仮名草子。2巻2冊。作者未詳。1620年代の成立。深草の里に住む園部(そのべ)の衛門(えもん)は、あるとき清水寺(きよみずでら)へ参詣(さんけい)して薄雪を見そめ、侍女の仲立ちで恋文を送り、2人の間に手紙の往復が始まる。中世以前の恋物語を数多く引きながらの恋文の往復が続いたのち、2人の恋は成就するが、衛門の旅行中に薄雪は病死する。絶望した衛門は出家遁世(とんせい)し、道心堅固に日を送って26歳で往生を遂げる、という筋。物語の展開は中世物語を踏襲しており、近世の時代相を反映しているとはいえないが、その大半を手紙の往復によって構成する趣向には新しさがみられ、近世に流行する書簡体小説の始発点としての位置を占める。それと同時に、中世以前の著名な恋物語の多くを平明に要約し読者を啓蒙(けいもう)する内容は近世人の常識的な教養を形成する役割を果たし、江戸時代全体を通じて読み継がれる作品となったため、後世まで多くの影響を及ぼしている。
[谷脇理史]
『野田寿雄校注『日本古典全書 仮名草子集 上』(1960・朝日新聞社)』
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…人形は園部兵衛・正宗を桐竹勘十郎,園部左衛門を桐竹門三郎,幸崎(さいさき)伊賀守を竹川七郎治,薄雪姫を吉田文三郎,団九郎を吉田才治ほか。直接の原拠は1632年(寛永9)に刊行の浮世草子《薄雪物語》であるが,これはまず,85年(貞享2)江戸森田座の歌舞伎《薄雪物語》で劇化され大当りをとって以来,《薄雪今中将姫》(1700初演)などが上演されたが,これらの影響を受けて人形浄瑠璃に作られたと思われる。花の清水寺の出会い以来,相愛の仲の園部兵衛の息左衛門と幸崎伊賀守の娘薄雪とは秋月大膳に謀られて将軍呪詛(じゆそ)の疑いを受け,両方の父が子に代わって切腹する。…
※「薄雪物語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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