詩人玉屑(読み)しじんぎょくせつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「詩人玉屑」の意味・わかりやすい解説

詩人玉屑
しじんぎょくせつ

中国南宋(なんそう)末の魏慶之(ぎけいし)が編纂(へんさん)した詩学書。21巻。詩の格律、修辞など作詩の理論、および『詩経』から宋(そう)に至る歴代の詩あるいは詩人についての論評逸話などを、広く諸書から集めて項目別に分類する。掲載の各条は出典が注記されており、大部分は南宋人の著述である。ほぼ同時期の胡仔(こし)の『苕渓漁隠叢話(ちょうけいぎょいんそうわ)』とともに、宋代詩話の代表的な書物として読まれてきた。中国に伝わる明(みん)刊本は二十巻本で欠落があるが、日本で刊行された二十一巻本がもとの宋本の内容を伝えている。寛永(かんえい)年間(1624~44)の刊本が一般に通行し、1957年には中国でそれに基づく活字本が出版された。

[佐藤 保]

『『和刻本漢籍随筆集17 詩人玉屑』(1977・汲古書院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「詩人玉屑」の意味・わかりやすい解説

詩人玉屑 (しじんぎょくせつ)

漢詩論。魏慶之(ぎけいし)撰。中国宋代の成立。20巻本また21巻本がある。漢詩の本質技法用語古代から宋代に至るまでの詩史など,詩を学ぶ者が心得ておくべきことがらについて,既存の詩論書から適当な部分を抄出し,編集した書。日本では五山版のあと江戸初期にも出版され,多くの詩論書の重要部分が抜粋されている点が便利なので広く行われた。石川丈山などの江戸初期の漢詩人から,さらには蕉風俳論にまで影響を与えている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「詩人玉屑」の意味・わかりやすい解説

詩人玉屑
しじんぎょくせつ
Shi-ren yu-xie

中国の詩話集。南宋の魏慶之の編。 20巻。詩弁,詩法など 56の項目を設け,主として南宋の諸家の詩に関する評論を抜粋して,配列したもの。日本でも,室町時代から江戸時代初期にかけて,漢詩人たちに作詩の指針として広く読まれた。

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世界大百科事典(旧版)内の詩人玉屑の言及

【詩話】より

… 詩話にはさまざまの形態が生まれた。まず,著と編に分けるならば,《六一居士詩話》を始めとする純然たる自著がもとより多数であるが,詩人・文人が詩について語ったことばを,その著作から第三者が抜粋,編集したもの,たとえば元代の陳秀民の手に成る《東坡詩話》,さらに過去のさまざまの詩話の内容を,みずからの意図するところに従って集成改編した場合として,南宋初に胡仔(こし)の《漁隠叢話》前集60巻・後集40巻があり,南宋末には魏慶之の《詩人玉屑(ぎよくせつ)》21巻がある。つぎに,時間的と空間的とに分けるならば,ある一時代の作品・作者に話題を限定したものとして,宋の計有功の《唐詩紀事》81巻,清の厲鶚(れいがく)・馬曰琯(ばえつかん)共編の《宋詩紀事》100巻がある。…

※「詩人玉屑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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