律令制(りつりょうせい)下において、課役(かえき)負担の義務をもった者。課丁ともいい、課役を負担しない者を不課口(ふかこう)という。戸籍(こせき)、計帳(けいちょう)に戸口名を列挙するが、その戸口が課役の負担義務を有する課口か、そうでない不課口であるか、戸内における課口数、不課口数を記している。課口は、大宝令(たいほうりょう)によると正丁(せいてい)(21~60歳)、老丁(61~65歳)、少丁のち中男(ちゅうなん)(17~20歳)および残疾(障害または罹病(りびょう)の男子)の4種の総称で、老丁、残疾を正丁に対して次丁(じてい)という。次丁は正丁の課役の半分を、中男は調(ちょう)、雑徭(ぞうよう)を次丁の半分負担した。ただし京畿(けいき)内の正丁は庸(よう)を免除、調は諸国正丁の半分とした。このため、のち畿外から畿内へ移住を願う者が続出した。757年(天平宝字1)中男、正丁の年齢を各1年引き上げ、翌年老丁の年齢を1年引き下げて負担を軽減した。
なお不課口は、前記の課口以外の男子やすべての女子、三位(さんみ)以上の父祖、兄弟、子孫、五位以上の父子、勲八等以上、舎人(とねり)・史生(ししょう)など、特定の官職・身分を得て課役を免除される者もある。課役を忌避するため、戸籍、計帳に課口を不課口と偽ることが行われ、9世紀なかば以降、課口1に対し不課口10という戸籍などが提出されたというが、実際に902年(延喜2)の年紀をもつ阿波(あわ)国戸籍はそれを裏づけている。
[米田雄介]
律令制用語。課役の全部または一部を負担する戸口。課役負担対象の正丁(せいてい)・次丁・中男(ちゅうなん)のうち,戸令に基本的身分として不課とされる皇親・八位以上・蔭子(おんし)・癈疾・篤疾を除いた者をさす。なお賦役令によれば帰化人や他国から帰還した者,孝子・順孫,および舎人(とねり)・史生(ししょう)など雑任役についた場合も課役を免除されるが,これらは身分としては課口であり,特定の状態で課役が免除される見不輸(げんふゆ)である。実際は舎人や兵衛などを不課としたことが計帳にみえ,混同がある。日本では課戸よりも課口数に関心が強く,里も課口数の基準が作られたが,これは課口数と直結する調庸数の維持・確保が地方支配で最も重視されたためであろう。課口数の増減は,国司や郡司の勤務評定の重要な資料とされた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…中国,隋・唐時代の律令制下において,課役(かえき)を負担する者を課口,負担せぬ者を不課口と定めたが,1人でも課口のいる家を課戸と呼び,公課徴収の対象として重視された。当代は官人や商人,僧侶道士,賤民はみな不課とされたので,農民を主体とする障害のない男子正丁(21~59歳,時代により若干変動)のいる戸に限られた。…
…古代の律令制において,課役(かえき)を免除すること。律令では課役の全部もしくは一部を負担するものを課口(課丁(かてい))とよんだ。課口は一般には良民の成年男子(17歳以上65歳以下)であったが,そのなかでも,皇親と八位以上の者,五位以上の者の子(蔭子(おんし)),中度以上の身体障害者(廃疾(はいしつ)・篤疾(とくしつ))は課役を負担しない不課口とされた。…
※「課口」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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