執行機関の職務執行状況を検査する機関。その組織・職務・権限等は法律により異なる。
地方公共団体必置の監査機関(地方自治法195条以下、地方自治法施行令140条の2以下)。国における会計検査院に近い。その定数は、都道府県および人口25万人以上の市、特別区では4人(識見を有する者から選任された者のうち少なくとも1名は常勤)、その他の市町村では2人(条例で増加可能)である。そのうちの1人は代表監査委員となる。その選任は、長が、財務管理、事業の経営管理、その他行政運営に関し優れた識見を有する者および議員のうちから議会の同意を得て行う。地方公共団体の常勤職員との兼職禁止、地方公共団体の職員であった者は1名に限ること、地方公共団体の長・副知事・副市町村長と親子・夫婦または兄弟姉妹の関係にある者の就職禁止、一定の利害関係事件の監査禁止の定めがある。任期は、識見を有する者のうちから選任される者にあっては4年、議員のうちから選任された者は議員の任期による。その身分は保障され、長が、心身の故障のため職務の遂行に堪えないと認めるとき、または職務上の義務違反その他監査委員たるに適しない非行があると認めるときに限り、議会の同意を得て罷免することができる。その職務は公平不偏の態度で行わなければならず、守秘義務も課されている。監査のため必要があると認めるときは、関係人の出頭を求めること、関係人について調査すること、関係人に対し帳簿、書類その他の記録の提出を求めることができ、また学識経験を有する者等から意見を聴くことができる。
監査の対象は、原則的には、地方公共団体の事務全般ではなく、その財務に関する事務の執行およびその経営に係る事業の管理に限るが、首長からの要求があるとき、または自らさらに必要があると認めるときは、事務全般(若干の例外あり)の執行にも及ぶ。この監査は毎会計年度少なくとも1回以上行い、その際、最少の経費で最大の効果を上げるとの経済合理性の原則および組織の合理化の趣旨に添っているかどうかに、とくに意を用いる。
また、その地方公共団体が、補助金、交付金、負担金、貸付金、損失補償、利子補給などの財政的援助を与えている団体の出納などのうちその援助に係るもの、4分の1以上出資している団体、借入金の元金または利子の支払を保証している団体、受益権を有する不動産信託の受託者および公の施設の指定管理者についても、自らの発意または首長の要求により監査することができる。
監査結果は、監査委員の合議のうえ、首長、議会、関係のある各種委員会に提出し、公表する。さらに、監査委員は、組織および運営の合理化に資するため、この監査の結果に関する報告に添えてその意見を提出することができる。監査の結果に関する報告を受けた首長、議会、委員会は、措置を講じたときはその旨監査委員に報告する。
また、住民から事務監査請求(地方自治法75条)、住民監査請求(同242条)があったときも監査しなければならない。
[阿部泰隆]
委員会設置会社に置かれている監査委員会の構成員である取締役をさす。2002年(平成14)の商法改正(平成14年法律第44号)により、会社の機関構成の一つとして委員会等設置会社が導入された。これは、アメリカの会社の機関形態を模し、会社の取締役会内に、取締役を構成員とする指名委員会、報酬委員会、監査委員会の三つの委員会を置き、しかも、それら委員会の構成員の過半数を社外取締役として、会社の業務執行の監督を担わせようとする形態である。委員会等設置会社には業務執行機関として執行役を置き、監督と執行を分離することを目ざして創設された。その後、2005年には、商法のなかで会社について規定していた「第2編 会社」が単行法化され、会社法(平成17年法律第86号)が制定された。会社法制定時に、委員会等設置会社の「等」の字が抜け、委員会設置会社と改称された。
委員会設置会社において、おもに取締役、執行役の職務執行の監査を行うのが監査委員会であり、監査委員はその構成員である。監査委員は全員、会社および子会社の業務執行を行う者との兼任が許されない。
委員会設置会社以外の会社における監査役の監査と比べると、(1)監査役は現実には社内においては取締役よりも下の地位にいるとみられ、取締役に対する監査を行うことがむずかしいが、監査委員はその構成員が社外取締役であるため、社内の上下意識・仲間意識から生じる監査の緩みを防止することができる、(2)監査役は経営判断に口出しできないために職務執行の違法性についてしか監査できず妥当性までは監査できないが、監査委員は構成員が取締役であるので、職務執行の妥当性にまで監査を行うことができる、という違いがある。
[武田典浩]
『落合誠一著『会社法要説』(2010・有斐閣)』▽『江頭憲治郎著『株式会社法』第4版(2011・有斐閣)』▽『神田秀樹著『法律学講座双書 会社法』第15版(2013・弘文堂)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
(北山俊哉 関西学院大学教授 / 笠京子 明治大学大学院教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…地方自治体には,財務に関する事務の執行,公営事業経営の状況を監査するために,長が議会の同意を得て任命する監査委員が置かれている。監査委員が定期または随時行う監査に加えて,住民の直接参政を保障するため,住民には監査委員に対する監査請求権が認められている。…
…その態様は,施策・制度の全般的改善を行う全政府的な監察活動(行政監察局が企画し,総務庁の管区,地方局の全国調査網により収集した実証データに基づき,関係行政の改善を各省大臣に勧告するもの)と現地行政の監視活動結果に基づく地方監察活動(民間各界有識者の参加も得て管区・地方局単位で改善を図るもの)に分かれる。 日本の地方自治体では,国による監査は財務報告,書類帳簿の調査,実地観察等に限定され,監査委員の制度で自主的に行政監査が行われている。監査委員は,府県および政令で定める市では4人,市は3人または2人,町村は2人または1人,首長が地方議会の同意を得て,議員と学識経験者の中から同数を選任する。…
※「監査委員」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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