生薬(しょうやく)を粉末化するための道具。中国の唐代に発明されたもので、中国名は薬碾(やくてん)。日本へ伝わった年代は不明であるが、茶をひく茶碾は11世紀(平安時代)にはすでに伝わっていたことが知られている。薬研の伝来は、おそらくこれよりも以降であろう。薬研は、細長い舟形で断面がV字形をした臼(うす)の部分と、そろばん玉を平たくして軸を通したような磨(す)り具とからなる。大きさはさまざまであるが、臼部の長さ30センチメートル、磨り具の径20センチメートルほどのものが一般的である。木製、鉄製、石製のものがある。使用に際しては、座して体の前に臼を縦方向に置き、臼の中に薬物を入れ、磨り具をのせ、両軸を手のひらでつかみ、磨り具を前後に回転させながら粉末にする。このとき、左右の手のいずれかをやや前後させ、臼に対して磨り具をやや斜めにするとひきやすくなる。
[難波恒雄・御影雅幸]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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