虚空蔵菩薩(読み)コクウゾウボサツ

デジタル大辞泉 「虚空蔵菩薩」の意味・読み・例文・類語

こくうぞう‐ぼさつ〔コクウザウ‐〕【虚空蔵菩薩】

《〈梵〉Ākāśa-garbhaの訳》虚空が無限に一切のものを蔵するように、その智慧功徳くどくが広大無辺である菩薩胎蔵界曼荼羅まんだら虚空蔵院の主尊で、蓮華座に座し、五智宝冠を頂き、右手に智慧の宝剣、左手福徳如意宝珠を持つ姿に表す。虚空蔵

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精選版 日本国語大辞典 「虚空蔵菩薩」の意味・読み・例文・類語

こくうぞう‐ぼさつコクウザウ‥【虚空蔵菩薩】

  1. ( [梵語] Ākāśa-garbha または、Gaganagañja の訳語 ) 仏語。菩薩の一つ。「虚空蔵」は、虚空がすべてを蔵するように、無量の智慧と福徳をそなえているの意で、人々にこれらを与え、願いを満たし救うという菩薩。密教では、胎蔵界曼荼羅(たいぞうかいまんだら)の虚空蔵院の主尊で、同じ釈迦院の釈迦の脇侍ともするが、金剛界では賢劫十六尊の一つ。その形像は、胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院では、体は肉色で、頭に五仏の冠をいただき、右手には光炎のある剣、左手には宝珠のついた蓮華を持ち、所持の宝と剣は福徳と智慧を表わすが、また種々の形像があり、求聞(ぐもん)持法を修するときの本尊や五大虚空蔵などがある。また民間では、うなぎとの関連から、丑寅の年に生まれた人の守本尊とするなどの俗信がある。虚空蔵。こくぞうぼさつ。
    1. 虚空蔵菩薩〈図像抄〉
      虚空蔵菩薩〈図像抄〉
    2. [初出の実例]「虚空蔵菩薩、我に智恵を令得給へ」(出典今昔物語集(1120頃か)一一)
    3. [その他の文献]〔虚空蔵菩薩神呪経〕

こくぞう‐ぼさつコクザウ‥【虚空蔵菩薩】

  1. 「こくうぞうぼさつ(虚空蔵菩薩)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「福一万とは名計り。下用櫃には虚空蔵(コクゾウボサツ)」(出典:浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)四)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「虚空蔵菩薩」の意味・わかりやすい解説

虚空蔵菩薩
こくうぞうぼさつ

菩薩の一つ。サンスクリット語アカーシャガルバĀkāśagarbhaの訳。宇宙のすべてのものを含み、虚空(大空)のように無量の福徳・智慧(ちえ)を具(そな)え、これをつねに衆生(しゅじょう)に与えて諸願を成就させる菩薩である。また、大日如来(にょらい)の福と智の二徳を本誓(ほんぜい)(根本の誓願)とするため、同体とする菩薩が多い。たとえば、金剛宝菩薩、虚空庫菩薩(『理趣経』)、金剛胎菩薩(『摂真実経』)、地蔵菩薩がそれであり、またこの菩薩の化身明星(『虚空蔵神呪経(しんじゅきょう)』)、日月星(『宿曜儀軌(しゅくようぎき)』)がある。奈良時代に将来された求聞持(ぐもんじ)法(虚空蔵菩薩を本尊として修する行法)以降、虚空蔵信仰が盛んとなり、曼荼羅(まんだら)にも描かれ、胎蔵界(たいぞうかい)曼荼羅の虚空蔵院の中心仏となった。彫像、絵画にも多く描かれる。その形像は菩薩形で、右手に智慧を表す剣、左手に福徳を表す蓮華(れんげ)と如意宝珠(にょいほうじゅ)を持ち、頭上に五つの智慧を表す冠をかぶる。京都嵯峨(さが)の法輪寺は嵯峨虚空蔵と称して親しまれており、毎年4月13日には子供に智恵が授けられるという十三参りでにぎわう。茨城県東海村の村松(むらまつ)虚空蔵堂、福島県柳津(やないづ)町の円蔵寺(柳津虚空蔵)は嵯峨の虚空蔵とともに日本三虚空蔵といわれる。

[小野塚幾澄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「虚空蔵菩薩」の意味・わかりやすい解説

虚空蔵菩薩
こくうぞうぼさつ
Ākāśa-garbha

虚空孕 (こくうよう) 菩薩ともいう。一切香集世界に住み,福徳と智慧をそなえ,これが無量無辺であたかも虚空のごとく広大無辺であることからこの名称がある。胎蔵界曼荼羅の虚空蔵院に置かれ,蓮華座に坐し,頭に五智宝冠を戴き,左手には上に如意宝珠を載せた福徳を示す蓮華を持ち,右手には智慧の宝剣を持っている。その他種々の形像がある。日本では虚空蔵菩薩を念じ求聞持法を行うと記憶力を増大させると考えられ,8世紀末頃から盛んに信仰され,造像が行われた。奈良額安寺や福島能満寺には8世紀の遺品が伝わり,平安時代の作としては広隆寺,奈良北僧坊,滋賀金勝寺,三重勝因寺に伝わる遺像が知られる。なお法隆寺の『百済観音』や法輪寺の菩薩立像も虚空蔵菩薩と呼ばれているが,7世紀にはまだこの信仰はみられず,いずれも観音像である。画像では東京国立博物館保管,絹本着色の『虚空蔵菩薩像』が知られ,平安時代末期の様式を示す代表作の一つと認められる。

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百科事典マイペディア 「虚空蔵菩薩」の意味・わかりやすい解説

虚空蔵菩薩【こくうぞうぼさつ】

〈こくぞうぼさつ〉とも。知恵が虚空のように広大な菩薩。頭に宝冠を頂き身に飾りをつけ,右手に知恵を象徴する剣,左手に福徳を表す知恵宝珠を持つ。人に現世・来世の利益を授けるとされ,この菩薩を本尊とする虚空蔵法という修法が平安期以後広く行われた。
→関連項目柳津[町]

虚空蔵菩薩【こくぞうぼさつ】

虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「虚空蔵菩薩」の解説

虚空蔵菩薩 こくうぞうぼさつ

無限の力で生あるものすべてをすくうという菩薩。
さまざまな姿をとり,日本には奈良時代につたわる。密教の修法のひとつ求聞持法(ぐもんじほう)の本尊,また十三参りなどの対象となる。

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