自己もしくは他人の刑事事件の捜査もしくは審判に必要な知識を有すると認められる者またはその親族に対し、当該事件に関し、正当な理由がないのに面会を強請し、または強談威迫(ごうだんいはく)する罪で、1年以下の懲役または20万円以下の罰金に処せられる(刑法105条の2)。
本罪は、1958年(昭和33)の刑法一部改正により、いわゆる「お礼参り」を抑止する目的で新設されたものであり、国の刑事司法の安全を保護するとともに、刑事事件の証人・参考人またはその親族らの平穏な私生活を保護するための罪でもある。本罪において「刑事事件」とは、公訴提起により現に被告事件となっているもののほか、被疑事件や将来被疑事件となりうるものも含まれるか争いがあるが、法文中に「捜査」という用語が用いられていることを根拠として、これらを含むと解するのが通説・判例である。また、「捜査もしくは審判に必要な知識を有すると認められる者」とは、犯罪の成否や情状に関する知識のほか、捜査や審判に必要なすべての知識をも含むから、たとえば、犯行の現場に居合わせた者やその目撃者はもとよりのこと、現に証人・参考人・鑑定人として裁判所に喚問され、捜査機関により取調べを受けている者のほか、将来それらの可能性がある者でもよい、とされている。なお、裁判や審判の確定前でなければならないが、当該事件につき再審が申し立てられている場合には、再審の判決が確定するまでは、本罪の客体となりうる。
本罪では、前記の者またはその親族に対し、故なく面会を強請したり強談威迫することを要する。「面会を強請」するとは、面会の意思がないのに、相手方にこれを強要することであり、「強談威迫」するとは、相手方に対し、ことばで自らの要求に応ずるよう強く迫ること、または、ことばや態度により気勢を示し、相手方に不安や困惑の念を生じさせることをいう。
[名和鐵郎]
自己もしくは他人の刑事被告事件の捜査・審判に必要な知識をもっていると認められる者またはその親族に対して,当該事件に関しゆえなく面会を強請したり,または強談威迫の行為をする罪。刑は1年以下の懲役または20万円以下の罰金(刑法105条の2)。強談等によって証人等の供述に影響を与えようとする行為,いわゆる〈お礼参り〉を取り締まり,裁判の適正と証人の保護を期すために,1958年に刑法の一部改正によって新設された罪。ここでいう刑事被告事件には,将来刑事被告事件となりうるものも含む。ゆえなく面会を強請するとは,正当な理由がないのに相手方の承諾なしに面会を要求することをいう。強談とは,相手方に対して言語をもって強いて自己の要求に応じるように迫ることをいい,威迫とは,相手方に対して言語・動作をもって気勢を示し,不安・困惑の念を生じさせることをいう。
執筆者:大越 義久
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