古代の律令において,課役(かえき)を負担する丁男をさす用語。律令では21歳から60歳までの男子を正丁とし,正丁に対して課役を賦課するのを賦役制度の基本とした。また61歳から65歳の男子を老丁,17歳から20歳までの男子を中男(大宝令では少丁)とし,老丁は残疾(21~60歳の軽度の身体障害者)とともに次丁とされ,正丁の課役の量の2分の1を課せられ,中男は正丁の4分の1を課せられた。したがって,正丁数に換算された課丁数を確保することが,律令国家の財政の基本となり,課丁数の増減は国司や郡司の勤務評定の重要なデータとされた。三善清行の有名な《意見十二箇条》でも,660年(斉明6)には2万の軍士を徴発したという地名説話をもつ備中国下道郡邇磨(にま)郷の課丁数が,天平神護年中(765ころ)には1900余人に,貞観の初め(860ころ)には70余人に,893年(寛平5)には老丁2人・正丁4人・中男3人に減じ,911年(延喜11)にはついに0となっていることを例にあげて,国家財政の危機をうったえている。
→蠲免(けんめん)
執筆者:吉田 孝
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