語らう(読み)カタラウ

デジタル大辞泉 「語らう」の意味・読み・例文・類語

かたら・う〔かたらふ〕【語らう】

[動ワ五(ハ四)]《動詞「かた(語)る」の未然形反復継続の助動詞「ふ」から》
話し合う。むつまじく語り合う。「友と―・うひととき」
説得して味方にする。仲間に引き入れる。
浪士等数百名を―・い」〈染崎延房・近世紀聞〉
じょうずに頼み込む。言いくるめる。
陰陽師おんやうじを―・ひて」〈宇治拾遺・二〉
親しく交際する。
「おのづから女房と―・ひ」〈大鏡伊尹
男女が言い交わす。男女の関係を持つ。契る。
みそかに―・ふわざもせざりければ」〈伊勢・六四〉
鳴く。
郭公ほととぎす―・ふ方や山のはに村雨過ぎて月ぞほのめく」〈玉葉集
[可能]かたらえる
[類語]話し合う対話話す語り合う談ずる懇談する面談するはか持ち掛ける掛け合う

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「語らう」の意味・読み・例文・類語

かたら‐・う‥ふ【語う】

  1. [ 1 ] 〘 連語 〙 ( 動詞「かたる(語)」の未然形に、反復・継続を表わす助動詞「ふ」の付いたもの ) 語りつづける。繰り返し話をする。
    1. [初出の実例]「鳰鳥(にほどり)の 二人並び居 加多良比(カタラヒ)し 心そむきて 家離(ざか)りいます」(出典:万葉集(8C後)五・七九四)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ワ行五(ハ四) 〙 ( [ 一 ]の「ふ」が接尾語化したもの )
    1. 心に思っていることを、口に出して相手に伝える。語る。また、相談する。
      1. [初出の実例]「余人は聞き知ら不。唯し仏のみ聞き知りたまひて、倶に談(カタラヒ)給ひ」(出典:東大寺諷誦文平安初期点(830頃))
    2. 親しく交際する。
      1. [初出の実例]「思ひわびて、ねむごろに相かたらひける友だちのもとに」(出典:伊勢物語(10C前)一六)
    3. 夫婦の約束をする。また婉曲に、情交することをいう。ちぎる。
      1. [初出の実例]「そこなりけるうなゐを、右京の大夫よびいでてかたらひて、あしたによみておこせたりける」(出典:大和物語(947‐957頃)三九)
    4. 他人を説得して仲間に引き入れる。味方にする。
      1. [初出の実例]「今一度はえあるまじき事にやと、小君をかたらひ給へど」(出典:源氏物語(1001‐14頃)夕顔)
      2. 「興福園城両寺は鬱憤をふくめる折節なれば、かたらふ共よもなびかじ」(出典:平家物語(13C前)七)
    5. ( から転じて ) 話し合う。したしく語り合う。「水入らずでかたらう」
      1. [初出の実例]「あはれな花びらながれ をみなごに花びらながれ をみなごしめやかに語らひあゆみ」(出典:測量船(1930)〈三好達治〉甃のうへ)
  3. [ 3 ] 〘 自動詞 ハ行四段活用 〙 ( 鳥を擬人化した表現 ) 鳴く。
    1. [初出の実例]「ほととぎすかたらふ声はそれなれどあなおぼつかなさみだれの空」(出典:青表紙一本源氏(1001‐14頃)花散里)
    2. 「山ほととぎすも里なれてかたらふに」(出典:堤中納言物語(11C中‐13C頃)逢坂越えぬ権中納言)

語らうの語誌

[ 二 ]の例は上代にはほとんど見えず、平安時代以降多用され、「語る」に比して親密な人間同士でより具体的な内容を話題にした行為を表わす。聞き手の返事を伴わず、会話がなされていない例もあり、現代の相互的な発言行為の「語り合う」と必ずしも重ならない。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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