一般に政府の会計記録を記録作成者以外の第三者が確認,証明,報告することをいう。会計検査は,財政の民主的統制と予算責任(アカウンタビリティ)の確保という課題を担っている点で,民間企業でいう〈会計監査〉と区別されるが,広義の会計監査は両者を含む。政府において予算責任のために諸決定を行う機関とは別個独立の外部機関による監査一般を外部監査といい,当該機関がみずからの責任確保の手段として用いる監査を内部監査という。ただしこの区別は視点によって異なり,例えば日本の大蔵省が会計法46条に基づいて各省庁に対して行う監査(46監査と通称)は,各省庁側からみれば外部監査であるが,視点を行政部全体におけば会計検査院による外部監査に対応する内部監査である(〈会計監査〉の項参照)。
会計検査のあり方は,各国の経済と統治との構造によって規定される予算制度の特異性,その予算制度の不可欠の一部である政府会計制度の相違,政治的伝統に基づく会計検査機関の地位と機能の差異等によって左右される。今日では,各国に行政部全体に対して外部監査機能を果たす会計検査の独立専担機関が設けられており,その一般的目的は,国の経理,とくに支出面の適正さ,職員の清廉度,経理の過誤・不正の発見と予防等にあるとされている。日本の会計検査院は,憲法90条に基づき国会の同意をえて内閣が任命する3人の検査官からなる合議制機関で,内閣に対して独立の地位を有し,国の収入・支出の決算の検査を担当している。
日本では,決算を予算とは別個のもので,会計機能はうるさい決算検査のための実行予算の跡始末とみる思考様式が根強い。また監査体系も,実地検査を主方法とする会計検査院,行政監察を担当する行政管理庁,いわゆる46監査を実施する大蔵省等の各機関が割拠性(セクショナリズム)に基づいて分立し,それぞれの監査の対象(個々の会計行為のほか事業計画や会計制度の構造等)や基準(効率,政策としての総合性,効果等)が重複し,あいまいであるため,行政の混乱と遅延の一因となっている。こうした問題を解決するためには,予算制度全体の改革のなかで内部監査機能を確立して,その基準と対象範囲を尊重しつつ独自の外部監査機能が発揮しうる新たなしくみが必要だといわれる。
執筆者:大森 弥
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
広義には、民間の企業やその他の団体に対して実施される「会計監査」も含み、帳簿やその他の会計書類などを正式に検査し、団体の財政活動の確認や報告をする活動をいうが、一般には国の会計検査機関による決算検査や日常的な会計の監督をさす。さらに狭義には、日常的監督のみをさし、決算検査とは区別することもある。
財政の民主的統制・監督は民主主義の実質化のために不可欠であるが、政府は、議会による予算の承認という形で事前の統制を受ける。さらに決算の審査という形で事後的な統制も受けることになるが、決算の審査は会計検査院による審査と国会による審査の2段階に分かれる。会計検査院による審査は、法的見地から決算の合理性と的確性を検査し確認しようとするものである。これは会計検査院のもっとも重要な権限であり、十分な資料と実地検査などを基礎に、個々の支出の当否を判断する。この決算検査により、国の収入・支出の決算を確認する効果が生ずる。
決算検査以外にも、会計検査院は常時検査を行い、その適正を期しかつ是正を図るという任務を与えられている。これがもっとも狭義の会計検査の意味であり、決算検査の準備にもなるが、それとは独立の会計経理の一般的監督という性格も有している。
[林 正寿]
(新藤宗幸 千葉大学法経学部教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…会計監査は,会計の行われるところなら実施されるべきであり,非営利事業や国または公共団体にも行われる。会計検査院による政府の,また監査委員による地方公共団体の会計検査も広義の会計監査に含まれるが,それが財政の監督という目的で行われるため狭義の会計監査と区別される。通常,会計監査は民間企業の会計監査をさしている。…
※「会計検査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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