行政監査(読み)ぎょうせいかんさ

改訂新版 世界大百科事典 「行政監査」の意味・わかりやすい解説

行政監査 (ぎょうせいかんさ)

行政機関の事務や会計執行・管理が適法かつ公正になされているか否かを調査し,必要に応じ改善勧告を行うこと。監査は,(1)対象によって,経費支出の適法性や効率的運用を調査する会計監査と事務処理の合理化を目的とする業務監査,(2)時期により,執行結果を対象とする事後監査と執行中のものを対象とする事前監査,(3)主体により,当該執行機関とは別個独立の外部機関による外部監査とみずからの責任確保の手段に用いる内部監査,にそれぞれ区別されることがある。行政監査は,もともと会計検査院による立法部統制たる事後的な外部監査が主であったが,行政機能の増大にともない,行政の内部統制手段として事前の会計・業務監査も重視されることになった。

 日本における中央の行政監査には,各省庁および特殊法人の内部監査(各省庁には特別の業務監査,特殊法人には監事監査がある),総務庁(1984年6月までは行政管理庁)による行政監察および大蔵省によるいわゆる四六監査(会計法46条に基づき大蔵大臣が行う予算執行状況監査)などの準外部監査(視点を各省庁側におけば外部監査であるが,行政部全体におけば立法部に対する意味では内部監査である)のほか,会計検査院が国の収入支出の検査を通じ総括的に行う外部監査がある。

 このうち総務庁の所管とされる行政監察は,行政の適正かつ効率的な運営を期するために,各行政機関の業務の実施状況を調査し,必要な改善勧告を行うことである。監察の調査対象は,広く,国の各省庁の業務のみならず,特殊法人の業務および国の委任または補助を受けて行われる地方公共団体等の業務にまで及んでおり,検討事項も施策や制度の浸透度や業務運営の合法性のみならず,合目的性・効率性,さらには業務そのもののあり方にまで及んでいる。その態様は,施策・制度の全般的改善を行う全政府的な監察活動(行政監察局が企画し,総務庁の管区,地方局の全国調査網により収集した実証データに基づき,関係行政の改善を各省大臣に勧告するもの)と現地行政の監視活動結果に基づく地方監察活動(民間各界有識者の参加も得て管区・地方局単位で改善を図るもの)に分かれる。

 日本の地方自治体では,国による監査は財務報告,書類帳簿の調査,実地観察等に限定され,監査委員の制度で自主的に行政監査が行われている。監査委員は,府県および政令で定める市では4人,市は3人または2人,町村は2人または1人,首長が地方議会の同意を得て,議員と学識経験者の中から同数を選任する。毎会計年度少なくとも1回以上の定期監査のほか,住民や地方議会等の請求により,または職権により随時,事務の管理・出納その他事務の執行の監査を行うことになっている。しかし施策実施の有効性や資源の計画的効率的利用の程度を客観的に納税者の立場で監査するという点では内部監査たる現行制度は不十分であり,中立的な第三者機関を設け厳正な外部からの監査を行い,その報告書を住民に公開する必要があるとする改革案も検討されている。
会計検査
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行政監査」の意味・わかりやすい解説

行政監査
ぎょうせいかんさ

国の行政機構や地方公共団体などの事務処理,経理会計を調査し,その適正化をはかる業務。行政監査には,事務処理に対する事務監査と経理会計に対する財務監査,監査の主体に関する内部監査と外部監査,監査対象行為の時点に注目する事前監査と事後監査などがある。日本の担当機関は,中央には,経理会計を担当する会計検査院,各種行政機関の監査を担当する総務省がある。地方には,監査委員制度があり,監査委員が事務,会計を監査する。

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