護命(読み)ごみょう

精選版 日本国語大辞典 「護命」の意味・読み・例文・類語

ごみょうゴミャウ【護命】

  1. 平安初期の法相宗の僧。姓は秦氏美濃の人。大和元興寺の万燿や勝虞に学び、山田寺梵釈寺に住んで、僧正に進む。「大乗法相研神章」を著わして教理を宣揚し、最澄と対立した。天平勝宝八~承和元年(七五六‐八三四

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「護命」の意味・わかりやすい解説

護命
ごみょう
(750―834)

平安初期の法相(ほっそう)宗の学僧。美濃(みの)(岐阜県)各務(かがみ)郡の人。俗姓は秦(はた)氏。10歳で同国国分寺の道興(どうこう)(生没年不詳)に就学、15歳のとき奈良元興寺(がんごうじ)の万耀(まんよう)に就いて得度した。同寺の勝虞(しょうご)(732―811)に法相を学び、月の上半は吉野山で苦行し、下半は本寺で宗旨を研精したという。806年(大同1)に律師、808年に維摩会(ゆいまえ)講師、ついで少僧都(しょうそうず)に任じ、815年(弘仁6)に大僧都に進んだ。819年最澄(さいちょう)が比叡山(ひえいざん)に大乗戒壇(だいじょうかいだん)を建立しようとしたとき、彼は南都の僧綱(そうごう)を代表してその非を論じた。823年僧綱を辞して梵釈寺(ぼんしゃくじ)に退隠したが、827年(天長4)僧正(そうじょう)に復位、承和(じょうわ)元年9月11日元興寺小塔院に寂した。天長(てんちょう)六宗書の一つである『大乗法相研神章』5巻など著述は多い。

[薗田香融 2017年7月19日]

『富貴原章信著『日本唯識思想史』(1944・大雅堂)』

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改訂新版 世界大百科事典 「護命」の意味・わかりやすい解説

護命 (ごみょう)
生没年:750-834(天平勝宝2-承和1)

平安前期の法相宗の僧。美濃国各務郡の秦氏の出身。10歳で同国国分寺に学び,15歳で平城京に上り元興寺万耀に師事し,また吉野山で山林修行した。16歳で得度後は,勝虞に師事し,月の上半は深山で虚空蔵法を修し,月の下半は寺で宗旨を研鑽した。798年(延暦17)威儀師となり,805年大極殿で最勝王経を講じ,桓武天皇に戒を授けた。816年(弘仁7)大僧都となり,その後最澄の大乗戒壇設立の奏請に対して南都側として激しく反論した。《大乗法相研神章》ほか多くの著述があり,827年(天長4)には僧正に任ぜられた。なお護命は喫飲中や唯識論を論じているときに仏舎利を一粒得たと伝えられている。
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朝日日本歴史人物事典 「護命」の解説

護命

没年:承和1.9.11(834.10.16)
生年:天平勝宝2(750)
平安初期の僧。美濃国各務郡(岐阜県各務原市周辺)の生まれ。俗姓秦氏。15歳で吉野山(比蘇山寺)で修行し,17歳で得度,元興寺勝虞に師事,月の前半は山林修行,後半は寺で法相教学を研鑽するという生活を続けた。少僧都,大僧都と進み,弘仁10(819)年,最澄の比叡山での大乗戒壇設立運動に対して南都仏教を代表し反対した。大乗戒壇の設立が許可されると離任を望んだが許されず,山田寺に居した。のちに僧正。元興寺の法相教学の中心人物で,門下に延祥,泰演らがおり南都仏教を代表する学僧である。山林修行を積極的に行ったことでも著名。<参考文献>家永三郎監修『日本仏教史』1巻

(鷺森浩幸)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「護命」の解説

護命 ごみょう

750-834 奈良-平安時代前期の僧。
天平勝宝(てんぴょうしょうほう)2年生まれ。法相(ほっそう)宗。美濃(みの)(岐阜県)の人。奈良元興(がんごう)寺の勝虞(しょうぐ)らにまなぶ。比叡(ひえい)山に大乗戒壇を設立しようとする最澄(さいちょう)と論争を展開,設立が勅許となると一時山田寺に隠棲(いんせい)する。天長4年(827)僧正。法相宗きっての学僧といわれた。承和(じょうわ)元年9月11日死去。85歳。俗姓は秦。著作に「大乗法相研神章」など。

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世界大百科事典(旧版)内の護命の言及

【豊安】より

…816年(弘仁7)律師に任ぜられた。最澄の大乗戒壇独立運動に反対して819年〈僧統表〉を護命(ごみよう)らとともに提出した。830年(天長7)には淳和天皇の各宗教義提出の勅を承け,日本最初の律宗綱要書《戒律伝来宗旨問答》を著した。…

※「護命」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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