改訂新版 世界大百科事典 「薬用量」の意味・わかりやすい解説
薬用量 (やくようりょう)
dose
医薬品を,疾患の診断,予防ならびに治療の目的で,ヒトに適用する際の容量をいう。実験動物などに各種の試験をする場合にも同じ表現をとるが,この場合には必ずしも上記の目的のためとは限らない。
常用量usual dose
通常,ある疾患に対して薬効を期待して用いられる薬用量は常用量といわれ,疾患名,重篤度,患者の性や年齢によって,比較的狭い幅をもった量が臨床的に定められている。1回量や1日量で規定されることが多い。同じ薬剤でも,対象となる疾患や重篤度が異なるときは薬用量も変わることがある。また同じ薬効が期待される薬剤でも,その適用経路(経口投与,皮下注射,静脈内注射ならびに外用)などで,薬用量は異なる場合が多い。常用量は,適用される個体に対し薬効を現すが副作用をほとんど起こさないように定められるが,ヒトによってこの用量でも異常な障害を現す場合があり,これらの生体の反応を副作用と区別してその薬剤による有害反応と呼ぶことがある。
極量maximal dose
副作用を防ぐ目的で,通常それ以上に使われることが少ない用量を極量として定めている(日本薬局方収載の薬品の一部)こともある。極量を超えた使用によっても直ちに副作用を起こすとは限らないが,より強力な効果を望む場合に,医師は極量を超えている旨の印(!)をつけて処方することもできる。医薬品の使用はむずかしく,家庭で自己投薬する場合も,薬用量に十分注意して用いるべきである。
執筆者:大森 義仁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報