衆議院が解散されてから,総選挙を経て新しい国会が召集されるまで最長70日あるが(憲法54条1項),この間,国会が処理すべき緊急の問題が生じたときは,内閣の召集した参議院が措置をとる(54条2項)。衆議院解散後,参議院は本来閉会になるわけだから,このような参議院の集会はまさに例外的であり,緊急集会と呼ばれる。明治憲法では,緊急事態について天皇の勅令によって措置が講ぜられた(8条の緊急勅令,70条の緊急財政処分等)。日本国憲法は政府による緊急制度を否定し,国会段階での緊急集会制度をとったが,このような制度は外国には例がない。緊急集会の必要性は政府の判断によるが,緊急の必要がある場合としては,治安上,防衛上の問題と,それ以外で,憲法および法律により,国会の行為をまって措置すべき人事,財政措置などについて考えられる。実例としては,1952年,最高裁判所裁判官の国民審査を行うべき中央選挙管理会の委員および予備員の国会指名がなされないうちに衆議院が解散され,総選挙で上記国民審査がなされることになった場合があり,53年には,本予算が成立しないうちに衆議院が解散され,2ヵ月分の暫定予算等を措置した場合がある。なお,内閣総理大臣による自衛隊の治安出動命令は,緊急集会を必要としない(自衛隊法78条2項)。緊急集会では参議院は国会の権能を行使し,議員も会期中と同様の権能を有するが,改憲の発議や人権に重大な制約を課すような立法,条約の承認等は許されないと考えられる。この集会の措置は,次の国会開会後10日以内に衆議院の同意がないと効力を失う(憲法54条3項)。なお国家緊急権は,憲法上の手続によらず,緊急時に国家の生存を確保するため権力を発動する場合であり,憲法上の制度である緊急集会とは基本的に区別すべきものである。
執筆者:清水 睦
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衆議院の解散と同時に参議院は閉会となるが、国に緊急の必要があるとき、内閣は参議院に緊急の集会を求めることができる。これを緊急集会という(憲法54条)。やむをえず開かれた応急・変則的な集会であるから、次の国会開会後10日以内に衆議院の同意を得なければならない。同意がなければ、緊急集会でとられた措置は効力を失う(憲法54条3項)。日本国憲法施行後、緊急集会は二度(1952年、53年)開かれているが、いずれも緊急事態におけるものではなく、法律・予算の施行・執行上の必要から開かれたものであった。
[池田政章]
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