女性の性行為の自由を奪うために,女性の性器を閉鎖する装置。複雑な構造の錠前で開閉するしかけになっており,〈ビーナスの帯〉などとも呼ばれた。この錠前の鍵は夫が所持し,ときには女性の情夫,処女の母親が保管するような場合もあった。処女の場合,新婚の初夜に娘の母親が花婿にその鍵を渡し,それ以後は花婿が鍵の保管者となる風習がヨーロッパの一部で見られた。
その起源については諸説あるが,代表的なものは,中世の騎士社会で十字軍の一員として戦いに遠征する夫たちが妻の浮気や他人からの暴行を防ぐために作ったという説,いま一つはルネサンスによる愛情行為や性の解放による官能の自由な表現と性の乱れが誘因となって貞操帯が普及したという説である。これらの説は,いずれも確かではないが,明らかなことは,現存するヨーロッパ各地の貞操帯はほとんど16世紀から17世紀のものであるということである。材料には高価なものが用いられ,たいていは銀製品だが,ときには金製品もあった。それぞれに美しい彫刻がほどこされ,螺鈿(らでん)がちりばめられるなど手のこんだものが多く,それによって貞操帯が使用された社会層がわかる。文学的作品に記述された貞操帯に関する多くの事情からも,これがかなり広く公の慣習として存在したことがわかるが,だいたいにおいて上層の有産支配階級,つまり富裕な大商人と,専制君主とそれにつらなる貴族階級の所産であって,庶民社会にはそれほど普及しなかった。
執筆者:野口 武徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
妻あるいは愛人の純潔を求めて、他の男性との性交渉を不可能にするために施した錠前付きの金属製バンド。一般にはgirdles of chastityとよばれるが、ビーナス帯とも、イタリアのベルガモ地方でおもに生産されたところからベルガモ式錠ともいわれる。12世紀ごろヨーロッパで発明され、十字軍の将兵が長期の遠征に際し故国に残す妻や愛人に用いたというが、ルネサンス期に発明されたという説もあり、貞操帯の製造職人はひそかに合い鍵(かぎ)をつくって当の女性に売りつけたという。日本でも江戸時代に類似のものがみられたが、現在は西洋・東洋ともに一部の性倒錯者たちが享楽的に用いているにすぎない。
[佐藤農人]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新