衆議院と参議院がそれぞれ自主的に定める立法をいう。衆議院規則と参議院規則がこれにあたる(いずれも1947年議決)。憲法はこの立法につき,対象を,議院の会議その他の手続および内部の規律に関する事項と明記して,保障している(58条2項)。明治憲法は議院規則につき,議院の内部整理に必要な規則を,憲法と議院法が定めるものは除いて制定できるとしていた(51条)から,議院に関する立法形式として,憲法と規則の間に議院法という法律が保障されていた。しかし,日本国憲法では,議院の議事手続や内部規律を法律事項とするような一般的規定はなく,国会関係では,議員の選挙,議員の歳費,不逮捕特権,弾劾裁判所の弾劾に関する事項が法律事項とされているほか,法律案の議決,予算の議決,条約の承認および内閣総理大臣の指名などのそれぞれに関する両議院の協議会を法律事項としているにとどまる。もっとも,両院協議会に関する立法は,両院おのおのの議決でなされており(両院協議会規程),法律形式を採っていない。このように,本来,議院の組織,作用に関する事項は,両院関係について憲法の明示するものを除き,議院規則の所管事項と考えるのが筋であるが,実際には,国会法(1947公布)という法律があって,各議院の役員人事から,各議院の議員の活動,委員会,会議,議員の質問,議員の秩序維持,議員の懲罰等にいたるまで定めており,議院規則はその細目規定として,議院の活動全般にわたっており,国会法の下位に位置づけられている。議院規則が,議院の議事運営,内部規律に関する主要立法であることは,憲法上明らかなはずであるから,両議院関係をはじめ両議院に共通する大綱的な事柄は法律で定めるとしても,他はすべて議院が独自に制定できる規則にゆだねるべきである。憲法と議院規則の間に原則として法律の存在を予想しない制度を採用している主要な国は,イギリスとアメリカである。なお,議院規則は,法律なみの公布が必要とされていないが,傍聴等国民とかかわる規定も含んでいる。
執筆者:清水 睦
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議院の自律権を確保するため、憲法(議院規則制定権―58条2項)によって認められた法形式の総称。具体的には衆議院規則、参議院規則のほか、両院協議会規程、常任委員会合同審査会規程、衆議院傍聴規則、参議院傍聴規則などがある。
欧米の多くの国では、議院規則で議院の組織運営を定めるが、日本では、明治憲法以来、憲法と議院規則との間に法律(国会法・議院法)が介在し、議院規則を法律の細則規程にとどめている。
議院規則は、その効力を院外には及ぼさないが、院内では議員のほか国務大臣、証人、参考人、傍聴人なども拘束するため、官報に掲載して公示されている。
[佐々木髙雄]
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…これは国会で左右できない立法である。さらに,国会の意思の枠内の立法でも,国会が関与しない例として,委任立法(73条6号参照),最高裁判所規則(77条),議院規則(58条2項),地方公共団体の条例(94条)があげられる。また法律についても,立法手続全体(発案から公布まで)を国会がとりしきるわけではない。…
…
[国会以外の公的機関による立法]
国会以外の公的機関も,一般的には法律の範囲内で立法が認められている。両議院はそれぞれ議院規則を定めうる(憲法58条2項)し,内閣は政令(73条6号),大臣は命令について(国家行政組織法12条)それぞれ立法権を有する。また,最高裁判所は,裁判に関連した事務処理,裁判所の内部規律等について規則を定めることができる(裁判所規則。…
※「議院規則」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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