課口(読み)カコウ

デジタル大辞泉 「課口」の意味・読み・例文・類語

か‐こう〔クワ‐〕【課口】

律令制で、調ちょうよう雑徭ぞうようを負担する者。17歳以上の男子で、正丁せいてい老丁中男ちゅうなん残疾ざんしつの4種がある。課丁かてい・かちょう

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精選版 日本国語大辞典 「課口」の意味・読み・例文・類語

か‐こう クヮ‥【課口】

〘名〙 令制で、租・庸・調のうち課役すなわち人身課税である調・庸を負担する者。男子のうち正丁(二一歳以上)、老丁(六一歳以上)、残疾(不具または罹病)、中男(一七歳以上)の四種がこれに該当する。皇親、八位以上、少男(一六歳以下)、蔭子、耆(六六歳以上)、廃疾篤疾、および女子、家人奴婢は不課口である。→課戸(かこ)
令義解(718)戸「戸内有課口者。為課戸。無課口者。為不課戸

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「課口」の意味・わかりやすい解説

課口
かこう

律令制(りつりょうせい)下において、課役(かえき)負担の義務をもった者。課丁ともいい、課役を負担しない者を不課口(ふかこう)という。戸籍(こせき)、計帳(けいちょう)に戸口名を列挙するが、その戸口が課役の負担義務を有する課口か、そうでない不課口であるか、戸内における課口数、不課口数を記している。課口は、大宝令(たいほうりょう)によると正丁(せいてい)(21~60歳)、老丁(61~65歳)、少丁のち中男(ちゅうなん)(17~20歳)および残疾(障害または罹病(りびょう)の男子)の4種の総称で、老丁、残疾を正丁に対して次丁(じてい)という。次丁は正丁の課役の半分を、中男は調(ちょう)、雑徭(ぞうよう)を次丁の半分負担した。ただし京畿(けいき)内の正丁は庸(よう)を免除、調は諸国正丁の半分とした。このため、のち畿外から畿内へ移住を願う者が続出した。757年(天平宝字1)中男、正丁の年齢を各1年引き上げ、翌年老丁の年齢を1年引き下げて負担を軽減した。

 なお不課口は、前記の課口以外の男子やすべての女子、三位(さんみ)以上の父祖、兄弟子孫、五位以上の父子、勲八等以上、舎人(とねり)・史生(ししょう)など、特定の官職・身分を得て課役を免除される者もある。課役を忌避するため、戸籍、計帳に課口を不課口と偽ることが行われ、9世紀なかば以降、課口1に対し不課口10という戸籍などが提出されたというが、実際に902年(延喜2)の年紀をもつ阿波(あわ)国戸籍はそれを裏づけている。

[米田雄介]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「課口」の解説

課口
かこう

律令制用語。課役の全部または一部を負担する戸口。課役負担対象の正丁(せいてい)・次丁・中男(ちゅうなん)のうち,戸令に基本的身分として不課とされる皇親・八位以上・蔭子(おんし)・癈疾・篤疾を除いた者をさす。なお賦役令によれば帰化人や他国から帰還した者,孝子・順孫,および舎人(とねり)・史生(ししょう)など雑任役についた場合も課役を免除されるが,これらは身分としては課口であり,特定の状態で課役が免除される見不輸(げんふゆ)である。実際は舎人や兵衛などを不課としたことが計帳にみえ,混同がある。日本では課戸よりも課口数に関心が強く,里も課口数の基準が作られたが,これは課口数と直結する調庸数の維持・確保が地方支配で最も重視されたためであろう。課口数の増減は,国司や郡司の勤務評定の重要な資料とされた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「課口」の意味・わかりやすい解説

課口
かこう

課丁ともいう。令制の税制上,課役負担能力をもつもの。皇親など負担義務のないものを不課口といった。課口は男子で,これには正丁 (21~60歳) ,老丁 (61~65歳) ,残疾 (身体障害者,病人) ,中男 (17~20歳) があり,老丁と残疾を次丁といい,正丁は調,庸,雑徭 (ぞうよう) ,調の副物の全部を負担し,次丁は調,庸,雑徭を正丁の半分,中男は調,雑徭を4分の1負担した。 (→課戸 )

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普及版 字通 「課口」の読み・字形・画数・意味

【課口】かこう

課丁。

字通「課」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の課口の言及

【課戸】より

…中国,隋・唐時代の律令制下において,課役(かえき)を負担する者を課口,負担せぬ者を不課口と定めたが,1人でも課口のいる家を課戸と呼び,公課徴収の対象として重視された。当代は官人や商人,僧侶道士,賤民はみな不課とされたので,農民を主体とする障害のない男子正丁(21~59歳,時代により若干変動)のいる戸に限られた。…

【蠲免】より

…古代の律令制において,課役(かえき)を免除すること。律令では課役の全部もしくは一部を負担するものを課口(課丁(かてい))とよんだ。課口は一般には良民の成年男子(17歳以上65歳以下)であったが,そのなかでも,皇親と八位以上の者,五位以上の者の子(蔭子(おんし)),中度以上の身体障害者(廃疾(はいしつ)・篤疾(とくしつ))は課役を負担しない不課口とされた。…

※「課口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」