釈迦の降誕の姿をあらわす仏像で,灌仏会(かんぶつえ)(花まつり)の本尊である。釈迦は生まれてすぐ四方に7歩ずつ歩み,右手で天,左手で地を指さし,〈天上天下唯我独尊〉(わたくしは世の中の最勝者である)といったと伝える。その姿を銅造でかたどったものが誕生仏で,その多くは上半身を裸形,下半身に裙(くん)をまとい,灌仏盤中に立つ。誕生仏の異形として左手で天,右手で地を指さすものがあり,また木造の誕生仏もある。釈迦の生誕は前5~6世紀といい,生誕地はネパールのタラーイー地方ルンビニーである。父はシャキャ族(釈迦族)の王シュッドーダナ,母はマーヤー夫人。白象が夫人の胎内に入るのを夢にみて懐妊し,月が満ちて出産のため郷里に帰る途中,ルンビニーの花園でアショーカ樹の花咲く小枝を手折ろうとしたとき釈迦を出産した。ときに竜神は甘露の雨を降らしたという。これらの情景はインドでも石造の浮彫像などにさかんに造形された。日本では4月8日に灌仏会が行われ,小さな仏像に甘茶をかけて祝うのは,釈迦出誕時の故事にちなむものである。誕生仏の作例は多く,飛鳥末期からみられ,大小さまざまであるが,東大寺にのこる誕生仏と灌仏盤とは代表的な作例である。また法隆寺献納宝物(東京国立博物館)の摩耶夫人(まやぶにん)と天女像は,日本で造られた釈迦誕生の物語を示す珍重すべき作品である。
執筆者:光森 正士
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誕生釈迦仏(しゃかぶつ)の略で、釈迦降誕の姿を表した像。釈迦は紀元前6世紀ないし5世紀の4月8日の朝、ルンビニー園の無憂樹の下で花をとろうとして右手をあげた母マーヤー夫人のわきの下から生まれ、7歩あるいて右手で天を、左手で地をさして獅子吼(ししく)したといわれ、この天地をさす姿を像にしたのが、一般に誕生仏と称されるものである。毎年4月8日の灌仏会(かんぶつえ)・仏生会(ぶっしょうえ)(花祭り)の本尊として灌仏盤の中心に安置し甘茶を注ぐのは、誕生のとき竜王が香水(こうずい)を供養したとの故事による。現存の像では東大寺、善水寺、悟真寺(ごしんじ)など8世紀の像が有名。また京都大報恩寺の像は鎌倉時代の作例として貴重である。そのほか、マーヤー夫人のわきの下から生まれようとする瞬間を、付き従う侍女(釈迦を賛嘆する竜王、あるいは天人ともいう)や無憂樹とともに表した像(現存するものでは法隆寺献納宝物、東京国立博物館蔵)もある。
[佐藤昭夫]
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