厚生労働大臣の免許を受けて、医師または歯科医師の指示のもとに、おもに放射線を人体に対して照射することを業務としている者をいう。一般に「X線技師」「レントゲン技師」などとよばれる者の正式名称。
ここでいう照射には撮影も含まれるが、照射機器または放射性同位元素(その化合物および放射性同位元素、またはその化合物の含有物を含む)を人体内に挿入して行うものは除かれる。また、放射線とは、(1)α(アルファ)線およびβ(ベータ)線、(2)γ(ガンマ)線、(3)100万電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線、(4)X線、(5)その他政令で定める電磁波または粒子線、をさしている。1993年(平成5)より、MRI(磁気共鳴映像法)検査、超音波検査、眼底写真撮影が業務に加えられた。
診療放射線技師は「診療放射線技師法」(昭和58年法律83号)の規制を受ける。1951年(昭和26)に同法の基となる「診療エックス線技師法」が公布されて以来、100万電子ボルト未満のエネルギーを有するX線の照射のみを行う診療X線技師が業務を担ってきたが、その後、α線やβ線など取り扱いの拡大に伴い、1968年「診療エックス線技師法」は「診療放射線技師及び診療エックス線技師法」に改正され、放射線全般を取り扱う診療放射線技師制度が創設された。1979年からは診療X線技師の学校、養成所においても養成が行われなくなり、1983年(昭和58)には「診療放射線技師及び診療エックス線技師法」(旧法)から「診療放射線技師法」(新法)への法改正がなされ、診療X線技師制度は廃止、診療放射線技師に一本化された。なお、すでに診療X線技師の免許を得た者は、その後も業務ができるように旧法、新法により定められている。
診療放射線技師は、医師または歯科医師の具体的な指示を受けなければ、放射線を人体に対して照射してはならないと定められている。具体的な業務としては、胸部・腹部・歯牙(しが)などの単純撮影、呼吸器・消化器・泌尿生殖器・脈管などの造影撮影のほか、特殊撮影、放射性同位元素による一部の検査などで、照射については、指示をなした医師または歯科医師の署名を受けることが義務づけられている。
診療放射線技師になろうとする者は、診療放射線技師試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。受験資格は、学校教育法の規定により大学に入学することができる者で、(1)文部科学大臣が指定した学校、または厚生労働大臣が指定した診療放射線技師養成所において3年以上、診療放射線技師として必要な知識および技能を修得した者、(2)診療X線技師、または診療X線技師試験を受けることができる者で、文部科学大臣が指定した学校、または厚生労働大臣が指定した診療放射線技師養成所において1年以上、診療放射線技師として必要な知識および技能を修得した者、(3)外国の診療放射線技師に関する学校もしくは養成所を卒業し、または外国で診療放射線技師免許に相当する免許を受けた者で、厚生労働大臣が(1)に掲げる者と同等以上の学力および技能を有するものと認めた者、となっている。
[吉田安雄]
略して放射線技師ともいう。診療放射線技師とは厚生大臣の免許を受けて,病院,各種医療機関,保健,福祉機関において,医師または歯科医師の指示の下に,放射線を人体に対して照射(画像診断,治療のため)することと磁気や超音波を用いて検査することを業とする者で,医療および公衆衛生の普及および向上に寄与することを目的にしている。特に放射線は人体の内部構造の検査や癌などの治療に有効な手段であるが,利用を誤れば放射線障害をひきおこす可能性もあるため,人体に対して放射線を照射することができるのは,医師,歯科医師と診療放射線技師のみに限られている。1951年に制定された診療エックス線技師法を基に,1968年にX線のみならず,α線,β線をはじめとする放射線を医療(診断,治療)に用いるために診療放射線技師法として発足した。さらに1993年磁気共鳴画像診断装置や超音波診断装置,眼底カメラの検査業務を範囲に入れた。診療放射線技師の資格を得るには国の指定した大学,短大等において3年以上必要な知識および技能の修習を終え国家試験を受ける。診療放射線技師養成施設数38施設。診療放射線技師数約4万人。1997年現在。診療エックス線技師は同法の廃止により,ごくわずか存在するのみである。
執筆者:金場 敏憲+蜂屋 順一
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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