診療行為に伴う医原性疾患

内科学 第10版の解説

診療行為に伴う医原性疾患(医原性疾患)

 病院内で発生する影響度3b以上の重症な医原性疾患では,主として医師の診療中に発生するものが約8割を占め,医師以外の業務(検体取り違えなど),または療養生活中(転倒転落や点滴トラブルなど)に比較して圧倒的に多い.それゆえ,医師が行う診療行為には将来に向けてなお改善の余地がある.また,医原性疾患が発生したときに,早期診断と早期治療(リカバリー)を実現することが可能なチーム編成で,診療に臨まなければならない.
(1)診断と治療の過程で発生する医原性疾患
 医師が行う診療行為は,診断と治療に大別される(表16-3-9).まず,診断の過程で発生する,誤診,診断の遅れ,説明の不足などは,重大な疾病に対する治療機会を失うことにつながる.疾病の増悪は,必ずしも医師の不作為のみによって生じるものではないが,医師に対する国民の期待が大きいことを念頭におき,これも医原性疾患の一型と医師は心得るべきであろう. 診療行為のうち,治療の過程で発生するものは,病院診療において最も注目すべき医原性疾患である.重症な医原性疾患の多くは医師が手術や「手術以外の侵襲的治療行為」を行っているときに発生している(図16-3-1).
(2)手術以外の侵襲的治療行為によって発生する医原性疾患
 手術以外の侵襲的治療行為のうち,重症(3b以上)の医原性疾患を特に引き起こしやすい行為は,①穿刺(特に胸腔穿刺や深部静脈穿刺),②カテーテル治療,③消化管内視鏡による治療,④化学療法,⑤人工呼吸療法(特に気管切開管理)などである(図16-3-2).これらの侵襲的治療行為によって発生する医原性疾患には,①循環障害(出血・梗塞),②臓器障害(気胸,神経障害など),③感染,その他(人工呼吸の不具合など)がある(図16-3-3).いずれも致命的疾患であり迅速で的確な救急対応を必要とする.このうち,広範な診療科において実施される,穿刺,人工呼吸療法などをハイリスク一般的医療行為とよぶ(表16-3-10).ハイリスク一般的医療行為は,研修医がはじめに挑戦する関門であることが多い.
(3)診療行為に伴う医原性疾患の予防と対策
a.インフォームドコンセント
 侵襲的治療行為を行うときには,発生する可能性のある医原性疾患,すなわち,①出血・梗塞などの循環障害,②臓器障害,特に気胸や神経障害,③感染,その他(事故抜管など人工呼吸の不具合)を,インフォームドコンセントのなかで整理し,説明して患者の期待を適正化する.
b.ハイリスク一般的医療行為の質の管理
 ハイリスク一般的医療行為の多くは複数の診療科において行われ,おもな実施者は研修医やレジデントである.ゆえに,ハイリスク一般的医療行為が関連する事故の再発防止策は,個々の診療科に任せるのではなく,病院で統一した手順を作成し,診療科をこえて共有できる指導者を育成するなど,病院全体で研修医やレジデントをサポートする体制が必要であると考えられる. 特定の専門診療科が行う,ハイリスク専門的医療行為(カテーテル治療,消化管内視鏡による治療,化学療法など)が関連する事故に関する対策は,それぞれの専門書に譲る.
c.新しい診療行為に立ち向かう態度
 医療は進歩し続け,日々,新しい診療行為が生まれている.新しい診療行為の危険性について当初はすべてが判明していないことが通常である.職員・組織・病院それぞれが,インシデントの把握・対応・再発防止に取り組み,安全管理・危機管理・品質管理を確立させる必要がある.すべての医療従事者および医療安全を担当する者は,このようなシステムを構築・維持・活性化させ,新しい診療行為が少しでも安全に患者に応用できるよう,完成に向けて努力する必要がある.[本間 覚]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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