)川などの流域田畑が開ける。1787年(天明7)以降、漁業請負人栖原角兵衛(すはらかくべえ)が苫前場所の経営にあたり、運上屋が設けられた。1872年(明治5)開拓使宗谷(そうや)支庁の苫前出張所(翌1873年留萌支庁苫前出張所、1875年札幌本庁留萌出張所苫前派出所となり、同年苫前分署と改称)が置かれ、一時期この地方の中心地となり、とくに明治30年代にはニシン漁で繁栄した。現在も第一次産業が主で、農業では水稲栽培、メロン、ダイコントウモロコシなどの蔬菜(そさい)栽培、酪農が行われる。ほかに、タコホタテガイヒラメアワビウニなどの沿岸漁業と増養殖、およびそれらの水産加工業や、造林事業などの林業、製材業などが行われる。面積454.60平方キロメートル、人口2936(2020)。

[岡本次郎]

『『苫前町史』(1982・苫前町)』


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改訂新版 世界大百科事典 「苫前」の意味・わかりやすい解説

苫前[町] (とままえ)

北海道北西部,留萌(るもい)支庁苫前郡の町。人口3656(2010)。地名はアイヌ語の〈トマ・オマ・イ(エゾエンゴサクがある所)〉に由来する。1787年(天明7)松前藩の特権商人の栖原(すはら)家が苫前場所の経営を請け負い,運上屋を設けて以来,ニシンを追って北上した漁民も増え,安政年間(1854-60)に漁村が成立し,明治30年代にはニシン漁の全盛期を迎えた。内陸部の開拓は1896年香川・三重両県からの団体移民の入植以後に本格化した。ニシン漁の衰微後は水産加工,製材のほか,古丹別(こたんべつ)川流域での米作と海岸段丘上の酪農が基幹をなす。国道232号,239号線が通じる。
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百科事典マイペディア 「苫前」の意味・わかりやすい解説

苫前[町]【とままえ】

北海道苫前郡の町。日本海に面する海岸は平地,東部奥地は山岳地帯。中心集落はニシンを追って北上した漁民によって江戸時代末に生まれた漁村で,明治30年代にニシン漁の最盛期を迎えた。農業は米作のほか,酪農が盛ん。漁業では,カレイ,タコ,イカ,ホタテなどを漁獲。林業も行う。454.60km2。3656人(2010)。

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