貞操帯(読み)テイソウタイ

デジタル大辞泉 「貞操帯」の意味・読み・例文・類語

ていそう‐たい〔テイサウ‐〕【貞操帯】

女性貞操を保たせるための、かぎのついた金属製の器具中世ヨーロッパ十字軍騎士が、長期間留守にするときなどに妻や愛人に使わせたという。

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精選版 日本国語大辞典 「貞操帯」の意味・読み・例文・類語

ていそう‐たい テイサウ‥【貞操帯】

〘名〙 妻や愛人の貞操を守るために用いる錠前のついた金属製の丁字型のバンド。一二世紀頃ヨーロッパで十字軍に参加した騎士たちが用いたのに始まるという。〔欧米曼陀羅雑記(1928)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「貞操帯」の意味・わかりやすい解説

貞操帯 (ていそうたい)

女性の性行為の自由を奪うために,女性の性器を閉鎖する装置。複雑な構造の錠前で開閉するしかけになっており,〈ビーナスの帯〉などとも呼ばれた。この錠前の鍵は夫が所持し,ときには女性の情夫,処女の母親が保管するような場合もあった。処女の場合,新婚の初夜に娘の母親が花婿にその鍵を渡し,それ以後は花婿が鍵の保管者となる風習がヨーロッパの一部で見られた。

 その起源については諸説あるが,代表的なものは,中世の騎士社会で十字軍の一員として戦いに遠征する夫たちが妻の浮気や他人からの暴行を防ぐために作ったという説,いま一つはルネサンスによる愛情行為や性の解放による官能の自由な表現と性の乱れが誘因となって貞操帯が普及したという説である。これらの説は,いずれも確かではないが,明らかなことは,現存するヨーロッパ各地の貞操帯はほとんど16世紀から17世紀のものであるということである。材料には高価なものが用いられ,たいていは銀製品だが,ときには金製品もあった。それぞれに美しい彫刻がほどこされ,螺鈿(らでん)がちりばめられるなど手のこんだものが多く,それによって貞操帯が使用された社会層がわかる。文学的作品に記述された貞操帯に関する多くの事情からも,これがかなり広く公の慣習として存在したことがわかるが,だいたいにおいて上層の有産支配階級,つまり富裕な大商人と,専制君主とそれにつらなる貴族階級の所産であって,庶民社会にはそれほど普及しなかった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貞操帯」の意味・わかりやすい解説

貞操帯
ていそうたい

妻あるいは愛人の純潔を求めて、他の男性との性交渉を不可能にするために施した錠前付きの金属製バンド。一般にはgirdles of chastityとよばれるが、ビーナス帯とも、イタリアのベルガモ地方でおもに生産されたところからベルガモ式錠ともいわれる。12世紀ごろヨーロッパで発明され、十字軍の将兵が長期の遠征に際し故国に残す妻や愛人に用いたというが、ルネサンス期に発明されたという説もあり、貞操帯の製造職人はひそかに合い鍵(かぎ)をつくって当の女性に売りつけたという。日本でも江戸時代に類似のものがみられたが、現在は西洋・東洋ともに一部の性倒錯者たちが享楽的に用いているにすぎない。

[佐藤農人]

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百科事典マイペディア 「貞操帯」の意味・わかりやすい解説

貞操帯【ていそうたい】

女性の陰部をおおい性交できぬようにした錠前付の金属製バンド。11―12世紀にヨーロッパで発明され,遠征する十字軍の騎士が留守中の妻女の貞操保護のために使用させたというが,異説もある。

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