蚰蜒(読み)げじげじ

精選版 日本国語大辞典 「蚰蜒」の意味・読み・例文・類語

げじ‐げじ【蚰蜒】

〘名〙 (歴史的かなづかいには「げじげじ」「げぢげぢ」の両説があり未詳)
① 「げじ(蚰蜒)①」の俗称。《季・夏》 〔日葡辞書(1603‐04)〕
※仮名草子・東海道名所記(1659‐61頃)三「(むかで)あしのかせぎ心は、げぢげぢの、いそがはしきばかりにて」
② 梶原景時を憎んでいう語。紋の形または景時(けいじ)から出たともいわれる。げじ。
浄瑠璃・源義経将棊経(1711頃)一「京わらんべが異名を付汝親子を(ゲヂゲヂ)といひ」
③ 人から忌みきらわれる者。憎まれ者。げじ。
※評判記・役者評判蚰蜒(1674)序「かぢわらがむまれかわりの蚰蜒のむしとよばれぬれば人ににくまれきらはれ」
※ゆく年(1928‐29)〈久保田万太郎〉三「その界隈切ってのあばれもので、げぢげぢのやうに思はれてゐた奴」
④ (「非」の字形が、①の形に似ているところから) 非職の官吏をいう。
※蒸発皿(1933)〈寺田寅彦〉三「当時の陸軍では非職のことを『げじげじ』」
⑤ パッチの膝下につけた紐を通す乳(ち)
⑥ 昆虫「めくらぐも(盲蜘蛛)」の一種で、形の大きいものをいう。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕
植物たがらし(田芥子)」の異名。〔重訂本草綱目啓蒙(1847)〕

げじ【蚰蜒】

〘名〙 (歴史的かなづかいには「げじ」「げぢ」の両説があり、未詳)
ムカデゲジ目ゲジ科の節足動物体長二~三センチメートル。体は淡褐色で多くの節からなる。ムカデに似ているが、やや小形で、あしははるかに長い。歩脚は一五対で、最後の一対は特に長く、頭部の触角とほぼ同じくらいある。家屋内の害虫を捕食する有益な動物だが、姿が不気味なためにきらわれる。本州以南に分布し、人家付近の石垣や材木の間、山林落葉の下などにすむ。げじげじ。げじげじむし。げじむし。《季・夏》
※雑俳・三国力こぶ(1819)「いっそよい・蚰に這れた若口入」
意地の悪い者を憎んでいうあだ名。特に梶原景時をいう。げじげじ。
※浄瑠璃・伊達錦五十四郡(1752)一「ヤイ蚰(ゲヂ)め」
③ 憎まれ者。また、憎まれ口をたたくこと。げじげじ。げじげじむし。
※洒落本・遊婦里会談(1780)「人のいい客人さ。武士でやしきで侍さ。あんまり蚰(ゲジ)をいいなさんな」

ゆ‐えん【蚰蜒】

〘名〙
① =なめくじ(蛞蝓)〔十巻本和名抄(934頃)〕
ゲジゲジヤスデの類。〔音訓新聞字引(1876)〕

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デジタル大辞泉 「蚰蜒」の意味・読み・例文・類語

げじ‐げじ【蚰蜒】

ゲジの俗称。 夏》「―や風雨の夜の白襖草城
人から忌み嫌われる者のたとえ。
[補説]歴史的仮名遣いは「げぢげぢ」とする説もある。

げじ【蚰蜒】

ゲジ目の節足動物。体長約3センチであるが、15対のきわめて長い歩脚をもつので大きく見える。家屋内の害虫を捕食する益虫。げじげじ。 夏》
[補説]歴史的仮名遣いは「げぢ」とする説もある。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「蚰蜒」の解説

蚰蜒 (ゲジゲジ)

植物。キンポウゲ科の越年草,薬用植物。タガラシの別称

蚰蜒 (ゲジ・ゲジゲジ)

動物。ゲジ目の陸生動物の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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